【随想】気がつくとケーブルがいっぱい

 いま、わたしたちの身の回りには、バッテリーで動く電子機器が溢れている。スマートフォンなどの携帯電話端末だけではない、PCやダブレット、デジタルカメラにゲーム機器等々……。これらの機器に充電器が不可欠なのはわかるのだが、困りものは電子機器と充電器をつなぐケーブルである。デジタルカメラの充電用のケーブル、携帯電話用のそれ、そのほか電子機器同士をつなぐケーブルを含めると、いつの間にか自宅の電子機器の諸々をしまっておく棚の引き出しはケーブルでいっぱいだ。しかも、捨てられない。いつ、どこでこれらのケーブルが必要になるかわからず、不安だからである。
 家の引き出しがケーブルで溢れかえるのは、電子機器同士をつなぐ両端の端子の規格が、電子機器やメーカーさらには販売時期によってまちまちだからだ。規格が変わるつど、ケーブルが増えていく。よく使うものほど劣化は激しい。買い替えも頻繁である。たしかに、新しい規格の端子が登場するたびに、データの転送速度や電力供給の速さなど、明らかに性能がよくなっている。物理的にもコンパクトになり、使用感もよくなっていく。まさに技術革新がもっとも身近に感じられるところではないだろうか。
 しかし、いま欧州では、この電子機器の端末規格を統一化し義務化する動きがある。昨年9月に、2024年末(PCについて2026年)には大部分の電子機器の端末規格を「USBタイプC」に統一するルールを設定するのだという。このルールが成立すれば、欧州域内で流通・販売される電子機器の端末規格を「USBタイプC」とすることが義務付けられる。
 欧州連合(EU)によるこうしたルール設定の目的は、廃棄される充電器等削減によって環境負荷を減らすこととしており、欧州委員会は、年間2億5千万ユーロ(約360億円)の節約と毎年1000トン程度の電子機器の廃棄物の減少が見込んでいる。まさに市場において環境保全と技術革新とをどう両立していくかについて考えさせる課題であるといえる(2023年1月5日記)。

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