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~人や企業との関係性が広がり、自分の中の世界を広げる~

新型コロナウイルスに世界中が苦しみ始めて1年半以上たった今、多くの人がコロナの蔓延を恨み、一刻も早い終息を願っている。
しかし、本当にコロナはただの悪者なのか。私たちにネガティブなものしかもたらさないのか。主に東アフリカで活動する日本人から、コロナについてポジティブにとらえる方法を学ぶ。

第4回目は土屋雅人さん。
土屋さんはSOLTILO株式会社の社員として、ウガンダ、ケニア、ルワンダの、経済的、社会的理由によって機会の不平等に直面している子ども達を対象に活動している。サッカーをする機会に恵まれない子どもたちに無償でサッカー指導、また子ども達により広い世界を知ってもらうために、職業体験や社会見学プロジェクトも月1、2回のペースで開催する。

土屋さんにとってのコロナは、「交友関係が広がり、さらに自分の世界を広げる」ものだったという。

コロナが未知で、海外在住の日本人の多くが帰国した後、土屋さんもやはりなかなかアフリカに戻ることが出来ず、活動がストップしてしまった。しかし土屋さんはそこであきらめることなく、国内で同じような事は出来ないかと模索する。対象は児童養護施設や母子生活支援施設の子ども達に。国内で機会の不平等に直面している子ども達に当てはまるのは、生活保護受給家庭や何らかの理由で家族から保護・支援を受けることが出来ない子ども達ではないかと考えたからだ。土屋さんの上司の前職が母子生活支援施設の職員だったこともあり、実行につながった。土屋さんにとっては、こうした施設にはあまり馴染みがなく、これをきっかけに学ぶこととなる。そしてここで、土屋さんはあることに気付く。それは国内の活動のほうがサポートが多い、ということだ。企業も国内の事柄だと身近であるからか、関心が集まりやすく注目度が高い。また、日本での活動だと、企業が国内のリソースを使ったり、コネクションを使って新たな企業や団体を紹介してくださる。こういった理由から、国内での活動においては職業体験がより充実したという。

内航船

貴重な体験だったという内航船見学の様子

プログラミング教室、内航船(国内の港と港をつないで人と貨物を運ぶ貨物船)の内部見学、獣医体験など、アフリカではなかなかチャンスのなかった様々な業種での職業体験を企画。新しい世界に出会う機会の少ない子ども達に、より多くの仕事を知ってもらうために行っている取り組みだが、体験先が土屋さんにとっても未知なものばかりだった。土屋さんが特に楽しかったと話すのは、プロのシェフに学ぶ料理教室。土屋さんは料理が好きで、子どもたちに教えているところで自分も一緒になって学んだとのこと。実は土屋さんの前任のコーチは、アフリカの子ども達を職業訓練校に連れて行った際に「モノづくりってかっこいい」と思い、実際に大工になった。子供の夢を広げるためにやっていたことが、自身の職業を変えてしまった実例が身近にいる土屋さんも、やはりシェフには憧れるという。土屋さんは、「子ども達のためにやっているはずが、それを通して自分もなかなかできない経験が出来たし、見たことない世界が見られて正直ラッキーだった」と話す。

アフリカでもやっている職業訓練だが、工場見学といった文化のない現地の企業だと、「外国人」である土屋さんの依頼を受け入れてもらいにくく、結果的に日本人経営(もしくは支援)の会社に限られてしまっている。また、子ども達の視野を広げることが目的であるため、職業体験先は『子どもたちの生活圏の外にあるもの』である必要があり、アフリカだとなかなか探すのが難しいという。(これまで実際に訪問した企業には日本食レストラン、オンラインでのツアー体験などがある)一方で国内であれば、職の種類も豊富であり、また会社が社会貢献や地域貢献のマインドを持っている場合が多く、コンセプトを説明すれば受け入らえる確率が高い。

料理教室 in アフリカ

アフリカでの日本食文化体験

「もしコロナ前の生活が続いていたらこんな様々な業界の人たちと繋がり、一緒にイベントや職場体験・サッカー教室のプロジェクトを実行することは出来なかった」

現在(8月末時点)はウガンダとケニア2カ国での活動をスタートしている。しかし国内事業が想像以上に成功したため、アフリカのプロジェクトだけでなく、国内のプロジェクトも、2~3か月単位になるが継続しよう、と考えているそうだ。以前は関わりのなかった企業も、活動に関心を寄せているため、長くつながっていき、サポートをお願いできたらと話す。縁を通して関係性を広げている土屋さんにとって、今回のコロナ禍での新しい出会いは貴重な繋がりである。

コロナ禍でより活発になったともいえるSOLTILOの活動だが、今後の計画として、もう一人主要メンバーが欲しいと考えているそうだ。現在は土屋さんがほとんど1人で3カ国をまたがるプロジェクトを進めており、1か国当たりの不在期間が長くなってしまう。そこで出来れば今年度中には、主要メンバーを増やし、分担してウガンダ、ケニア、ルワンダに長く滞在できるようにしたいという。さらに、日本人だけでなく、現地の人を雇って給料を支払えるようにしたいとのこと。現在は土屋さんがいるときのみ活動するチャリティのチームも多いが、現地の人をコーチとして雇えば継続的に練習を行える。現地の人の経済的支援にもつながり、また今回課題として浮かび上がったアフリカでの職業体験の充実化も計ることが出来る。これらを実行するためにも、まずは応援してくださる人を増やすことを頑張らないといけない、と土屋さんは明るく話す。

サッカー3

サッカー指導をする土屋さん

コロナ禍で世界をさらに広げた土屋さん。これからも、自身の魅力の一つである、人を惹きつける笑顔でたくさんの人を巻き込みながら、子ども達と共に新しい出会いを楽しんでいくと思う。
そんな土屋さんの縁を大切にする姿勢を学んでいただけたら嬉しい。

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