『コシ』#262

はじめに、『コシ』と書いてからすぐに、ゲシュタルト崩壊に見舞われた。
そしてそれからすぐ、途方にくれることになった。コシが、…コシの…えーと、熟語は何が適切なんだったっけ、と、どの言葉を連ねたらいいのかわからなくなった。
私はさっき、とても噛みごたえがあってシコシコした美味しいうどんを食べたのだ。その喜びからすぐ、今回の単語を『コシ』にした。あいにく食後すぐに書くわけにはいかなかったから、帰りの電車に乗ってから改めて書き始めた。そこで、途方にくれたのだ。
コシが、入っている、うどん。麺を打つのには腕だけでなく肩や腰も大事だと聞いたことがある、腰を入れることから、コシは、入るものだったっけ、と。しかし、どうも違う気がした。
コシが、効いた、うどん。いや、効いているというのは、ダシが効いているとか、小麦の風味が効いているとか、そういう類だ、食感には使わない。使うかもしれないけれど、コシが効いている、というのは何かが違う。
最寄駅について歩いているうちにもウンウンと唸りながら考えていたけれど出てこない。そのまま、家までたどり着いてしまった。ひとまずシャワーを浴びて身支度をしなくてはならず、ケータイを置いて浴室へ向かった。
そうして戻ってきたら、いつのまにか言葉もあっさりと戻ってきていた、いとめあっけなく。
そう、
コシのあるうどん。
とてもシンプルで力強い言葉。あのうどんを形容するにもぴったり。新橋の、おにやんま。
書けて、思うわけだが「コシ」ってなんだ、とまぁ疑問が出るわけです。腰の形容なのか、喉越しに関係する麺類独特の、活用のきく慣用句なのか、コシってなんだろう。擬態語っぽい、シコシコとした、って表現はあるけど、これに関係しているのか、いや、シコシコ自体は恐らくコシありきの後出し表現だと思うし、微妙だ。
コシってなんだろう。
麺に、腰が、ある。やっぱりこうなのだろうか。上半身と下半身をつないでいて、丈夫で柔軟な腰、それは身体を支える重要な支点としては理想な身体条件だ。この、身体の真ん中の核とも言える場所、軸とも芯とも言えそうだけれどそれだと棒状なイメージになってしまい、点的な中心をイメージするには核だろう、そんな腰から言葉を転用して、うどんの歯ごたえ、噛んでもスッパリふんにゃりとは切れない中心があること、これを言っているのだろうかと、こう思うほかない。そしてどうやら、やっぱりコシは腰らしい。なぜ腰なのかの由来までは、たどり着けず。やりのこし。

#コシ #180906

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