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小川洋子さんが大好きです。

1人でできる。
飽きることがない。
天気だって関係ない。
どこでも、どんな姿勢でもできる。
だから、本が好き。

初めて好きなったのは16歳の夏。
現代文の教科書に載っていた小川洋子さんの『果汁』。
あれが、私を魅了した。

少年のまだ不確実な恋、少女の「壊せばいいわ。」の秘密めいた響きと音が聞こえてくるような大胆な行動、一面のキーウイ。
そして今までのどこか消えそうで謎めいた描写から一転した、ラストシーンでの痛いほどリアルな彼女の涙。
筆者の作り出す世界観、背中をさするような言葉。

現代文の授業の度に、私は『果汁』を読んだ。
ミロのヴィーナスの失われた左腕のことも、憐れにも虎になり果ててしまった彼のことも、そっと檸檬を置いた彼のことも、どうでもよかった。
授業が始まって開くページは、いつでも『果汁』だった。
私は一面のキーウイとガラスを割った彼女に、いつでも夢中だった。

『果汁』を授業で扱わないことに、心底ほっとしたことを覚えている。
良かった、良かった。本当に良かった!
これでずっと分からないままでいられる。
私は、ずっと夢中でいられる。

あれから4年経った今でも、私はまだ夢中なままである。

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