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サッカーに憑かれた者たちnote版:いろれふさん(2級審判員) 後編[全文無料公開]

2級審判員の資格を持ち、プレミアWESTなど様々な試合の審判員を務めているいろれふさん(Twitterアカウント=@iroref3939)のインタビュー・後編。

後編では審判員ならではの視点について、深く尋ねている。

前編はこちらから。

審判員として、気にしていること

―審判員として、試合中や試合の前後に気にしていることはどういったことでしょうか。

「まずは怪我人がいないこと良いゲームにするというのは自分の中では大事にしています。
というのも、僕はあんまり試合に出られるような選手じゃなかったので、途中出場の1分や2分でも自分は気持ちを持って試合に出ていたんですけれど、そういった選手もいるし、あとは(地域リーグ等であれば)僕もそうですけれど、仕事をして、土曜・日曜にサッカーをしているわけで。
勝ったほうも負けた方もお互いに気持ち良く試合が終わって、月曜日頑張ろうかみたいな気持ちになれるように、というのを考えています」

会った中で凄い審判員

―いろれふさんから見て、この審判員が凄いなというのはありますか?

「自分が会った中で1番凄いなと感じたのは、西村雄一さんも凄く良いなと思ったんですけれど、福岡で言えば笠原寛貴さん(注・先日のU-24代表のガーナ戦でも主審を務めた)ですかね。
去年、僕は副審として一緒に審判をさせてもらったんですけれど、試合に対する気持ちであったりで僕達2級との差を感じましたし、色んなことを教えて頂きました。
なかなか出来ない経験なので、僕の中では笠原さんは別格だなと」

審判員にとって難しい場面、見え方

―審判にとって、やはりオフサイドの判定というのは難しいのでしょうか。

人間の目って、FWの選手がDFのラインから飛び出そうと動く時にちょっと出ているように感じるんですよ。
だから、頭の中で少し巻き戻すような形で自分の中で折り合いをつけていくんですけれど、これって凄く難しくて。
初めて自分が副審をしているのをビデオで見た時に、自分の見えていたものと全然違ったんです。だいたい1mぐらいは違いますね。
これ自分がレフェリーをやっている中で凄く面白い話で、オフサイドでしょと思ったら全然違ったみたいな。
そういった見え方が違うというのは知っておくと面白いかなと思います。これは実際にラインに立ってみないと分からないことなんですけれど。
審判員の中でも同じように感じている人はかなりいると思います。
もちろんそういうビデオがあってトレーニングとかもするんですけれど、審判の資格を持っていない方が審判を務めたら多分分からないだろうなと思います。
それ以外にも、FWの身体の部分でどこが1番前なのか、DFの身体の部分でどこが1番後ろなのかが意外と分からなくて。

人間って胴体を見がちなんですけれど、実際はDFの1番後ろはかかとだったりするんです。
オフェンスはだいたい身体が前傾なので肩であったり胸であったりが出てくることが多いんですけれど。
そう考えると、オフェンスの人間は前傾姿勢で胸が前に出ていて、ディフェンスの人間は後ろ向きなので×印のような状態になってしまっているんです。
それは見ていて凄く面白いなと。自分もそれはビデオで見ない限りは気付かなかったんですけれど」

―副審の目の前でのプレーに対し、副審が判定に迷う場面もたまに見られますね。

近過ぎるとかなり見づらいです。主審は身体を動かして適切な距離感を保っているんですけれど、副審だとラインに沿って動いているので(前後には)動けても1mあるかないかなので、そこは調節は凄く難しいし、それなりに経験を持っているので主審が(判定を)出したりすることもあります。」

審判員と選手のコミュニケーション

―また近年、審判と選手のコミュニケーションが取り上げられる機会が増えている印象です。いろれふさんは選手とのコミュニケーションを積極的に取りますか?

「僕も結構取るタイプです。今年で言えば(第1節・湘南vs鳥栖で)高山啓義さんが『よく見てたでしょ』と言ったシーンがありましたが、あんな感じで『僕あそこ見てたので』みたいな感じで話をすることはよくあります。

(第9節・C大阪vsFC東京で)山本雄大さんが永井謙佑選手に『永井さん大丈夫?怪我した所だよね』と言ったシーンもありました。
そこまではいかないですけれど、『今時間を止めてるのでゆっくりでいいですよ』とか『あれは痛かったですよね』みたいな感じで話をしたりはします。
あと、僕は選手をさん付けで呼ぶんです。
お互いのキャプテンがコイントスをする時もできるだけさん付けで呼びたくて。GKはリードしてたりすると終盤時間をかけたくなるんですけれど、『キーパーいきましょうよ』より『○○さん行きましょうよ』って話すとドキッとすると思いますし」

「皆」がよりサッカーを楽しむために

―では最後になりますが、審判員の視点で観客の方々に伝えたいことはありますか?

「僕はたまたま選手としてもやっていて、家が鳥栖なので鳥栖の街で育って自然とやるスポーツはサッカーになって。
父もサッカーが好きで指導者をやっていて、僕は選手と審判員でやっていて、色んな視野でサッカーを見ることができるというのが凄く面白いです。
サッカーには『する・観る・支える』という3つあると思うんですけれど、観客の皆さんも観るだけじゃなく例えばフットサルという形でするだったり、もっとサッカーを広い視点で観てみると凄く楽しく感じるんじゃないのかなと。
また、JリーグやJFAは『リスペクト』という言葉を凄く大事にしていて、グラウンドを整備してくれている人・対戦相手・サポーター・色んな所でリスペクトを持っています。

もちろんライバル関係などはあってもいいと思うんですけれど、リスペクトという部分は大事にしてほしいなと思います。

スタンドから言われている言葉が聞こえることもあります。陸上競技場であっても、スタンドの声って凄く聞こえるんです。
(その中で)ネガティブな声もよく聞こえますし選手達もそうだと思うので、そういった声がリスペクトだったり良い声掛けになれば絶対にサッカーってもっと楽しくなるし、選手達もより良いプレーをしてくれると思います」

普段なかなか聞くことのできない審判員の方からの言葉に、いちサポーターでもある自分はドキッとさせられる部分もあった。

サッカーを進化させるために審判の判定を含めた議論は大切ではあるけれど、建設的なものかつリスペクトを持って行うことは常に忘れてはならない。

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