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自分の立ち位置を見つめなおす

新型コロナウイルスに世界中が苦しみ始めて2年以上たった今、多くの人がコロナの蔓延を恨み、一刻も早い収束を願っています。
しかし、本当にコロナはただの悪者なのでしょうか。私たちにネガティブなものしかもたらさないのでしょうか。コロナもきっと何かしらプラスの面も持ち合わせていると思った私は、主に東アフリカで活動する日本人から、コロナをポジティブにとらえる方法を学ぼうとしています。

第12回目はルワンダでソーシャルビジネスを展開されている山田美緒さんです。山田さんは、旧大阪外国語大学(現大阪大学)外国語学部アフリカ地域文化学科に進学し、在学時からアフリカに訪れていました。1年の夏休みに友人とタンザニアに旅行したり、3年の終わりには休学して、ケニアから南アフリカまでの8カ国・約5000キロを男装して自転車で縦断するチャレンジもされています。将来は世界の貧困を解決したい、と漠然と考えていたそうですが、帰国後は出版社に就職し、営業や、同社が経営するイタリアンレストランの立ち上げなどに関わります。その後退社し一般社団法人コグウェイを設立して、四国ツーリングツアーを主催するなど、サイクリストとしての活動を本格化します。また長男を出産後、保育所に入所できなかったため、公民館などを利用した保育システムをつくるなど、ご自身で道を切り開いていきます。夫の転勤でシンガポールへ移住しますが、しばらくして夫が独立し、ルワンダで事業を立ち上げることになりました。2016年10月にKISEKI Corpoorationを設立し、2か月後に富裕層向けの日本料理店を開店します。日本人の寿司職人がいる店として評判になりましたが、問題が多発したため2018年にソーシャルビジネスへと方向転換することとなります。「地域のお母さんが笑顔で暮らせる社会を創る」をコンセプトに、仕事に一生懸命なシングルマザー15人とともに、レストラン、日本人宿、現地の幼稚園への支援事業、日本人ボランティアプログラムなど、様々な取り組みを提供しています。2021年9月ごろからは朝ごはんの配布を幼稚園で始め、今年3月からは新たに子ども食堂をスタートする予定です。

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↑ サイクリストとして(息子さんたちと共に)

山田さんにとってのコロナ禍は、「自分の立ち位置や限界を考える」時間だったそうです。

コロナはレストランやホテルなどのホスピタリティ業界に大きな打撃を与えました。キセキももちろん例外ではなく、2020年9月に宿とレストランを一時的に閉店せざるを得なくなりました。周りのレストランやホテルも同様に閉めたり、潰れてしまったところもあるようです。その結果、失業者や物乞いが明らかに増えました。ただでさえ貧困やジェノサイドの記憶など、ルワンダはまだまだ問題が多いにも拘らず、コロナでさらに負のエネルギーが渦巻いているように感じたそうです。そんな中、山田さんは自分たちの立ち位置、今何が出来るのかを考え直します。ルワンダにある山積みの問題に色々悩みがちですが、「自分が考えても仕方がないこと」と「自分が考える意味のあること」を把握し、前者は考えるのやめ、徹底的に自分が出来ることを考えて実行に移すことにします。

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↑ 朝食配布の様子(チャパティという平たいナンの様なもの)

それによって、普段から嫌なことが頻繁に起こるルワンダですが、「それらをすべてストレートに受け止めていたらダメだ」と改めて思い、自分の立ち位置や限界を見つめ直したそうです。これはこれから生きていくうえでも役に立つ、ポジティブなマインドセットを生み出しました。

さらに山田さんは、「そのおかげでキセキは今も生き残っている」と話します。コロナが深刻になり、宿もレストランも閉めて収入ゼロになってしまったころ、あるボランティアの男の子が「ルワンダのママがベビーシッターになったら面白そう」と提案します。それを聞いた山田さんは、「それだ!」と思い、ルワンダのシングルマザーたちと日本人の子ども達とのオンライン交流を企画します。翌日にはホームページを立ち上げ、その2日後には募集を始めるという素晴らしいテンポ感で計画は進められました。シングルマザーたちはみんなパソコンも触ったことがない中、ZOOMを使い、協力し合いながら、山田さんがカメラの前でカンペを使って指示しながら、進めていきました。徐々に慣れていき、今ではママたちだけで回せるようになったそうです。現在では月額で利用してくれる会員者数は50人ほどとなり、ルワンダと日本を繋いでの国際交流は大好評だそうです。幼稚園に限らず、国際系の大学のゼミやサークルも利用しているとのことです。(みなさん良かったらぜひご検討ください!)これによって、これまでは「海外」「ボランティア」と検索し、ヒットした人がキセキのことを知ってくれていましたが、オンライン事業の開始によって、ビデオ通話で仲良くなった後に「ルワンダにもおいで!」と声をかけることができ、広報の窓口が広がったそうです。また、結局レストランを泣く泣く閉店せざるを得なくなったものの、今考えると経営はかなり大変だったため、取捨選択の一つとしていいきっかけになったとも思っているそうです。

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↑ オンラインプログラムの様子

また、いつもは沢山いる日本人ボランティアがいないことで、キセキを運営する上で時間の余裕が生まれました。それによって、コロナ禍で増えた、地域の助けを求める声に応える機会が増えたそうです。それまで収入はゼロだったものの、オンライン事業によって得られるようになった収益をシングルマザーたちの給料や地域への貢献に回すことが出来るようになったそうです。

これらはすべて、自分の立ち位置や出来ることを見直したことによって、山田さんがプラスに捉えられた・進めることが出来たことです。まさに「コロナのポジティブな捉え方」だと思います。そんなコロナをポジティブに捉えることに成功した山田さんは、コロナ後はまず日本からのボランティア・インターンの受け入れ、さらには外国にも広げたい、と話されていました。

ルワンダにおいては、コロナの感染状況がそこまで酷くないため、規制も解除されています。そのお陰で、日本からのボランティアが3月から戻って来るそうです。キセキにとってボランティアやインターンは欠かせない存在です。元々は年間100人ほど来ており、さらに2020年度は300人来る予定でした。ボランティア達の働き、またボランティアツーリズムであるため入る収入は地域への貢献に直接繋がります。日本人もコミュニティのみんなも幸せになれるこのプログラムは早く再開したく、さらに日本人だけでなく他の国々にも広げたいのだそうです。

山田さんからは、「自分の限界を知り、その中で出来ることを最大限やる」ことが物事を好転させてくれると学びました。これからも様々な活動を通して収入を得つつ、それを地域へ還元し続けていきたいと話す山田さんに感謝し、私も貢献していきたいなと思います。

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