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砂漠のレール

 この仕事につき3か月がたちました。同じ地球にはいるけれど、目覚めた時にあなたが横にいないことには未だに、慣れることができません。知っての通り地球は今やエネルギーの枯渇、森林破壊、人口爆発。誰も他人事とは言えなくなりました。僕たちを活かす太陽の光が、今や熱で地球ごと焼こうとしているなんて皮肉なことですね。砂漠にレールを走らせるこの仕事は、人類が最後に生んだ希望です。レールに当たった光をエネルギーに変える、半永久的な未来が約束されました。仕事は大変だけれど、同時にとてもやりがいのある仕事です。いつ終わるか分からない世界に舞い降りたこの仕事に、図らずとも人生を重ねます。人生を何とするかは人それぞれでしょうが、僕は人生とはこのレールだと思うのです。反射する光は輝いているけれど、鉄にとってはものすごく熱く、美しいという言葉では言い表せないものだから。
 日本にいるあなたはまだ眠っているでしょうか、その夢が少しでも幸せなものなら僕も嬉しいです。今は離れているけれど、会えないことであなたの大切さが身に染みて分かります。夢を捨てられなかった僕を信じてくれてありがとう。

 あなたが砂漠に旅立ってから3か月が経ちました。家を出るあなたの顔がとても輝いていたから、あなたの幸せがやはり私の幸せでもあると思いました。今日の夢では、レールが銀河まで伸びて、その上を走る列車に私とあなたが乗っていました。今は世界中がエネルギー不足だから手紙も滅多に出せないのだけれど、レールが出来たらいつか列車であなたのところまで会いに行きたいわ。電車を走らせるためのレールじゃないとしてもね。
 あなたはもう砂漠の暑さに慣れてしまったのでしょうか。私はいまだに、隣にあなたがいないことに慣れる日はありません。でもいないことで改めて大切さが分かることもあるから、今はあなたの幸せを願っています。

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