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抱え込みは新任管理職あるあるネタ

『虎に翼』第38-39話、とうとう寅子が辞表を出してしまった。

地獄の道を進む過程での大きな挫折。ふたつの視点で語ってみたい。ひとつは新任管理職あるあるネタの「仕事の抱え込み」。もうひとつは、寅子をここまで立ち向かわせることができたシスターフッドの崩壊。これは原因のひとつとも結果とも取れるものではあるけど、ホモソーシャル社会のカーストに対峙し得るものとしてシスターフッドを見てきたので、別項を立てたい。

新任管理職にありがちな「仕事の抱え込み」。やる気はあるし、仕事ができることを周囲に示したいから、新しい課題や難しい問題に積極的に取り組む。一方で部下やプロジェクトメンバーに仕事をうまく任せるスキルが身についてないし、同僚を頼ることもしたくなくて、自分でやった方が早いとか他にできる人がいないからと判断して抱え込み、気がついたらオーバーキャパシティ。

第38話、妊娠初期で体調がすぐれない上に仕事を抱え込んだ寅子が陥ったのも、それ。久保田先輩と中山先輩が家庭の事情で弁護士を辞めてしまい、「もう私しかいないんだ」という意識が孤独感と責任感を揺さぶる。後進の女性弁護士を誕生させるためにもと母校の講師まで引き受けてしまい、倒れてしまう。
「本当は辛くて辛くてたまらないんです」と穂積先生に打ち明ける。
が、穂積先生の「君が優先すべきは子を産み、母となること」というアドバイスが寅子の求めるものと違ったのだろう。

うーん、初めて穂積先生が寅子と出会った時に「続けて」と言った時のように、寅子の思いや考えをただ引き出してあげればよかったんだろうね。無力感や焦りを吐き出させてあげれば、穂積先生の言葉に「なんじゃそりゃ」と内心で思ったり、「なんで私だけ」という被害者意識(桂場が「怒っている」といったのはその表情なんだろう)に囚われたりしなかったろうね。

そもそも寅子が法の世界を知ったのは穂積先生が「続けて」と話を促し、「穂積先生だけが私の話を遮らずに聴いてくれた」という感激があったから。だから、思いを聴いて欲しかったんだろう。

コーチング的な視点で言えば、穂積先生は「妊娠しているあなたの母体が心配なんだよ」という「I (私)メッセージ」で話してあげればよかった。「子のため母親となることを最優先しなさい」という指示的な言い方では、新人弁護士としてキャパオーバーしてしまった寅子の苦悩に寄り添えなかった。

新任管理職でなくてもあるあるで、私も何度か、うつで仕事ができなくなったり、心身ともに疲弊して退職したり、経験しているだけに、追い込まれた寅子を見るのは辛い。

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