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通年実行したいカメラやレンズのカビ対策

今回は私的カビ対策です。

交換レンズにチリやホコリが混入するのは多くの場合避けては通れない事ですが、カビに関しては発生を抑えるor増殖させない対策はあります。
カビ自体は〝生物〟なので、その生息環境を壊せば発生を抑えられ繁殖も抑えられる、というのが基本的な考え方です。

必要なメンテ用品は基本のブロアーやレンズブラシに加えて、除湿剤、除菌シート、保存用の密閉箱/密閉袋です。
個人的には色々使ってきましたが、使用頻度が高いものや代表的なものは都度リンクしておきますね。

では実践。


  1. 汚れを断つ
    カビ菌はどこから混入するのか判りませんが、レンズ内でも発生する事を考えると空気と共に常に浮遊していて全ての物体にカビが発生する可能性があると考えられるのですが、菌なので消毒する事で数を減らす事が出来るのではないかと。
    判りやすく考えるならチリやホコリ、手油等々の〝汚れ〟が繁殖の際の栄養分になり得るのでは。

    対策として、ブロアーでチリやホコリを吹き飛ばしたり、レンズブラシでホコリを払う等の基本対策に加えて、鏡胴やマウント部などはアルコールティシューや除菌シートなどで拭いておきましょう。 隙間はレンズブラシで。
    ただ、レンズ表面は拭かないのが無難です。 拭く(擦る)事で微細な傷が付く可能性は否定出来ないのでブロアーでホコリを吹き飛ばす程度に留めておくのが良いと考えますが、保護フィルターを使用している場合は拭いてしまって良いと思います。
    保護フィルターは付ける前が綺麗であれば原因となる汚れ/ホコリ/菌の混入から保護されるので、鏡胴や中玉/後ろ玉がカビカビでもレンズ前玉は綺麗、なんて事がありますw 

    冒頭〝空気と共に浮遊している〟と書きましたが、防塵防湿処理が施されたインナーフォーカス・インナーズームのレンズは空気の混入が少なそうでカビに強そうな気がしますけど、空気が存在する以上は気のせいです… 


  2. カビに適した環境を壊す
    日常的な防止策としては、普通に活動する場所(居間とか)でカビが発生する事は多くなく、日当たりが悪く風通しの悪い、風呂場とか押し入れとか部屋の隅に方が発生しやすい事を踏まえると、どこかに保管/収納するより目に見える場所に置く/頻繁に使う事が結果的に発生を抑えられるので、通常は収納せずに目の届く場所に置いておく方が良いと思います。

    マンションの半地下みたいな住居だと、風通しも日当たりも悪く湿度は高めで安定していて、そういった居住環境だと見えるところでも不安があるので、以下の積極的な防止策が必要ですね。


    積極的な防止策ですが、カビ菌が周囲に浮遊/付着していたとしてもカビの生息(発生)には適切な温度と湿度、酸素が必要なので、このうちどれか一つでも適していないと生息は難しいと考えられます。
    カビの好む温度は人間と殆ど同じと思われますが、日常生活を送る以上は快適な温度で過ごしたいし、酸素を断つと人間も生きられないので、湿度を管理する事が積極的な防止策となります。

    発生し易い湿度には諸説あり、そのどれも真偽の程は判りませんが、50%以下なら発生の可能性は少ない事で一致するように思います。

    室内の湿度を管理するのはコスト的に難しいので密閉可能なケースに収めて保管するのが通常の手順となりますが、発生源を断つ為に1の対策をしてから収納するのが理想です。


保管するケースは防湿庫等の専用品の使用が良いのかも知れませんが、ガチの防湿庫って金額はそこそこするし、大仰で、高価な機材を並べて硝子越しに見やって悦に入りドヤッてるイメージがあって好きじゃないんで、自分は機密性の高いケースに除湿剤と共に入れて保管しています。
ナカバヤシのドライボックスのように比較的手を出しやすい価格であれば専用品もアリだと思うのですが、実用品を他の何かと勘違いしてる気がするガチ系はちょっとなぁ…

ナカバヤシのドライボックスはお手頃価格で魅力的に思える

ついでに〝プロは(必ず)防湿庫を使う〟というのはないですねぇ。
連日のように撮影があったり遠方へのロケで数日外出するといった事が多い場合、先述したように使用頻度が高く発生しづらいし、明日や明後日また使うのに撮影後いちいち防湿庫に入れる手間をかける人は少数だと思います。
プロと言っても色々でしょうけど、自分は見た事が無いですね。
たぶん、使うとしてもバックのまま防湿庫に入れてしまうとか、使用頻度の低い機材だけじゃないでしょうか。
ガチもの防湿庫は、むしろ愛好家の為に存在していると思います。


除湿剤は高額なものでなくても十分な効果があり、除湿効果があれば構わないので、カメラ用品だけでなくスーパーで売られている日用品や商品に添付されているようなものを棄てないで転用しても良いです。 
せんべいとか海苔などの食品に同梱されているキングドライとかネオドライヤーとか中身を包んでいる袋は違いますけど、カメラ専用品として販売されているものと中身自体は同じだと思うんですよね。
それ以上に添付品はなんと言ってもタダ。
ついでにエコ。
素晴らしい。

棄てずに再利用される除湿剤達。このタイプは中華製品に入ってる

食品添付のものを再利用する場合、カビの発生源となる油などの物質が付着している可能性があるので外装はアルコール等で拭いておきましょう。

以下は用途によっての使い分けです。


PELICAN PROTECTOR CASEのような機密性の高い可搬ケース
保管だけでなくロケにそのまま持ってゆくような比較的使用頻度の高い機材に適した手段で、重くて国内では高額なのが欠点。 ただし、恐ろしく頑丈でPELICAN PRODUCTSの製品はぶつけたり踏んでも壊れる事はなく、椅子や踏み台の代わりになります。
このタイプのハードケースは外寸に対して内寸が小さく収納力は高くないので、除湿剤はコンパクトなカメラ用の専用品や商品に添付されていたものを流用します。

除湿が進行してゆくと色が変わったり、最初は袋の中でカラカラとかサラサラした除湿剤がパンパンに膨れたり、カラカラやサラサラがなくなり固まるような感じになります。
多めに入れればそれだけ保ちますが、初期状態の方が除湿性能が高いと思われるので早めに交換するのが良いでしょう。 交換したものはまだ使えるなら別の容器(用途)で使い廻します。
ちなみに、保護ケースはPELICAN PROTECTOR CASEよりSTORM CASEの方がラッチが扱いやすくお勧めです。 ケース内部は耐衝撃性ではウレタン、収納力ではディバイダータイプ。

いちおー、クリップオンにも使ってるけど、ストロボはカビた事は無いなぁ…


パッキン付きの日用品/食品ケース
機材の量や大きさで利用するケースも変わりますが、車やバイクに使うような密閉ケースで例えばこんな感じの。 個人的にはもっと安いコレ(生産中止らしい)を使っています。
こちらは持ち運ぶ事はせず長期保管が目的なので、水が溜まる大きな除湿剤(個人的にはドライペット)と共に使用しています。
ドライペットは交換時期が判りやすく、ケースサイズや収納密度、開閉頻度に左右されるでしょうけど、年に数回開閉し、底の方に若干水が溜まってきたら交換するような使用方法では4年以上使えています。
当初、余りにも水が溜まらないので効果が無いのでは?と思いましたが、交換したドライペットをその後下駄箱に設置したら、湿度の高い時期は一ヶ月経たずに交換時期になってしまいました。
密閉は大事。

小さな機材の場合にはタッパーウェアのような食品保存用のもので代用出来ます。 2リットル程度のサイズなら100均で入手出来ますし、あまり大きくないレンズや小型のボディなら小型の除湿剤と共に収まり、大概半透明なので中身も確認しやすい。

衣装や小物ケースのようなパッキンのないタイプでも屋内や鞄の中に比べれば除湿効果が長く続きます。
ケースサイズや開閉頻度等によって変わるでしょうけど、うちの環境だとドライペットは2~3年程度で交換しますが、溜まる水は半分以下で当然カビの発生はありません。

白い物体がドライペット。 パッキン無しでもこのサイズだと2~3年放置しても大丈夫

この手段は皮革製品のようなカビの発生しやすい製品にも効果的で、石灰やシリカゲルの除湿剤はHDDのようなPCパーツの保管にも利用しています。
オイルレザーとか梅雨時には簡単にカビが発生するんですが(たぶん油がホコリを呼び寄せ発生源になる)、この手段を取るようになって以降は発生した事はないです。


ケースに除湿剤を入れた場合、カビの生息環境を破壊しているので発生する可能性が低くなり、経験則では劣悪環境に収納してもカビが発生した事はないので防カビ剤は必要無いと考えていますが、心配なら併用しても良いでしょう。
定番のFUJIFILM防カビ剤は謳われる効果範囲がかなり狭いので、一機材に一つ、くらいのイメージで使う事になります。

除湿剤も防カビ剤も密閉すると効果は長く続きますが、鞄の中など密閉されていない場合は効果を失うのが早いです。
鞄の中でも機材等で押し潰している場合は長く保ちますが、空気に触れる面積が減り除湿効果や薬剤の浸透効果が薄くなっている事が考えられるのと、密閉されていないと効果は弱くなるので、気休め程度の効果はあると思いますが絶大な効果は無いでしょう。

除湿剤は〝○○ヶ月以内に交換して下さい〟と注意書きがあります。
これは効果が落ちるからではなく、除湿が進行し場合によっては内容物が漏れ出す/容器から溢れる可能性がある、という理由からだと思います。
ドライペットは水が溜まる関係上場合によっては逆効果になり得るので半分以下を目処に交換しています。

除湿剤は石灰系シリカゲル系だと、シリカゲルの方が大概コンパクトで吸湿時に肥大化する事なく、吸湿時に大きな発熱もせず温度が安定しているとかで、飛散時の回収も容易いからなのか電子機器などにはシリカゲルが添付されている事が多いように感じますね。 インジケーターの色が変わって判りやすい商品も多いし…
日用品も含め除湿剤の多くは〝湿度を40%に保つ〟と謳っていて、どんなに使ってもそれ以下の湿度になりづらいと考えられるものの、40%になるまでの時間(即応性)は石灰よりシリカゲルの方が速いようです。
シリカゲルはA型とB型がありますが、調べると特性の違いが面白いですね。
石灰系とA型シリカゲルは併用すると良いのかも知れないなぁ…

まぁ、最終的な除湿効果自体は大きく変わらないのと、通常使う限りは袋が破けるとかはないので、個々人の使いやすさで決めて良いと思います。

太陽光で水分を吐き出し再利用される商品添付のシリカゲル系除湿剤

シリカゲルは過熱する事で再利用出来ますが、キッチンペーパーを敷いてレンジでチン、とか、フライパンで過熱とか、いずれも冷却時に加湿されてしまい案外難しい。 その即応性の高さが再利用の際には障壁になるような…
気長にお日様でじっくり干すのが良いと思われるので晴れた日に車のダッシュボードやリアトレイに置くのが私的なデフォ。 日が陰ったらジップロックに収納します。
ただ、手間のわりに謳われている程再利用出来ないのと(徐々に吸湿力が落ち効果が弱くなる)、石灰系の方が単価が安いので石灰系を選ぶ事が多く、この数年は購入した事がないですねぇ…
効果がない(薄い)ものを大事に再利用しても期待される程の効果は出ないのは無駄な手間だし、必要な時に直ぐに最大の効果を発揮出来た方が良いと判断しています。
再利用可能なタイプは〝再利用可能 ≠ 新品同様〟なので、結局のところ新品を使った方が良いんです。

最近は石灰でもシリカゲルでもない高性能な即効性のOZOやAGELESS DRYといった商品も登場していますが、少々割高なので日常的には気兼ねなく使える安価なものの方が良いと判断しています。
割高だとケチ臭く使うようになって効果半減、ってな事にもなりかねませんので、ケチらずにバンバン使う方が高い効果を維持出来て良いんじゃないかと。
まぁ、密閉されているとそんなに吸湿しませんが。

いちばんC/Pが高いのはドライペット。  一つ100円以下で400mlを超える除湿量は石灰やシリカゲルでは到底真似出来ない。
それと「水が溜まった♪」と除湿効果が実感出来るのがなんとなく嬉しい。


長期保管だと収納しづらいですが、ジップロックと除湿剤の組み合わせはお勧めです。
短期的にはカメラやレンズが雨に濡れてしまった場合や冬場など結露が発生した場合、適当に拭いてシリカゲルのような即応性の高い除湿剤と共にジップロックで空気を抜きつつ密閉しておくとケースに収めるより空気の量が少ないからか除湿効果が高く、火急時の除湿には好適なので、ジップロック(Lサイズ)に即応性の高い除湿剤を入れてバックに忍ばせておくと安心です。


除湿剤の中には〝脱臭効果〟を謳う製品もあります。
HAKUBA社の〝カビ・ストッパー〟を自動車用脱臭芳香剤(ファブリーズ)と共にSTORM CASE iM2500に入れておいたところ、芳香剤の臭いが殆どしなくなりました。 完全に密閉されているので高い効果を発揮したのだと思われます。
同様の脱臭効果は備長炭ドライペットも謳ってはいますが、ここまで強力ではないので、臭いに敏感な方は脱臭効果を目的に使用しても良いですね。
カメラ機材は判んないけど、雨天時に使った靴とか除湿と共に効果があるんじゃないかと…


除湿剤/防カビ剤の保管は、商品パッケージがジッパー付きが多いのでそのままでも大丈夫なのですが、空気に触れなければ使用期限はないのでジップロック等に入れておくと二重になって安心です。
個人的には管理と共に誤ってジッパーを完全に閉めていなくても影響は少ないよう機材と共に密閉ケースの中に入れて保管しています。

防湿庫には〝つきもの〟と言える湿度計ですが、これは要らないんじゃないですかね。
過去使用していた時期も有りましたが、あれはどっちかって言うと「見て満足する」為のもので、ガチもの除湿庫の場合は構造的障害確認の為に必要でしょうけど、今回のような手法だと壊れるなんて事はなく、除湿剤の交換時期は見れば判るし、除湿剤の除湿能力内で湿度が維持されるので湿度計の実用的な意味合いは無いように思います。


問題は、普段撮影に使うバックやリュックのまま保管に使う場合です。
これは放置や仕舞い込みと同様にカビ発生の可能性が高いパターン。
レンズによっては付属してくるケースも同様です。
もう、これに関しては〝それだけは避ける〟しかないですね。

PELICANやSTORM CASEのように機密性が高く運搬と保管ケースを兼ねたものなら問題ありませんが、本来可搬用途のバックやリュックを保管ケースの変わりに使うのは根本的なところで使い方が間違っています。
そもそもカバンは発生/栄養源となる汚れが多く付着していて、機密性は低く、逆に収納物への風通しは悪く、カバンや収納物が吸湿したらカビの生息に適した多湿状態で保管している事になります。

使用頻度が高いと発生の可能性は低いですし、短期的には除湿剤や防カビ剤と共に機材を入れるとか気を遣う事で発生は抑えられるかも知れませんが、やがて使わない時期が発生して保管する時も〝バックのまま〟保管すると、気密されていない関係上除湿剤や防カビ剤の効果は長く保たず、数ヶ月後、或いは数年後に使う際には対策の効果は無くなっていてカビが発生している可能性が高くなります。
生半可な対策で安心して発生を許すパターン…


今は撮影に凝っていて頻繁に使いマメにメンテナンスしていても、やがてその時期は過ぎ、撮影をしなくなる事や時期、使用頻度が落ちてくる時が来ますし、撮影機会が多くても何れは使わない機材が発生して〝保管〟という行為をしなければならない時が必ず来ます。
保管する時にカバンもキッチリ掃除/除菌をして除湿剤と共に密閉すれば良いかもしれませんけど、その時にそんな手間をかけるとは思えないw


いつか来る、次に使う時の為に日頃から正しく保管しておく事はとても大切です。


過去、正しくない保管をして何本かのレンズにはカビの発生を許してしまい、しっかり対策していたら良かったと思っています。
「高価なものだから大切に保管」というのが一番良くなくて、大切に使うのがいちばんいい。
使わないなら正しく保管。

写りには大きく影響しない、或いは安価で経済的ダメージが少なかったとしても〝必要な時に使えない〟〝何もしていないのに不良品になる〟心理的ダメージは小さくありません。

今回紹介した対策はいい加減でズボラな自分でも実行可能で、消耗品の除湿剤は低予算(年間1000円以下)ながら効果が高いので、せっかく購入した機材を長く使う為に梅雨時に限らず通年実践して頂ければと思います。

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