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SONY FE 85mm F1.4 GM (SEL85F14GM)

FE 85mm F1.4 GM (SEL85F14GM)は2016年にSONY念願の自社ブランドトップエンドの第一弾として2470や70200と共に発表された単焦点レンズですねぇ。

2016年時点でFEマウント単焦点は初期メンのSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAとSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA、その後1年以上後にDistagon T* FE 35mm F1.4 ZA、 FE 28mm F2、FE 90mm F2.8 Macro G OSSが追加…と言う感じで殆ど存在していなかったのでFEマウントの単焦点自体珍しい存在だったと言えます。

以前感想文を書いたPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAは85mm F1.4 GMに遅れる事三ヶ月と結構間隔が短く、2016年はその翌年発売されるA9(ILCE-9)の前年なので、今にして思えば大口径ズームと共にその為の準備をしていたという感じがしますね。

百川晴香

このレンズの特徴は、GMクラスの基本的志向である〝ボケと解像力の両立〟に有ると思いますが、これはもうMINOLTAの志向そのもので、GMクラスというのはMINOLTA思想直系のレンズ群と言えるかも知れません。
GM単焦点の拡充を85mmの次にSTFと続けた辺りにも〝直系〟を感じさせる展開でありました。

まぁ、MINOLTA αレンズの特徴はその描写のみならず、性能に対して価格が異様に安く、85mm F1.4クラスなど他社が定価15-17万円のところ定価約10万円(実売8万円前後!!!!!!!!!!)だったと言う超良心的価格面は引き継いでおりませんが(笑)、どんなに高性能で安価であってもユーザーは増えず結果収益を圧迫し身売りする一因になった気もするので、高額なのは事業を続けて頂く為にも致し方有りません…

実際のとこ、Gクラスの基本的指向も〝ボケと解像力の両立〟なので、基本コンセプト自体は余り変わらないんですけど、、自社内に〝GM〟〝G〟〝Carl Zeiss〟〝無印〟と色々あって判りづらいですね。 SONY社内的な序列だと
無印 < G < GM = Carl Zeiss
と言う順番なんでしょうけど、G = Carl Zeiss でもあり、GMクラスの登場でホント判りづらくなってしまってますが、ぶっつちゃけ、ユーザー的には
無印 < G = Carl Zeiss < GM
なんじゃないんですか?
PENTAXの★(スター)シリーズとLimitedシリーズのようにコンセプトと製品に明確な違いがあれば上も下もなく、仮にスペックで重なるような事態となっても〝別のもの〟としてどっちも欲しいって事になるんですがwww

柳川みあ


FE 85mm F1.4 GM、先輩筋に当たるPlanar T* 85mm F1.4 ZA (SAL85F14Z)とは比べものにならない程大きく重く(820g)巨大です。
85mm ZAから2.5cmも全長が伸びましたが、インナーフォーカスになったとか、色収差を抑制する為にEDレンズってのを追加しているので全長が伸びたのでしょうけど、可搬性はとても良くないので気軽に持ち運んで撮るようなレンズではありませんね。
他社製85mmではこれ以上の巨大レンズもあるのですが、2022年現在の〝スペックの割に小型軽量で高性能〟なGMクラスのイメージはありません。 

レンズはプラ製の鏡胴ですが至ってマトモ。
デザインや機能的にはその後のGM系に通じる特徴を多く備えています。
どこかで見たような表面処理ですがプラ製でも案外安っぽさはなく、冬場に触ると金属製同様に冷たく、なんだか金属を触っているのと同じような感覚です。

目立つ場所に製造国の記載はなく、よく見るとマウント部のプラパーツには〝Maid in Thailand〟との刻印がありますが…この部分はPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAと共有なのかな。

プラパーツに〝Maid in Thailand〟

SONYさん的に流行の絞りリングが設定されています。
動画使用で外部ディスプレイ俯瞰するにはあった方が良いし、使用者の好みでボディ側と選択出来ると言う事でしょうけど、ちょい緩めで節度がなく鞄から出し入れする際など知らないうちにAポジションからF16とかに移動していて撮影時に焦る事があり好きじゃないです。
絞りのクリックをON/OFF出来るスライドスイッチもありますが、使わないのでAF/MFスイッチと共にテープで塞いでます。
古いαユーザーなので、AF/MF切り替えはボディ側の方が馴れてるし。

フォーカスリングはCarl Zeiss系単焦点とは異なりゴム巻きなので、経年劣化で白色化したり、伸びてユルユルになり外れてしまうような気もしますが、購入から5年の今のところは大丈夫。
フォーカスリングの減衰はスカスカとまでは言いませんが、ちょっと軽めでスカスカ気味。 個人的にはネットリと絡みつくような操作感が良いのであんまり心地よい感じはしません。
リングの操作感はこのレンズ直後に発売となったPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が良いし、AマウントのPlanar T* 50mm F1.4 ZA SSMの方が減衰感はもっと良いと感じますが、AFで使用する限りは問題ないです。

誤操作を防ぐ為、AF/MFスライドスイッチはテープで固定。

このレンズの操作系で問題なのは〝プロユースに応える高い操作性〟を謳いながら、人物では縦位置が多くなるにも関わらずFHB(フォーカスフォールドボタン)は左側に一つという部分。
縦位置グリップを装着した時などグリップ側が上に来る場合、指の根元や掌で操作しろとでも言うのでしょうか、それともレンズを持ち手(左手)で支えるようにではなく被せるように持てと? それとも動画の事しか考えていない?
使えば直ぐに判るような事なのに、SONYの人達、自分達で撮影してないんじゃないの?

ここはMINOLTA時代から不満な点で、メカニカルなAFレンズの場合は構造が複雑化するのでやむを得ない面があったかも知れんですが、電子化した上にこれだけ巨大化したのなら10年前や20年前より設計の難易度は下がっているはず。
卓上の妄想ではなく、実際の使い勝手を相応の使用者に対してしっかりリサーチしてからデザインして頂きたい。


んで、考えたんですが、MINOLTA時代からの親指操作に拘らずレンズ右側の斜め下辺りにFHBを設置すれば縦位置でも横位置でも指先で操作出来るんじゃないですかね?
或いはリングにするとか…
MINOLTA時代からのユーザーは既に極々少数なので、UIはSONYらしい独自仕様を模索しても良いかも知れませんね。 自分はいにしえのユーザーだけど、使い易く改良されるなら大歓迎。

ロック機構が追加された仕上げの良いフード

フードはロック機能が付きました。 知らない間に緩んで落とすような事が防止出来て良いですね。
内側には植毛処理が成されていて手抜き感はなく、先端にはゴムが巻かれているのでレンズを立てて置く際には安定します。
補修部品の価格は一般的で、AマウントZAレンズのような篦棒な高額さはありません。 あのバカ高額さはなんだったんだ…


デカくて重いFE 85mm F1.4 GMですが、その甲斐あってか解像力はさすがによろしく、遠景でも十分以上な解像力で「このくらいで勘弁してやって下さい」と言いたい気持ちw

F1.4 開放
F1.4 中央等倍切りだし
F2.0 中央等倍切りだし
F2.8 中央等倍切りだし
F4.0 中央等倍切りだし
F5.6 中央等倍切りだし
F8 中央等倍切りだし

この感想文がなければ絞り開放で遠景を撮るようなCrazyな事はしませんので特に意識はしていませんでしたが、中央は開放でも十分。
周辺は少々弱いですが、絞り込んでゆく事でリニアに上昇します。

人物撮影にはまだ遠いですが、もうちょっと近い25mほど先ではどうでしょう。

F1.4 開放
F1.4 中央等倍切りだし
F2.0 中央等倍切りだし
F2.8 中央等倍切りだし
F4.0 中央等倍切りだし
F5.6 中央等倍切りだし

距離が近くなると開放では微妙なふわっと感を残しつつも芯はしっかりしていてより良い感じです。 もっと接近すれば更に良くなりそう。
MAX性能はF2.8~F4程度で、F2.8とF4の違いは殆ど無いような印象なので、解像力を求めてF2.8以上に絞り込む必要はあんまり無いと思います。

F5.6から若干緩くなってゆく印象ですが、F8辺りなら開放より周辺の描写力は高く常用可能範囲。
F11まで絞ると開放の方が良いという回折現象の影響が顕著に表れますが、最近の高性能レンズはだいたいこんな感じなので、FE 85mm F1.4GMだけが特別という事では無いです。
この〝絞ると緩くなる〟回折現象は、絞る程、或いは画素数が多い程影響が出るので、画素数の少ないボディの方が影響を受けづらく安定した描写を発揮出来るといえますね。

25mでは開放でパープルフリンジが見えますが、F4まで絞れば消えます。
EDレンズを3枚も使っている割には、この状況では補正しきれておらず案外目立つように感じますが、人物に対して通常使用する限りはここまで目立つ事は無いですねぇ…


F8 朝比奈 夢空


FE 85mm F1.4 GM (SEL85F14GM)のボケ質は、おねーちゃんレンズとして期待を裏切る事はたぶんないです。
先祖であるMINOLTAとAマウントのSONYにはボケ質に秀でたレンズが多々あるので、それらと比べた場合特筆すべき点は感じられませんが、細かい問題点が改善され通常使用するに際して不満が出る事はまず、ありません。

四ノ宮 雨
華井アロマ
高崎真梨子

安定し過ぎていて逆に面白みもないと言う、贅沢極まりない印象がw
本音を言えば、先輩であるMINOLTA 85mm F1.4 GやSONY Planar T* 85mm F1.4 ZA(SAL85F14Z)、或いはMINOLTA AF MACRO 100mm F2.8といったボケ描写の質が高いレンズを使っているとMTFの明確な向上に比べ〝より良くなった〟という質の向上を感じづらい。
ここはホントに難しいところで、先輩が凄いと後輩は〝ちょっと良くなった〟程度では上回った感じがなくて、あんまり変わらないような印象にしかならない。

勿論、悪い訳ではなく、Planar T* 85mm F1.4 ZAに比べ点光源周囲の偽色や二線ボケの発生も抑えられていて、日中でも夜間でも街中でも公園でも状況を問わず信頼して使用出来る安定したボケ描写です。


口径食や羽根形状が判りやすい点光源描写はどうでしょうか。

F1.4 (開放)
F2
F2.5
F2.8
F4
F2.8 絞り羽根の形状が露呈しますが、そこまで酷くない

絞り羽根はαとして初の11枚羽根円形絞り。
羽根の枚数が多い方が円形を維持しやすいハズですが、円形を維持する絞りはF2.5あたりと9枚羽根と変わりません。 ただ、絞り込んでいっても羽根形状は崩れづらく9枚羽根より円形に近い状態を維持します。

このレンズ後のFE 100mm F2.8 STF GM OSSに関しては溶けてしまうので羽根形状は判りませんが、135mm GM以降の11枚羽根より精度が低く、開放時から絞り羽根が露呈していて完全円形が存在しない設計製造ミスみたいなPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの11枚羽根よりずっと良いですが、スペックから期待出来る程の事はないですね。

開放での口径食はF1.4クラスとしてとても少ないと言えます。
このテストではF2.5程度で解消されますが、ボケ量が増える実写レベルでは大型化(フィルター経77mm)したにも関わらず先輩であるPlanar T* 85mm F1.4 ZA(72mm)とは大きく変わらないかも…STFを鑑みれば100mm F2.8で72mmのフィルター径なので'(だいたい)受光量が4倍になっている事を考えたら頑張ってるのかなぁ。
通常はだいたいF3.2-F3.5くらいで解消されます。

開放近辺のMTFが上がっているので、その近辺を使いたくても口径食の抑制がMTFの向上に対して不十分な為にその性能を存分に生かせないというのはあります。

縁取りは目立たないが、微妙に渦魔きっぽい何かが見える
参考用 Planar T* FE 50mm F1.4 ZA 開放

点光源周囲の縁取りは殆どなく、系統としてはクッキリ系ですがクッキリし過ぎない案配で発売時期が殆ど同じPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAとはだいぶ違いますねぇ。
当時新開発と謳っていた超高度非球面XAレンズなるものを使用していますが、年輪のような渦巻きは殆ど目立たないものの、高度非球面AAを使用しているPlanar T* FE 50mm F1.4 ZAの方が渦巻きが目立たず、点光源内部は少々物足りない。


とはいえ、実使用ではそこまで目立つ程でもなく、85mm ZAのように点光源周囲の色づきはなくイルミネーションの色に対しての得手不得手がないので、テスト以上に口径食の影響があるもののMTFの向上と相まって膝上から腰辺りまでのイルミ撮影では頼りになるレンズです。

F2.5
F2.5

AF速度は困らない程度で速くはないです。
特別遅いという感じでもないので通常困る事はないはずですが、自分のような旧い人間は〝超音波モーター=爆速AF〟と思い込んでる面もあるので当初は少々ガッカリ感がありましたね、、、んまぁ、Canon EF 85mm F1.2L USMとか遅かったしなぁ。

ただし、AF-SではなくAF-Cで使うと速いです。
無駄な測距走査が少なくなるのでしょうか、スコッとピントが合うし、ピント精度も問題がないので通常はAF-Cで使うのが良いですね。
長年、AF-CとかAI-Servoとかの動態予測は信用出来ずワンショットで連射してゆく癖が付いていたので最初は不安でしたが、現在のボディは優秀。
残念なのは、ここはボディ側の問題ですが、AF-Cだと〝ピント拡大からのAF〟と言うピントの合わせづらい状況で頼りになる機能が使えないので、ちょっと不便です。 けど、その便利機能も1枚撮ると拡大が解除されてしまうダメ仕様なんですけどw
あ、MINOLTA時代から存在するAF-Aは使用者の意図どおりに動作せず設定の際に邪魔なだけなので、そろそろ存在の無意味さに気がついて欲しい。。。

そういえば、新技術大好きのSONYさんはFEマウント後にレンズ駆動方式を沢山開発してるんですけど、公式説明ではどれもこれも良い事しか書いていないので優劣が判らず使う側からしたらどうでも良い事なんですが、気にする人は気にするんですよねw

FE 85mm F1.4 GM、ボケ質を含む光学性能は自社ブランドのトップエンドとして恥ずかしくない出来である事は間違いないと思いますが、2022年現在の〝小型軽量高性能〟なGMクラスのイメージからすると今ひとつな感は否めません。
サイズと共にスカスカ気味で上質とは言えないフォーカスリングや節度が足りず誤操作の原因となる絞りリング、一つだけのFHBという操作性、羽根形状の精度や口径食の抑制、点光源内部の渦巻きといった部分はもっとより良い質であって欲しかったところで、GM初登場のこの時点では煮詰めが甘かった感じがします。

個人的運用状況だと、Planar T* 85mm F1.4 ZAを完全に刷新するには至らず、35mm F1.4 G(SAL35F14G)やSonnar T* FE 35mm F2.8 ZA(SEL35F28Z) からFE 35mm F1.4 GM (SEL35F14GM)に刷新出来た状況とは大違い。
Aマウントも併用する身としては先代もじゅうぶん高性能なので、後輩はデカさと重さが負担になってしまい積極的に使う必要がないのでマウントに関わる運用性で必要になる状況や夜間など使うべき時だけ使う、という感じ。
LA-EA5を確保して以降は尚更積極的に選択する理由がない。
重さや大きさも性能の一つですよ…


無印のFE 85mm F1.8より口径食は少なく羽根形状も上質ですが、それらが目立つ夜間やイルミネーション撮影を重視しない限り、別の言い方をすれば、昼間しか使わないような運用ではF1.8で十分、多くの人にとってGMは不要でしょうね。
逆に、重視する人にはFE 85mm F1.4 GMしかないと思う。

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