くるま

デザインのサイクル:リサーチと軌道修正

「デザインを行う」と一口に言っても、単にMacの前に座ってオペレーションすることがすべてではありません。デザインにはさまざまな行動のフェーズがあります。
まず、「定義」。何を作る必要があるのかをはっきりさせます。つぎに「研究」。どういう表現が必要なのか、掘り下げて考えていきます。競合他社のデザインを研究したり、クライアントの業態を把握し、これまで築き上げてきたデザインリソースを含め、理解を深めていきます。そして、それを具体的な「アイデア」にしてゆき、ラフ制作にかかります。そして、プロトタイピングを行い、検証します。その後、複数の案からより優れたもの、マッチするものを選択し、実行に移します。そこで得られたものから学習してゆき、未来のデザイン展開へと生かしてゆきます。

これらは一連の循環的なサイクルではなく、複数の状況が同時に進行したり、反復されたりします。特に「研究(reserch)」や「プロトタイピング(prototype)」「学習(learn)」は反芻することにより、より効果的なデザインを行うことに役立つのではないでしょうか。繰り返しの過程で無駄なものや必要のないものができてしまうこともありますが、本来のニーズや、隠れていた、あるいは、みていなかった要素の発見に繋がることもあります。

極端な例をあげてみましょう。自動車メーカーが新しいサイトを作りたいと考えるとします。これまで、ハイエンドなイメージの車を展開してきたメーカーが、これから展開する商用車のサイトを作りたい、という課題が出されたとき、どういうデザインを行うべきでしょうか。
「ある程度ブランドイメージを踏襲してリッチなサイトだといいな」という意見があったとして、はたしてそれはユーザーが必要とするものでしょうか。商用車は、趣味性ではなく仕事の道具として評価されるものです。リサーチの結果でそういう結論に達すると、重要視されるのはドライブの楽しさやレジャーの場で使えることではなく、機能性や堅牢性、そして調達に必要な価格です。さらに想定されるユーザーはカーマニアではなく、貨物会社の備品徴用担当の人ではないかと思われます。
そうしたサイトに求められるのは、車種のバリエーションや目的を果たすためのオプションの豊富さ、導入時のコストを算出する見積もりのシステム、などではないでしょうか。おそらく、リッチなブランディングサイトではないことは明らかです。

こうした答えを導き出すために、定義や研究は大きな役割を果たします。クライアントにリサーチの結果を伝えて新しい指針を提案し、どうすれば購入候補に入れてもらえるか、購入の意思決定のために、どういう機能をサイトに盛り込むか、というアイデアを出します。そして、プロトタイプを作って検証し、もっとも有用なデザイン/機能のサイトを提案し、クライアントに選択していただきます。公開したあとで、ユーザーから得られたフィードバックを生かし、さらに洗練された仕組みとみやすいデザインを備えたサイトに育てていけばいいのです。

こう書くとシンプルですが、最初の「リッチなもの」からの転換点では高次の知的活動を伴うものですし、サイトを改良していくことは、状況に適切に対応する知的活動を伴います。適切なデザインを定義するためには、つねに説得や提案、検証といったサイクルを持続させる必要があります。
それによって、「デザインの再定義」も可能になっていきます。

Webフォントサービスを片っ端から試してみたいですし、オンスクリーン組版ももっと探求していきたいです。もしサポートいただけるのでしたら、主にそのための費用とさせていただくつもりです。