【随想】成年後見制度を考える#2−制度を使ってみることに(2/6)

 現在は、弟夫婦が両親の預貯金を管理してくれているが、改めて全部の口座を見ていくと、毎月心当たりのないお金が引き落とされていることを発見した。それほど大きな金額ではないが、もう10年以上もである。父が急に認知症になったため、事前に聞き出すこともできず、一体何なのかわたしも弟も皆目検討がつかなかった。おそらく、「ふるさと便」のような地方の食材などが定期的に送られてくる何かなのだろう。母に聞くと送られている形跡はないのだが……。何の商品も送られてこない上に、ずっと支払い続けなければならない。このような点からも、早急に父の預貯金の整理が必要である。
 いろいろ思案したわたしは、ひとつの決断をした。認知症を患う父の状況をみて、成年後見人制度の利用を思い立ったのである。法学の講義で制度の趣旨や概要について学生たちに説明したことはあるが、詳細はよくわからない。わたしが民法を学んだときは、まだ禁治産制度の時代であった。民法や信託法を専攻する友人に、制度の利用をすすめられたこともわたしの背中を押した。
 法律学を専攻する身としては、制度の趣旨や成り立ちから専門の論文などを丁寧に読んで勉強をしたいところだが、なにせ時間がない。故郷が北海道の過疎地域で急激に交通の便が悪くなっている。春季休暇の間、時間のあるときにすこしでも手続きを進めたい。近くの本屋さんにでかけ、手続きのノウハウを手っ取り早く説明がされているマニュアル本を買い、裁判所のホームページを一生懸命読んで、故郷に住む弟と必要な書類の収集と申請書の作成をすることにした。
 いざ、申請書類を作成しようと思うと、ひとつ問題があった。インターネットでダウンロード可能な申請書は、いずれも東京仕様であるということ。故郷の管轄裁判所の申請書は、その裁判所に取りに行かなければならないのである(2019年4月記)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?