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PM理論とは何か

現在担当している組織行動論において、PM理論はリーダーシップ理論の体系の中でどのような位置づけなのか質問されたので、ここにまとめておく。

1. リーダーシップの理論体系

組織行動論において、リーダーシップ理論は非常に研究が盛んな領域である。これは、人々の関心の高さを示したものである。

優れたリーダーとはどのような人物か?
自分がリーダーの立場になった場合、どのようにふるまえばいいのか?

こうした疑問は多くの人が抱くことだろう。そして、こうした疑問に答えるべく、多くの研究者が昔からリーダーシップに関して実証研究を行っている。

リーダーシップの研究の歴史は古く、1940年代ごろまでにはリーダーとそうでない人とを区別することに研究の焦点が当てられていた。そして、こうした背景のもとで発展した理論が特性理論である。

特性理論は、リーダーの特徴を探すことを目的とした理論である。

その後、特性ではなくてリーダーの行動に注目しようという研究が盛んにおこなわれるようになった。

行動理論では、例えばオハイオ州立大学の研究やミシガン大学の研究が有名であり、オハイオ州立大学の研究ではリーダーの行動が2つの次元でもって説明できることが明らかにされた

しかし、行動理論はリーダーが置かれている状況が加味されていない、という批判がされる。すなわち、状況によってリーダーがとるべき行動は異なるはずだと主張された。

こうした背景に登場したのがコンティンジェンシー理論であり、フィードラーの理論やハウスのパス・ゴール理論がこの理論体系に含まれる。

2. PM理論とは

さて、学生から質問のあったPM理論は、上記のうちの行動理論に分類される。PM理論の提唱者は三隅二不二(みすみじゅうじ)先生であり、日本発のリーダーシップ理論として知られている。

この理論では集団の機能として"P"及び"Q"という次元が設定されている。

"P" とは "Performance" を意味し、リーダーシップが発揮されることによって集団目標が形成され、それが達成される機能を意味している。
一方、"M" は "Maintenance" を意味し、集団の社会的安定性を維持する機能とされている (Misumi & Peterson, 1985)。

二つの機能の説明に関しては金井(2005)先生の説明が非常にわかりやすいので、それを引用しておこう。

たとえば、試合に勝ち進むことをめざしたサッカーチームなら、勝つために気合を入れる、練習の方法を工夫する、ミスに負けたら叱る等々の監督の行動がP行動だ。・・・スランプに陥ったときには悩みを聞いてあげたり、選手を我が子のように大切にしたり、ときにはいっしょにパーティーではしゃぐことも大事だろう。それらを促進する監督の行動がM行動だ(金井, 2005, p. 212)。

そして、三隅先生は ”P" の高低および "M" の高低によって、四つのリーダーシップのタイプを提示している。すなわち、PM型(高・高)、Pm型(高・低)、pM型(低・高)、そして pm型(低・低)である。

既存研究からはPM型のリーダーシップが最も効果的なリーダーシップスタイルであることが明らかになっている。例えば、生産性の向上などの良い結果がPM型のリーダーシップから得られることが実証されている。

また、三隅先生らの研究によれば、上記のようなスポーツチームだけでなく、一般企業、地方自治体、学校、家族など、様々な状況においてもPM理論が一定の妥当性を持っていることが明らかになっている (Misumi & Peterson, 1985)。

3.PM理論と他の行動理論

PM理論は、他の行動理論と類似している点が見受けられる。まず第一に、オハイオ州立大学の研究と同じようにリーダーの行動を二つの次元でもって説明できることを証明している点である。

例えば、オハイオ州立大学の研究ではリーダーシップの行動を「構造づくり」と「配慮」という二つの次元でもって説明している (Misumi & Peterson, 1985)。これらはそれぞれ PM理論における ”P” と ”M” に当てはまると考えられる。

第二に、PM理論は二つの次元が高いタイプのリーダーの方が高いパフォーマンスを導くことを明らかにしている点である。

Blake and Mouton (1964) によるマネジリアル・グリッドというモデルにおいて、リーダーは「人への配慮」と「生産への配慮」という二つの次元でもって説明される。そして、彼らは両方が高いマネジャーの方が最も優れたパフォーマンスを発揮することを述べている。

このように、PM理論は他のリーダーシップの理論とも整合性の取れている理論といえ、日本を代表するリーダーシップ理論として理解できるだろう。

一方、PM理論はリーダーシップ理論におけるリーダーの行動に着目している、という点で、その行動が行われる状況を加味する必要があるともいえる。

実務に応用する場合は、PMのどちらか一方に注力した行動をとるべきなのか、そうでないのかを確かめる必要があるだろう。

References

Misumi, J., & Peterson, M. F., (1985) The Performance-Mentenance (PM) Theory of Leadership: Review of a Japanese Research Program. Administrative Science Quarterly, 30, 198-223.

金井壽宏 (2005) リーダシップ入門. 日経文庫.

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