【読書雑記】ジャンバチスタ=ヴィーコ著、上村忠男・佐々木力訳『学問の方法』(岩波書店、1987年)#ブックカバーチャレンジ_03 

 ブックカバーチャレンジで三日目にとりあげるのは、ジャンバチスタ=ヴィーコ著、上村忠男・佐々木力訳『学問の方法』(岩波書店、1987年)です。このタイトル、正式には「わたしたちの時代の学問の方法について〔De Nostri Temporis Studiorum Ratione〕」。1708年10月18日にナポリ大学の修辞学教授であったヴィーコが新入生向けて行った講演の記録です。
 経済法学という分野の研究をしていると、ある事案に対する法の解釈や適用、また、ある特定の政策判断における経済学的知見の採用について、しばしば一定の立ち位置というか、スタンスが定まっていることが求められます。これは、経済学やその他の社会科学の領域と比肩しうる法学の独自性はどこにあるか、という問いと関連します。
 30代の半ばをすぎたくらいだったでしょうか。知人の教育学者から、法学教育の目的とは何か?(法学教育は人にどのような能力を身につけさせることを目的としているのか?)そのために、どのような教育を行っているのか?と問われたことがあります。
 専門領域外の人からの素朴な疑問は、ときに業界の常識らしきものに慣れ狭い視野しか持ち合わせていない自分に衝撃を与え、場合によっては大きな悩みをもたらします。
 そんなとき、手に取ったのがこの一冊。問題解決のための実践学である法学が、人文学(ヒューマニティーズ)の一分野であることを改めて感じさせてくれる本です。それもそのはず、この本はデカルト的な方法論に対する批判の書でもあるからです。知識(スキエンティア)よりも、知恵(サピエンティア)の涵養こそが教育の目的であると。考え説得することよりも、多くの情報を処理すること/できることを偏重しがちな現代の(法学)教育に対する批判の書といえるかもしれません(2020年4月29日記)。

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