『捌く』#221
鯵を買った。家に帰って、まな板に置く。ぜいごをまずは切り取って、頭を落とす。これはたぶん、普通とは順番逆だな。頭を落としたら骨にそって刃を、尻尾の方へと入れ進めていく。ごりごり。上側の身と尻尾が外れる。ひっくり返して、また骨と身の間に刃を入れ進めていく。ごりごりごり。また身と尻尾が外れる。背骨と尻尾のセンターラインが残り、魚にとって左側と右側の身が外れる。三枚おろし。それで、刺身とした。骨はちょこちょことったけれど面倒くさくて、食べながらシーシーと逐次つまんで出した。アジはうまい。
近頃冷凍で、サバの味噌煮やアジの開きなど、まぁ色々とある。その魚たちは、三昧ではなく二枚に、機械によって真っ二つにされている。背骨は、まるで竹を割るようにスパァッと開かれている。身も同じく。身も同じくというか、骨も身も区分なく、一尾の魚が真ん中でスパァッと。ごりごりは無い。
人間の手だって、物凄く切れ味のいい包丁と、魚をぴったりと固定できるまな板と、圧倒的パワーと正確さを持った腕さえあれば、頭を落とした後に骨ごと、二枚に真っ二つにできるかもしれない。煮物や焼き物にするなら骨つきで旨い部分を両面に残せるから、良いかもしれない。ふつうに骨とを身を離すようにおろすと、旨味の強い側と弱い側ができてしまう。煮物や焼き物にすると少しだけ不満が出る。私は。食べやすいけど、あっさりしている(悪くはねえよな)。二枚ではこうなる。真っ二つならば、まぁまぁ旨味も両方に残せて、なんなら骨が真っ二つだから火もよく通って食べやすくなりカルシウムをしっかりいただくことができよう。でも真っ二つは、刺身には向かない。それぞれの身に骨を残してしまうと次処理の骨取りが大変。それならば三枚におろしたほうが手っ取り早い。身のついた背骨はサッと素揚げにでもすれば余すとこなく楽しめる。まえに行った居酒屋ではその素揚げを出していて、ポン酢と大根おろしと一緒に堪能させてもらった記憶がはっきりと残っている。適材適所は、ものの配置に言うことだけれど方法についてもケースバイケース、あるべきところにあるべき方法をとる。
ただ魚を捌いてみたところでこんなことまで思い至って、この手はまだアジしか知らない、まぐろは一生、刃を入れることはないだろうとなんかスケールがぐんと拡張して、またマッコウクジラの脳みその大きさに思いを馳せて霧散。
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