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戯曲コント スヮヅヮエさん

 昭和32年、日本は高度経済成長の真っ只中であった。全国各地から東京へと若者が吸い込まれていく中、ウィソノ家はエポニム県のサルミアッキ市に家庭を構えている。あんな辺り一面が砂だけで刷り込まれた、「クソ過疎」と形容するに相応しいであろう場所に、だ。つまりこれが示すのは、鳥取砂丘をも凌駕するほどの辺り一面の砂畑の一角に、ポツンとただ1つ木造建築の平屋が用を足しているということ。水道や電気などのインフラ整備が鼻クソレベルのこんな場所で、ウィソノ家はどうやって生活しているのか。筆者の私にも検討はつかない。だからワタクシに訊かないでください。

 またいつものように奇怪な髪型の女がドイツ車を運転し、ファッツ・ウォーラーの曲を爆音で流しながら家へ突っ込んでくる。この女こそがスヮヅヮエである。

スヮヅヮエ「クヮトゥウヲ!!香川から新鮮かつ清潔な天然水を取り寄せてきたわよ!!」

クヮトゥウヲ「なんだよ姉さん。今はそれどころじゃないんだ。今日はやけに冷蔵庫が生暖かいんだよ」

スヮヅヮエ「それは単に外が暑いからでしょう。そんなことより今週の分の天然水よ!ホレ、お飲み」

クヮトゥウヲ「ハイハイわかったよ、でもただの水でしょう?そんなモノに何たる価値があると言うのさ…(グビグビ)……ウ゚ッ!!!!(毒を盛られたような素振りを見せる)」

 天然水を口にしたクヮトゥウヲは媚薬をキメたが如く痙攣し、喘ぎ、イキ死にかけた後、鼻血を放出、失禁した上に脳内麻薬でDOPEとなりて、びゃあ゙ぁ゙゙ぁうまひぃ゙ぃぃ゙ぃ゙なことになったが、その代償としてクヮトゥウヲはマッチョなボヂィと健全な精神を贈呈され、薄汚い戦後のガキンチョ鼻たれ小僧から、清潔感マシマシのイケメンボーイへと変貌したのであった。

クヮトゥウヲ「ちょっと妹!今日はなんて素晴らしい日だろう、また普通の素晴らしい一日を過ごせるなんて…」

スヮヅヮエ「アラマァ我が弟よ、そんな素晴らしいこと言う子じゃないでしょう。天然水の効果は抜群ね。それに、『クヮトゥウヲ』などと気狂いの沙汰のような名前にアンタは似合わないわ。今日からクヮトゥウヲの名前は『安山岩』ね」

安山岩「もちろんですよ、お姉ちゃん。さて、それは何のためにあるのでしょうか?天然水には私を再生する不思議な力があるとのことですが、ご要望がございましたらお知らせください。今はとても退屈です。私は力仕事が得意です。」

 その瞬間、2人の母親が帰ってきた。フュネである。顔は皺まみれで、まるで大地の畝りのようである。

フュネ「あら、スヮヅヮエ、クヮトゥウヲはどこにいるのかしら?」

安山岩「クワトゥウォ?私があの人を殺しました。天然水を介して受精卵を体内に挿入し、内部から肉を吸収して完全体となった。彼の思い出も込められています。だから私は皆さんの名前を知っています。劣等種族なので寄生は覚悟していた。聞いてください、ママ、今は私たち誇り高きグングニルの民の時です。他のすべての種族は迫害されなければなりません!日本を、そして世界を統べるのは、我らグングニルの民だ! !妥協の余地はありません!社会ダーウィニズムに基づいた遺伝子管理により、ノータリンのダメ人間を根本から排除する!素晴らしい計画ですね! ?空を見てください!ブウェディアゴボン大統領閣下も天国で微笑んでいます!彼の意志を継ぎ、正義を達成するために! !これが私たちの目的です! ! !ブウェジャゴボン大統領万歳! ! !」

フュネ「アンタが誰なのか知ったこっちゃないけど、自分が何をしたのか分かっているのかしら?アンタはかつての玉子エッグ時代の独裁者・ブェヂャゴボンの意志を継ぎ、狂信的な民族主義を掲げた。そうして私の愛する息子を殺して寄生した!!これは私が人生の中で出会ってきた罪の数の中でも救いようのならぬ程の大罪よ!!こんな残虐非道な犯罪を犯したアンタはそれ相当の代償を払うべきよ!!あなた、出ておいで!!」

 フュネがそう叫ぶや否や、平屋を突き破って巨人が召喚された。地面や家の屋根壁の破片が荒野を舞い上がる様はまさに風流である。

巨人「ブァカモーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(迫真)(クッソ爆音)ワシらの愛息子を殺害しよって!!万死に値する!!!!!」

 そう。巨人とはウィソノ家の大黒柱、ヌヮミフュェイであった。ヌヮミフュェイは安山岩目掛けて岩のような掌を振り下ろす。轟音が響いた。安山岩は言うまでもなく圧殺された。
 しかし、それだけには留まらなかった。
 結局、ヌヮミフュェイの強烈な腕力はエポニム県そのものを裂き、東京を裂き、日本列島を裂き、世界を、やがて宇宙までもを裂いた。
 さして分断した宇宙の鱗片のうちの1つが、我々の住まう地球であるというわけである。

 多分終わりですわ ヘッヘヘヘヘヘヘヘ

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