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【レビュー】Steamギフトテロ紀行【GOD EATER3】

 「Steamギフトテロ」というものを御存知だろうか?

 知らない方は知らないままでいい、というわけにもいかないので簡単に説明すると、Steamのギフト機能を使ってフレンドにゲームを送りつける行為だ。
 当界隈では悲しいことに、特定人物に対して推しゲーバカゲークソゲーを問わず送りつけ「やれ」「配信しろ」「いいからやれ」と圧力を掛ける行為が横行している。主に私に対して。

 とはいえ、送られてくるゲームは概ね

・やらせたらシンプルに反応が面白そうな配信映えするゲーム
・金を払ってでも感想を摂取したい推しゲー
・ホラゲー(説明の必要は無いと思うが、私は普通にホラーの類が苦手である)

なので、そこまで忌避するようなものでは無い。無いのだが。


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 ……時々、とんでもない忌み子を送ってくる奴が居るのである。

 これは私の、Steamの闇に潜む忌み子達との戦いと禊の記録。


序論

 そもGOD EATER(以下GE)シリーズとはなんぞや? ということを説明する必要は、恐らくあまり無いだろう。
 今や狩りゲーの代名詞にもなったモンスターハンターシリーズ。その立役者であるP2ndGが爆発的ヒットをキメた後、モンハンのパクリだなんだと言われながらも独自の世界観を持って生まれたゲームである。そのぐらいはまあ、未プレイの私でも知っている。

 そう。私、GEシリーズは未プレイなのである。

 一応CODE VEINだけは別口でプレイしてはいるが、GEシリーズは一切触ったことがないため、過去作からの要素や設定を踏まえていない発言についてはある程度御容赦頂きたい。「シリーズモノの3作目を未プレイの人間に送りつけるのは相当イカレてんだろ!」というのはさておいて。

 その上でのレビューではあるが、誤解の無い様に――つまり、これから誤解されるような文章を書くということだ――予め結論を書いておくと、GE3は「セールで2000円なら十分過ぎるぐらい遊べるゲーム」である。ちなみにこれはフルプライスゲーだ。よかったなSteamでワゴンに乗れて。


ゲームの流れ

 GE3のゲーム構造は極めて単純だ。拠点で会話をこなし、ミッションを選び、敵を狩り、出てきた素材で武器を作る。作れなければもう一回同じミッションに挑んでもいいし、現在の装備で問題ないと思えば次に進む。これだけ。

 が。たったこれだけなのだが、この「拠点で会話をこなし」の部分がやたら曲者なのである。

 GE3における拠点は(最序盤の座敷牢みたいなとこを除いて)クリサンセマムというトレーラーの中なのだが、この拠点内にはブリッジ、居住区画、ラボ区画の3つのエリアが存在する。ゲーム内の機能はブリッジ(と、ブリッジに接続されているロビーの商人)で全て賄えるために他の2箇所はほぼフレーバーのためにだけ存在しているのだが、NPCは全区画にバラけて配置されている。
 つまり、ミッションを進める毎に意味も無く全区画を回る必要があるのだ。加えてタチの悪いことに、NPCの配置はミッションが進めば毎度毎度変化するため、シナリオの流れからアタリを付けて対象NPCに会いに行くこともできない。

 所謂狩りゲーやハクスラの類でシナリオ進行のためだけに毎回拠点内を走らされるのは、はっきり言ってストレスだ。私はさっさとこの鎌で地面をギャリギャリしてアラガミを蹂躙したいのであって、別にNPCのカウンセリングをしたいわけではないのである。


戦闘

 では肝心の戦闘面はどうか?といえば、これはメリハリの効かせ方自体はなんだかんだ悪くない

 捕食攻撃を当ててバースト(時間制限のあるバフ状態みたいなものだ)し、近接攻撃でダメージを蓄積する。近接攻撃を当てれば銃撃用のエネルギーが溜まるため、これを使って弱点へ適宜銃撃を浴びせ、バースト状態が切れそうなら捕食攻撃を当て維持する。基本はこの繰り返しだ。
 詳細は後述するが、バースト状態の有無で火力と操作性に天と地ほどの差が出るため基本はこれの維持に腐心することになる。NPCがバーストを維持・底上げしてくれることもあるが、どうしても運任せの上にそもそものゲージの持ちがかなり悪いため、どのタイミングで捕食攻撃を挟み込んでいくかがそれなりに重要なファクターとなっている。

 加えてバースト中は「バーストアーツ(以下BA)」と呼ばれる専用技が解禁される。といっても特殊なコマンドが要求されるわけではなく、事前に地上、空中、ステップ中の攻撃コマンドを一つ選んで置き換えるもので、バーストの有無による操作自体は変わらない。

 問題はこのBAの性能が中々ブッ飛んでいて、「バーストしてこれだけ振っていればいい」と言われても仕方ないレベルの性能をしていることである。

 例えば、私の使っていたヴァリアントサイズ(変形してレンジの伸びる鎌)であれば、変形攻撃の〆の大技を置き換えるBA「ヘルオアヘブン」が本来の技の10倍以上のダメージを出力する。誤字ではない。マジの10倍である。
 ここまで来ると最早他の攻撃を使う必要を感じず、NPCを追いかけているアラガミのケツにおもむろに近付いてヘルオアヘブンをブチかますだけの作業が始まってしまう。大型灰域種のアラガミでも2~3発ぶつければ転倒するため、今度は頭部ににじりよって再びヘルオアヘブン。ついでに簡易捕食でバーストを回収し、起き上がったらまたケツに向けてヘルオアヘブンで全てが片付いてしまうのだ。
 当のBA間でも性能格差は激しく、プレイ中にヘルオアヘブン以外で使う価値を感じたのは変形攻撃の火力を底上げするインフェルノラッシュのみである。そもそもとしてBA自体が操作間で被っていることはほぼ無く、わざわざ付け替え性にせずとも全部同時に使えてよかったのでは? というのが本音。

 ではこのBAをぶつけるアラガミの性能だが、これもまた中々ぶっ飛んでいる。広域にAoEをブチ撒けるのは当たり前、クソ判定違法タックル捕食を撃てて一人前。挙句の果てには、その辺の小型mobですらやたらタフな上に回避が面倒な誘導弾をバラ撒いてくるという修羅の国である。

 とはいえ、タイマン(正確にはこちらは4人なのでタイマンではない)なら中々骨のあるアクションゲーム、という程度で済む。問題は、中盤辺りから当然のように二体同時討伐を要求されるミッションが頻繁に出現し始めることだ。
 このゲームのフィールドは概ね2~4程度の戦闘エリアを通路が繋ぐ形で構成されているが、戦闘エリアは通路とほぼ変わらない狭さの上になだらかでない起伏が設置されていることも多い。そして敵を分断する手段も特に無い(筈だ。もしかしたら私が気付いていないだけかもしれない)。
 そんな狭さで競って広域AoEをブチ撒けられた日にはブッダだってキレる。私がキレてるんだから間違いない。

 ではどうやって対抗するか? といえば、やはりこちらもBAのクソ火力でクソの投げ付け合いをするしかない。このAGEとかいう生き物はステップに無敵判定がなく、ガードの出も2ボタン要求で使い勝手が悪いなどが原因で防御面が死んでいるため、根本的にやられる前にやるしかないのだ。
 常に両方を視界に収めながらに細かな隙へ攻撃を挟み込む、銃撃でダウンを取る、タゲがNPCへ分散した隙に後ろから殴る。とにかく手段は何でもいいが、無理矢理BAのクソ火力を通して一体落とせばこちらの勝ちは決まりである。逆に視界の外から違法殺人タックルでハイネった(※)らこちらの負け。

※ハイネる:獣っぽいやつに闇討ちで真っ二つにされること。主に視界外から突っ込んで来るバルムンク(ブレードライガーみたいなやつ)を指す。ハイネェエエエエ!

 当たり前といえば当たり前だが、二体同時で片方落とせるなら単体の相手に苦戦するはずもないので残りは消化試合だ。中盤辺りから終始こんなノリなので、戦闘はどうしても大味になる。

 とはいえ、こちらのクソ火力と敵のクソAoEで(良いとは言い難いが)バランスが取れてしまっているため、戦闘そのものはそこまでつまらないものでもない。一瞬の隙を突いてヘルオアヘブンで地面ごとギャリギャリ引き裂いて蹂躙する快感は筆舌に尽くし難いし、大型灰域種とのタイマン(タイマンでないものを指す)なら不快感も少ない。
 途中で中~大型種との三連戦を行うミッションなどもあったが、これは一定時間毎に次のアラガミが出現+出現前に撃破すれば即時参戦というストレスの少ないモードであったため、こちらがメインだったら面白かったろうに……という気持ちが強い。

 戦闘面に関しては「色々惜しいな」というのが正直な感想である。


シナリオ

 初めに申し上げておくがクソだ。
 どうクソなのかイマイチ伝わらないと思うのでもう一度言うがクソだ。

 どのぐらいクソかは分かってもらえたと思うので真面目な話に戻る。
 まず大前提として、この手の狩りゲーにシナリオ性を求めるのはナンセンスだということは分かってはいる。分かってはいるのだが、それはあくまで主張しない薄味なシナリオを有するゲームに対しての慰めであって、GE3のシナリオのようにバリバリの演出で感動のシーンをお届けするゲームに対して適用されるものではない

 さて、GE3のシナリオは有り体にいえば「ロリコンが鉄血のオルフェンズ(※)をふしぎなちからで救済しろと言われればこうもなろう」といった感じだ。しかも脳波コントロールできる。
 というかパクッ……オマージュした、と言われても仕方がない程度には似通っている。主人公はミカ、ユーゴがオルガ。旧フェンリル本部までの道程を切り開くところまでが鉄血一期で、二大勢力の諍いに否応無く巻き込まれていくところが二期。

※鉄血のオルフェンズ:実弾と近接戦闘と地上戦をメインに描いたガンダムシリーズ。二期脚本の筆舌に尽くし難いクソさとその影響でネタにされ続けているオルガ・イツカで有名。これに例えるのはやや罵倒では?

 明確に違うのは、主人公がヒト型アラガミとかいうロリを連れた子連れ狼という点だ。面倒なので過程は省くが、二大勢力の片方が敗北直前に自爆し(正確には自爆ではないが、ほぼ自爆のようなものだ)、両者共倒れになって滅ぶ筈だった世界をなんかふしぎなちからでロリが救う。ざっくりと流してしまえば、シナリオはそんな感じだ。
 オチがデウス・エクス・マキナという時点で評価は下がるし、ロリがヒト型アラガミであったシナリオ的必然性も特には無い。過去作をやってなくても問題ないシナリオ構成なのと、ロリに感情移入できるならまあその辺の演出の質は良かったんじゃない? ぐらいは言えるかもしれないが。

 だが、そんな難点を軽く軽く鼻で笑えるレベルの問題が、この作品にはある。「わざわざ今作から生やした設定をガン無視した意味不明な展開」である。

 鉄血一期部分。世界の統治機構たるグレイプニルの言うことには、生の人間では10分と生きられぬ灰域、その奥深くに沈んだ旧フェンリル本部に灰域を打ち払うことができる秘密兵器があるという。灰域に耐性のあるAGEである主人公達ハウンド部隊は死力を尽くしてその道を切り開き、見返りとして富と名誉を手に入れる。
 ここまでの展開は、正直悪くはなかった。急に演出だけでほぼ説明の無い勢力が出てきたり薄味だったりという問題はあったものの、まあ狩りゲーのシナリオとしてはこんなものとかという及第点を満たしてはいた。
 結果としてグレイプニルは旧フェンリル本部を取り戻し、秘密兵器「オーディン」の力を用いて周辺の灰域を払うことで旧フェンリル本部の機能を回復した。

 ものだと、私はてっきり思い込んでいたのだ。

 時は流れて鉄血二期部分。グレイプニルは秘密兵器「オーディン」の起動にはAGEを弾丸として”消費”する必要があると公表し、灰域に飲まれた世界を救うために犠牲になることを要求する。当然、メンバーのほとんどがAGEで構成された勢力である「朱の女王」はこれに反発し、我々に手出しするようであれば容赦なく攻撃すると宣言。二大勢力による戦乱が勃発し、主人公たちは人類同士の戦いに対してどう向き合うのか……というのが大まかな流れ。
 当然、灰域の中に潜む朱の女王へグレイプニルが攻勢をかけるには灰域を払うかAGEを投入するかしかなく、カットシーンではAGEが一人も映っていなかった(腕輪の数で判別できるようになっているため、恐らく意図的な演出だろう)ためにオーディンを投入したのは間違いないと思っていた。

 が、朱の女王の首魁が斃れた直後に大灰嵐(灰域のデカくて動くやつの更にデカいやつ)が発生。人類の存亡を賭け、グレイプニルはついに秘密兵器「オーディン」の投入を決意する……

 ……ちょっと待って欲しい。
 今までオーディン使ってなかったんですか? 一度も?

 いやまさか、そんなことはあるまい。整備兵が「まだ実戦投入は無理ですよ!」って言ってるだけで、実際には旧フェンリル本部の灰域を払ったり朱の女王へ侵攻をかけるために使用されて……

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 使ってないってわざわざ書いてある……。

 ……理由は、まあ分かる。いくら都合のいい奇跡でなんやかんやハッピーエンドになったとはいえ、それが実際に人間を大量に弾丸にした後では和解は難しいだろうという配慮なのは想像が付く。付くんだが、今作から生やした設定に対してそれはあまりにぞんざいな扱いではなかろうか。
 灰域の中で普通の人間やゴッドイーターが活動できるなら、AGEという存在は必要ない。AGEという存在が必要ないのであれば(このAGEという設定がだいたいおかしいのはさておいて)、今作のシナリオの大半は破綻する

 朱の女王と初遭遇した時なんかはその辺の事情がそれなりに描かれていたのだが、後半になるにつれて取りたい展開のために設定の忘却が目立つのは大変良くないなあと私は思う。脚本が主、設定は従というのが物語の基本ではあるが、従は従であって無視して良いという意味ではないのだ。

 そういうわけで、シナリオに関しては論外という評価を取らざるを得ない。これは狩りゲーなので物語の質が悪くても多少は目を瞑るべきなのだが、毎度毎度会話のためだけに走り回らせたり、ガッツリめのカットシーンを取ったりとこれだけ「読ませる」工夫を凝らしているならもっと高い質のものを摂取したかったと感じる。戦闘面も良いとは言い難いし。


総評

 これまで散々酷評してきたが、総評としては最初に書いたとおり「セールで2000円なら十分過ぎるぐらい遊べるゲーム」である。

 戦闘面のバランスは少々歪だがまあ遊べなくはないレベルだし、シナリオがイマイチなのも興味が湧かなければ飛ばせば良い。メインストリームだけ突っ走ってもおよそ15時間(付けたまま放置していた時間もあったのでもう少し短いかもしれない)程度は遊べたのでボリュームも言うほど悪くはない。
 毎度毎度会話のために走らされる点だけはちょっと不満だが、2000円でインディーズのアクションゲームを買ったと思えばまあこんなものだろう。

 ……これをフルプライスで買った方々には、流石に同情の念を禁じ得ませんが。
 「私もやったんだからさ」と言いながら私に送り付けて良い訳ではないんですよ。分かりますか?

 二度とこんなレビューを書くことがないことを祈りつつ、ここで筆を一旦置きます。
 Steamの海に漂う電子の忌み子の安らかならんことを……


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おまけ

「ところでクリアまで一度も見なかったんだけどさ、劫火の騎士王君っていつ誘導ピザ(※)投げてくんの? DLCから?」
「ハンニバルのピザはCODE VEINで追加されたモーションなので無いですよ」
「吸血鬼の屑がこの野郎……」

※誘導ピザ:CODE VEINのDLCでゲスト登場したハンニバル(劫火の騎士王)が使ってくる攻撃。円盤状の炎がプレイヤーとほぼ同じ速度で長時間誘導してくる上に被弾・ガードでの判定消失も無いため、使用されると消失まで逃げる以外何もできなくなるクソ技である

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