【随想】外部性が無償取引を生み出している(2/7)

 無償になるメカニズムはさまざまである。地上波テレビ放送のように、視聴者からは対価をとらず(NHKは別として)、もっぱら広告費を企業から集めて番組(コンテンツ)の製作(放送)サービスを提供している。この構造は、グーグルなどの検索エンジンと同じである。
 以前、このコラムでも取り上げたクレジットカード・ビジネスでは、ユーザーから会費を徴収しないで、もっぱらカード加盟店から加盟店料という対価を徴収する場合もある。
 地上波テレビ放送局(検索エンジンサービス会社)もクレジットカード会社も、どちらもいうなれば二方向の顧客に向き合っていて、この二方向の顧客から最大限の収益が得られればよい。つまり、仮に片方の顧客からは対価を取らずとも、もう片方からしっかり収益を上げることができればよいのである。
 こうしたビジネスモデルをとることができるのは、この二方向の顧客が別個にその企業に向き合っていながら、相互に関連性があるからである。すなわち、地上波テレビ放送の場合は、特定のチャンネルや番組をたくさんの視聴者が見ていれば見ているほど、その番組コンテンツの価値が高くなり、より多くの広告料を獲得することができる。その番組コンテンツを多くの視聴者が見ているから、広告主からすれば特定のチャンネルや番組に広告を提供することに意味がある。
 また、クレジットカードビジネスの場合、会員が多ければ多いほど、加盟店からすると多くのユーザーに利用してもらえる可能性がある。他方、多くの加盟店が加入しているから、会員にとってはカードを利用できる可能性が増えて便利である。二方向の顧客が、それぞれ取引相手の先にいる顧客の便利を生み出しているのである。
 これをネットワーク外部性といい、無償取引を生み出している張本人なのである(つづく)(2022年7月5日記)。

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