038 TTWP ④水球の基本スキル:蹴り足
前回は巻き足のスキルに関わる話でした。浮くための水抵抗の作り方(水の押し方)には、関節の可動域も関わりがあるというのが記事のポイントです。
さて、今回は蹴り足にまつわる話です。それでは行きましょう。
蹴り足の役割
水球は、あらゆるタイミングで多方向への連続した素早い移動が求められるスポーツです。
水泳の4泳法で連続した多方向への移動には、平泳ぎの足が最も適しています。バタ足は多方向への連続した移動には向いていません。
泳ぎが中心の局面ではクロールが最速だと思いますが、対人プレーで止まったり動いたりとスピードに乗れる時間がない局面では、平泳ぎのような「蹴る」タイプの足が最も重宝されます。
水球ではそれだけ蹴り足が必要な場面が多く、巻き足に次いでの最重要スキルと言えます。
蹴り足の解剖学
大雑把に言うと、蹴り足は以下のような動きで成り立っています。
①股関節の屈曲と伸展
②股関節の外転と内転
③膝関節の屈曲と伸展
蹴り足と平泳ぎは違う
前回記事で、巻き足は平泳ぎと近い動きと述べましたが、蹴り足は似ている部分もあれど平泳ぎの足とは異なる動きです。
最も大きな違いは、蹴る前に体に脚を引きつける動き。
平泳ぎは膝をしっかり曲げますが、膝を体に引きつける動きは小さくなります。これは水の中を進んでいるスピードを落とさないようにするための工夫で、膝を体に大きく引きつけると、大きく移動する蹴りを出せますが、その分引きつけで進むスピードにも大きくブレーキをかけてしまうのです。
泳ぎのスピードを落とせない平泳ぎでは、進む力を最大にして、ブレーキを最小となるように工夫すると自ずとこのような脚の引きつけになります。
これに対して蹴り足は、膝をしっかり曲げるだけでなく、股関節もしっかり曲げて大きく膝を体に引きつけます。当然大きなブレーキがかかりますが、その後の蹴りでは大きく移動することができます。
連続して一定のスピードを維持する水泳より、一回の大きな移動が求められる局面が多い水球では、大きな引きつけが必要になるため、このような脚の引きつけになります。
平泳ぎから学べること
とはいえ、肝心の蹴り方に関して言えば、巻き足同様に平泳ぎのスキルは積極的に参考にすべきです。直線的に踏みつけるような蹴り方ではなく、曲線的に踏みながら挟むように蹴ることで、はじめて大きな抵抗で水を押すことができるからです。
※蹴り方の具体的な話は前回記事が参考になります。
伸びを大切に
このように平泳ぎとは引きつけ動作で違いのある蹴り足ですが、そもそも大きく移動するための引きつけなのだから、ひと蹴りの伸び、つまり大きな移動は大切にして日々磨きをかけましょう。
それ以上に引きつけも大切に
より大きな力で蹴って大きく体を移動させるために、引きつけが大切なのはわかりましたが、もう一つ大事なことがあります。
それは「蹴ったら蹴りっぱなしにならない」ということ。しっかり蹴り足で移動したら、即座に引きつけて次の動きにより素早く対応できることです。
移動→引きつけ→移動→引きつけ
と繰り返される動きの基本は水泳も水球も変わりませんが、
相手への反応+多方向への移動
が水球のプレーではプラスαされます。伸びを大切にしながらも、引きつけを素早く行える選手はオフェンスもディフェンスも本当に強いです。
以前の記事でこの件には触れました。参考にされてください。
可動域も大切に
ストレッチ、おざなりになっていませんか?個人的に大事だと思うのが関節可動域です。小難しい話は省きますが、特に股関節を伸展させる筋肉(調べてみてください)の柔軟性を上げることで、蹴り足のパワーは確実に上がります。
【いい例】股関節伸展筋の柔軟性があるので、股関節を屈曲して(曲げて)いい引きつけができている。
【イマイチな例】股関節伸展筋の柔軟性がないので、背骨を曲げて一見引きつけているように見えるだけ。実際、股関節はそこまで屈曲して(曲がって)いない。
お疲れ様でした
蹴り足は水球競技において重宝される最重要スキルです。ぜひ、いい蹴り足ができるように磨いてください。
それではまた!
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