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頼りなきひかりをなぞる泡沫とあわいの向こうゆらぐ星かな


貝殻を砕けば白く美しい破片散り何処へも行けないね


あの夏の少女は今も十六で また一つ僕だけ歳重ね


金銀の箔を散らした黒い紙広げ「よるだよ」と君は笑う


約束が形見になったそれからも変わらず花を探して歩く


訪れる光の裾が 目蓋撫で 透明な手が 明くる日を告ぐ 


天国に色があるなら青色だ 忘れ去られた記憶も同じ


どの星に愛されたかで目の色が決まる世界で石の子となる


花びらのと読んだときにひとひらの匂いは立って春の残照


追っている行が明るく光ってる 黒いインキが照らす眼裏


心臓はたまにリズムを間違えて飛んで休んでまだ動いてる


生き直すことが出来ると在りし日の私が言ったことを信じる


沈みゆく花の匂いを漂わせ葬列の中雨纏う女(ひと)


薄曇の向こうに見える光かな 「きっと」を乗せた爪先の色


円かなる爪は鱗屑とも同し 光を受けてつやり瞬く


夢で逢う名前も知らぬ恋人と語らい覚めて忘れ往く雨


夢というものが映しの鏡なら心は未だあの場所に待つ 


脳内にウニが居座り寝込んでる 痛みは海の記憶を覚ます


生まれた日きみにある羽教えようその背にずっとあったものだよ


白色の光の中を漂って青い星屑散るのを見てた


忘れつつある祖母の顔いつぞやの春に約束ひとつしたきり


抱きしめるためのやわこい温もりがここにあること安堵し眠る


抱き締めてくれと一言叫べたら春の一片振り向くだろか


息を止め束の間の死に生かされる ままならぬ日々でもまた明日


意味のある言葉だけ「ああ」全てだと思わないでと「ああああ」、叫び 


その色の名前は「つばさ」という青 新しい日々へと飛べるよに


ないほうがいいよと傷に言われてもせっかく生まれたのに寂しい


たくさんの人に愛されている犬しあわせそうに笑って駆ける


負い目たち縫って継ぎ接ぎ重ねてく遠目に見たら綺麗か知れず


日々のうち殆どは歌たるものだ 口遊んだら楽しくなるよ


覚めれども未だ真夜中で暗いまま 外では風の駆ける足音


夜明け前チョコレート食べ煮詰まった夜の藍色を飲んで生きる


幸福を間違えている今日は傘 濡れたいように雨に刺される


きみが寝る間の夜を縫う仕事 子守唄でも紡いでようか


夜闇の穴があまりに大きくて 視野の一部を月に食われた


花束を両手に抱き春を待つ 揺らぎの向こう 雪の解ける日

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