お盆

オトナになってから、まさか糸電話をするとは思わなかったし、コドモの頃だって、まともに糸電話を工作し遊んだ記憶はない。どれもこれも26歳になったはずの幼馴染のせいで、無駄に長いようなお盆休みで帰省してきたヤツは、私の実家を散策して、昨晩の宴の残骸から紙コップを拾い上げたらしい。捨てられない病の母のお陰で私の中学時代の裁縫セットはそのまま残っており、糸を引っ掴むとヤツはコドモの時と同じ俯いた顔で糸電話を作り上げた。これが6歳の甥っ子となら微笑ましいが、階段の上段と下段にいるのが成人の男女だとシュールな絵面だと自分でも思う。
「なんか言って」
「あー」
「おー、聞こえんじゃん」
「ばーか」
「20歳までお前のこと好きだったの気づいてた?」
「ばーか」
そんなことも面と向かって言えないヤツは昔からそうだったかもしれないと思い出してきた。今朝、大玉スイカを買ってきた両親がキッチンで騒いでいて、なんだかコドモに戻った日。

#散文

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