【随想】ふるさと納税、これでいいのか?#5−官需としての返礼品(5/6)

 いよいよ総務省は「ふるさと納税」の返礼品競争に一定の歯止めを加えるべく動き出した。今年の4月1日からふるさと納税の返礼品を寄附金額の3割以下に抑えるよう地方自治体に要請したのである。
 実は、総務省、この問題の是正のために、これまで2度の通知を出している。1度目は、2015年4月に換金性の高いプリペイドカードや高額または返礼割合の高い返礼品の送付について。2度めは、2016年4月に商品券など金銭類似性の高いものや電気・電子機器、貴金属など資産性の高いものの送付について。
 そこで、今回の要請である。返礼割合について具体的な数値として「3割以下」を明示した。2016年度の返礼品の調達コスト比率は、43パーセント。これを今後は3割以下とする。もちろん、狙いは制度趣旨に則り、寄付の多くを住民サービスに当ててもらうことである。
 現状を踏まえれば、今回のような、品目ベースではなく、金額ベースでの制限は不可欠であると考えられる。たしかに、時計や家具など比較的高額な製品を生産する地方自治体はPRの手段を制約されることになるかもしれない。だが、返礼品を生産する地元の業者への影響を考えれば、やはりやむを得ない。
 地元業者にしてみれば、返礼品需要はいわば「官需」である。返礼品が好評だからと言っても、それは消費者がその製品の価格と品質を自らの目で確かめて選択したものではない。つまり、市場の需要に由来するのではなく、税制の運用によって作り出された「おまけ」の需要が返礼品である。一見「タダで」もらえてるから、誰もが納得しているにすぎないといえないか?自慢すべき特産品であるのなら、ちゃんと消費者にお金を払わせてこそ意味がある。返礼品が一時的なPRのになっても、持続的な需要に応えるものでなくてはならない。もし、返礼品というあいまいで一時的な需要のために設備投資をしたり、返礼品のためにこれまでの販売ルートの供給量を制限するということがあってはならない。ふるさと納税と返礼品による「官需」は、生産者の努力を望ましくない方向に導いていくのではと危惧するからである(2017年5月5日記)。

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