『無限』#254

先日本屋でパラ読みした本で、無限に関するパラドックスがいくつかあった。バッチリ覚えているのはこの2つ。
ひとつは、円の面積に関するもの。私たちは円の面積は「(半径)×(半径)×(円周率)」と教わった。文字式を習ってからは、「πr^2」と表して公式化した。さて、無限を使って、円の面積を求めてみる。円を、ピザを分割するように中心を通る直径方向にどんどんカットしていく。無数の扇型が出来上がっていくうち、扇型の弧の部分は限りなく直線に近づく。すると、非常に細く刻まれた1つの扇型は弧を底辺とし半径を高さとして三角形に見立てることができる。円の周長は、2πrである。限りなく細く刻まれた三角形、ピザのピースの底辺を円周とみれば、底辺の長さの合計は2πrであり、全ての三角形の面積を求めると、「(底辺)×(高さ)÷2」=2πr×r÷2=πr^2、となる。円の面積の公式と同じ値になる。無限の適用で、公式が導き出される。
この例示だけで文字数を食うのは不本意だ。
さ。もうひとつ。一辺の長さが1の正方形を考える。対角線の長さは、三平方の定理と平方根を習った中学生ならばわかるはずで、√2、または、1.4142…と続く無限小数。これは明らか。では、対角を結ぶ、階段を書いてみる。ジグザグジグザグと対角を線で結んでみる。この階段の、縦と横(踏面と蹴上と言ってもいい)の長さはというと、辺の長さとそれぞれ等しいわけだから、縦が1、横も1、足し合わせれば2となる。これは段を細かく刻んでも同じことで、3段だろうが50段だろうが1000段だろうが、縦と横の長さの和は2である。この段をものすごく細かく刻むと限りなく直線に近い階段が出来上がる。ぱっと見は対角線のように見える。対角線ならば長さは1.4142…の無限小数であるはずだが、階段である以上、縦と横の和である2が正しい。無限の適用で、値の不一致が起こる。どうしたものか。
このような、無限のパラドックスを見た。それにつられて、先日『螺旋』を書いたが、中村航さんの「ぐるぐるまわるすべり台」をまた読み始めた。黄金螺旋が収束するある一点に向けてぐるぐると回り続けることと発散方向のこととを、記憶をはるかに超えた頻度でさまざまな心象風景で描写される。
漸近線を習ったころからだと思う。無限が面白くなったのは。限りなくX軸に近づく曲線が存在することに、奇妙さと、文字通り無限の可能性を感じた。
最近の無限マイブームを引き起こした、砂もフラスコもない砂時計を、また今夜もひっくり返す。この無限計はいつでもいつまでも砂が落ち切らない、そういうレトリックを見える形で体現してくれている。

#無限 #180829

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