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デザイン愛好家がいく「マル秘展」鑑賞のすすめ

六本木・21_21 DESIGN SIGHT で開催している「マル秘展」を観てきました。著名なデザイナーのスケッチやモックアップがこれでもかというほど並べられているボリュームたっぷりの展覧会です。

展示を観るための所要時間やポイントなど、自分が事前に知りたかったこと・感想をまとめます。

ひと通りざっくり観るなら1時間半あればOK

Twitter で「#マル秘展」のハッシュタグを追っていると「2時間あっても足りない」「年間パス(メンバーシップパス)買って通う」などのツイートがあって、昼過ぎには渋谷で打ち合わせの予定が入っている身としてはドキドキしながら入場しました。

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プロダクトデザインやビジュアルデザイン、テキスタイルを専攻している学生さんだったりするといくら時間があっても足りないな……とは思いました。私はあくまで「門外漢だけどプロダクトデザインやビジュアルデザインが好きな人(デザイン愛好家)」なので、ざっくり全体を見る→気になったものをもう1回じっくり見に行く というスタイルで楽しみました。

ざっくり全体を見るのに1時間ちょっと、気になる展示をじっくり見るのに30分かけて、かなり満足しました。スケッチの筆致やモックアップの細部の仕上げだとか、上映されている動画やポッドキャストまでじっくり観るともっと時間はかかると思います。

ただし、土日などの混んでいるタイミングだとあんまり自由には行ったり来たりは難しいかもしれません。あくまで平日午前中の空いている時間帯の話だと思っていただければ幸いです。

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メイン展示会場を出たところにある「デザインされた椅子」コーナー。作品集や関連書籍を眺めたりもできるので、スケッチを見るのに疲れたら休憩してもいいかもしれません。(値段を知っているので座るのにちょっと勇気がいるけど)

どうやって見たらいいかわからない人にもやさしい

「ぼんやり眺めて終わるともったいないな」と思っていたら、原画展示室の前にこんなコーナーがありました。6つの見方が参考例として提示されていました。

1. 分野ごとの方法の違いを見る
2. デザイナーごとの方法の違いを見る
3. 筆記用具や道具を見る
4. デザインの質の変化を見る
5. デザイナーの考え方を知る
6. 原画を観察してスケッチしてみる

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個人的には「身近なものを改めてしっかり見る」と「仕事環境についてのこだわりを見る」も足したいです。

身近なものを改めてしっかり見る

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電車の中などで見かけることが増えたヘルプマーク。アートディレクター・永井一史さんによるスケッチやラフ画の試行錯誤も見ていてとても楽しかったんですが、今回特に気になったのが「立体物としてのヘルプマーク」。

隣にスケッチとモックが展示されている柴田文江さんがプロダクトデザインを手がけたものなんですが、カード部分の角の丸み、ストラップの刻印やころんとした留め具のシルエットは、じっくり見るととてもかわいらしいフォルムをしています。

仕事環境についてのこだわりを見る

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木工作家・三谷龍二さんのお店「10センチ」の店先に飾られているフランス製の古い子供用自転車。ものづくりに対する考え方、モットーを体現していることから看板自転車として飾られているそうです。キャプションに添えられた「そして、その佇まいが好きだから。」というフレーズにはぐっときます。

私は普段自宅で仕事をしているので、よそのオフィスやデスク周り、お店のレイアウトなどの「仕事場づくり」は気にして見ています。だから、看板自転車のような「仕事の象徴」になる存在はとても憧れます。

デジタル仕事で忘れがちな身体体験を思い出す

普段がMac上で完結するデジタル中心の仕事なので(本業はWebサイトを作ったりアプリUIデザインをしたりしています)、手仕事・3次元のアウトプットに強く惹かれました。

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山中俊治さんの美しすぎるプロダクトデザインスケッチ。

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隈研吾さんの膨大な数の「高輪ゲートウェイ駅」のモックアップ。建築の素人でも変遷が楽しめます。(模型の下に敷き詰められた発想などのメモも面白い)

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照明デザイナー・面出薫さんの「東京駅丸の内駅舎ライトアッププロジェクト2012」の検討のために作られた模型。実際にスポットライトを当てたり、手前のツマミで駅舎の中の照明を調整できます。

「モノ」でデザインを検討・ブラッシュアップをする面白さが味わえます。

わからないものはわからないまま楽しむのがおすすめ

批評家の方、建築家の方の展示については、恥ずかしながらあまり知識がないこともあり「なんだかエネルギッシュだけど正直わからん……!」と感じることも実はそこそこありました。

それでも、スケッチや手帳のメモ書き、模型からほとばしるエネルギーとこだわりを浴びるだけでも十分楽しかったです。複数のプロジェクトのスケッチ、長期間にわたる手帳の原本などが展示されているので「こういうことが好き・興味がある方の頭の中から、こういうプロダクトやアウトプットが生まれるんだな」ということを自分なりに妄想ができます。

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建築がわからないなりに一番面白かったのが田中俊行さんの「野外民族博物館リトルワールド」の展示資料のスケッチ群。エネルギッシュな土人形のスケッチと、このスケッチをしたデザイナーさんがどういう展示を作ったのかを見比べるのが楽しく、かなりの時間ここに噛り付いていました。

リトルワールドは地元のそばにあり、遠足などで遊びに行った身近なテーマパークなので嬉しかった、というのもあります。展示にボリュームがあるので、こんな意外な出会いもありました。

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ここからは、友人に聞かれたことや会場周辺の印象などをつらつらと書いていきます。

デザイナー以外の人と一緒に行っても楽しめる?

デザイン職以外の友人に聞かれました。「まったく興味がない人だとつらいかもしれないけど、身の回りのもののかたちと成り立ちに興味を持てる人なら楽しいと思う」と回答しておきました。

ヤクルトの容器や Suica の自動改札、カルビーのロゴを見たことがない人はあんまりいないと思うので。デザイナーの名前を知らなくても楽しめる設計にはなっているのかな、と感じました。

シャッター音がしないカメラアプリを入れておくと安心

これは私自身の後悔なんですが、消音カメラアプリを入れておくべきでした。ほとんどの展示物は撮影自由です。ただ、朝イチの静かな会場内だとシャッター音が響くのでちょっと心苦しかったです。

みんな写真を撮って Twitter や Instagram に上げるのがわかっているので、お互いに人の写真に写り込まないよう、そっとどいたりどいてもらったりする優しい空間でした。

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撮影についての案内表示に note が載っているのがとってもイマドキ。これを見て「note 初投稿はマル秘展レポートにしよう!」と決めました。

ルートによっては駅から結構歩くし、階段と坂が多い

土地勘がないので Google マップを信じたところ、東京メトロ銀座線「青山一丁目」駅から21_21 DESIGN SIGHT まで15分ほど歩きました。(どうでもいいけど乃木坂ってほんとに坂なんだなって思った)(「道玄坂のときも同じこと言ってたよ」と言われた)

延々と階段を登ったり、雨上がりの道が落ち葉で滑りやすくなっていたりしたので、歩きやすい靴で行くのをおすすめします。

公式アナウンスでは最寄駅は「六本木」「乃木坂」から徒歩5分と書いてあるので、今度からちゃんとルートを調べます。

貴重品以外の大きな荷物は預かってもらえる

建物に入ってすぐ左手の小さい受付でスーツケースやリュックサックなどの大きい荷物は預かってもらえました。ただし、鍵付きのコインロッカーがあるわけではないので貴重品は自分で持ち歩いてくださいとのことでした。

大荷物になりがちな地方クラスタは邪魔にならないトートバッグやサコッシュを持っていくのがおすすめです。

これはいまだに正解だったか自信がないんですが、出口はちょっとわかりにくかったです。入場するときに降りた階段を右側通行でそのまま上がればいいはず。(そうじゃないと預けた荷物が受け取れないし)

きっとなにかを描きたくなるので

膨大なスケッチを観て会場を出たあと、きっとなにかを描きたくなるはず。クロッキー帳とシャープペンシルや鉛筆、デジタル派なら iPad と Apple Pencil を持っていくと近くのカフェなどで描きたい欲を満たせるのでおすすめです。

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展示されていたものの本物が見たくなって、東京駅を眺めてから名古屋に帰りました。



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