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一次元的な人間One-Dimensional Manへの揶揄

『一次元的人間』はマルクーゼMarcuseが否定の精神を失った産業社会の管理システムを批判した書物である。副題は『先進産業社会におけるイデオロギーの研究』である。理性の本質は所与の現実を克服するための否定の力である。批判の力こそ是正すべき現実を克服しつつ、夢と希望の未来への可能性を開ける理性の原理である。特に経営者は、現実をまたは本質を明確にとらえて次の商品を開発しないと淘汰してします。まさに、「The only thing that is unchanged in the business is change.」である。しかしながら、今の国民や経営者はどうだろう?このような批判の精神や否定の力を失ってしまった一次元的な人間になってしまったのではないか?自分の頭では何も考えることができず、マスコミやインフルエンサー、大手企業の宣伝のための話だけ聞いてるのではないか?マルクーゼが批判してた産業社会は、今の日本社会においても有効ではないか?皆が現実に同化してしまい、安心と安全ではなく、安心と安全の神話をだけ見ることができない。自分の目で見て考えて思考しなくなったのが、まさに一次元的な人間である。批判的な思考を喪失してしまったので。

最先端の技術を紹介しつつ営業活動をしながら、この社会に蔓延る一次元的人間や、一次元的な社会を感じてしまうのである。自由や個性、権力に対する批判や自己決定を行う能力を喪失し、人間の願望や理念、欲求を操作する一次元的な社会の中で埋没してしまい、無条件的な科学技術への信仰や、無批判的な合理性のイデオロギー、さらに言えば、大手の広告で宣伝される商品への信仰、それによって齎される安心と安全の神話に感染してしまっている。コロナではなく。。。資本主義や民主主義さえも形骸化してしまい、批判や否定の原理はその神話に傾倒する。とはいっても、3次元的な人間が存在する限り、神話にだけ埋没しないだろうという夢と希望も持っている。否定と批判の精神こそが夢と希望の未来を齎すのである。ベンヤミンの「希望無き者のためのみに、我々には希望が与えられている。」( Nur um der Hoffnungslosen willen ist uns die Hoffnung gegeben.) というように、夢と希望を信じて、このコロナ禍を終息できる可能性を探りたい。

株式会社eien&company

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