『靴下』#351
この冬の時期になると、外出時とは別の、室内用の厚手の靴下が欠かせない。子供の頃は母親が「冷え性で足の先が冷えて眠れないよ」みたいなことを言っていて「へえそんなこともあるのか」と聞き流していたけれどついに私も30を前にして足の冷えに悩まされることとなった。たまに聞く、冷えて痛い、とまでは至らないものの、家から五分離れた場所から夜に帰ってくるだけで足のつま先はヒエヒエに冷えている。条件によるのだろう、夜勤明けで最寄駅から家まで帰ってくるときには、冷えてる場合もそうでない場合もある、無論だいたいは冷えているのだが。でも夕勤講師明けの夜、五分離れた場所から帰ってくるときは例外なく冷える。帰り道を歩く以前の時間の使い方にもよるのだろう、ただじっとしているだけなら血流はイマイチだろうし。しかしとにかく、家に帰ってからつま先が冷えているならばそれはもう、厚手の毛糸の靴下を履いたって冷えたままなのだ。暖かくなる靴下もあるだろうからそれを買い求めたらいいんだけれどどうも、買おうかと思って物色しているうちに「まぁ、冷えているだけで困ることはないよな」みたいに変に自分を納得させてしまって従来通りの毛糸の靴下で「あぁつま先が冷える」と不満を言う。
冷え用の靴下への執着の薄さに対して、普段靴の中に履く靴下は、少しだけ気にして選んでいる。そうは言ってもブランドとかこだわりの材質とかそういうのではなく、必ず五本指靴下を履く、という習慣がついている。きっかけは単純なもので、これも冬場のことだったが、よくある長靴下で水虫になった。軽度の水虫だったので大事には至らなかったが、水虫になったというその事実が私に危機感を抱かせた。足に汗をかきやすいことは知っていたけれど対策を取っていなかった。調べるより前に持っていた情報で五本指靴下は足指の間の汗をきちんと吸ってくれて蒸れにくく水虫対策によいとは知っていた。ランニング含めスポーツには前から五本指靴下を使っていたけれどそれからのこと、靴を履くすべての機会で五本指靴下を履くようになった。スポーツでの利点は各指をそれぞれ動かせるから体重移動や力のかけ具合など足の使い方がよくなることで、それはいつもの歩行にもいい影響を与えてくれた。初めての靴でも豆ができないし、靴の中で指の自由がきくから疲れたときに足指をグーパーしてほぐすことも簡単。もう、五本指以外の靴下たちの出番がない。厚手の冬用靴下くらいしかない。冬用の厚手の靴下を、五本指で温感素材のものに変えたらいいのだけれど、そうすると何か全ての終わりが見えてきそうで、少し怖くてやっぱり冬用靴下の交代には手を出せない。
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