寝たふり

ベッドで微睡んでいると、自分でも自分が眠っているのか起きているのか分からないときがある。昔から自分の特技は寝たふりなのかもしれないとこっそり思うくらい、私は目を瞑り静止するのが得意だ。
今日は多分、風邪をひいて頭がだるくて、またいつものように微睡んでいたら、彼が多分泣いていた。乱暴に鼻をかんで、煙草を吸いに外へ出てしまってから、なかなか戻ってこなかったし、戻ってきてからも何だか変だったけれど、変わらず私の頭を撫でてから帰って行った。それはきっと、過去の大切なことを思い出したからで、離れ離れにならなきゃいけなかった小さな大切を思い出したからで、私にはどうすることもできないのだろう。私にはかける言葉も見当たらない。

#散文

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