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『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』



7本目は2019年に公開された『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』について書きます。


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あらすじ


ある日すみっコたちは、お気に入りのおみせ「喫茶すみっコ」の地下室で、
古くなった一冊のとびだす絵本をみつける。 絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。 絵本の世界で出会ったのは、どこからきたのか、自分がだれなのかもわからない、
ひとりぼっちのひよこ・・・?
「このコのおうちをさがそう!」新しいなかまのために、すみっコたちはひとはだ脱ぐことに。 絵本の世界をめぐる旅の、はじまりはじまり。  (公式サイト




雑記


「すみっコぐらしってそもそも何?」って思って少し調べたんですが、たれぱんだリラックマで有名なサンエックスが展開しているキャラクターたちなんですね。2012年からいるとのことなので、思ったよりベテランでした。

さて今作、公開当時「大人にも刺さる映画だ」とTwitterなどで話題になっていましたがこの手の映画を独り身のアラサー男が劇場で観る勇気がなかったので、今更Primevideoで鑑賞しました。




感想


すみっコたちは各々悩みや弱さをいだきながらも隅っこに集まって仲良く暮らしており、そんなすみっコたちがみんなでカフェに訪れたところから物語が始まります。

カフェにあった不思議な絵本の中に引きずり込まれ、そこで1匹のひよこと出会います。そしてこの独りぼっちのひよこがどこから来たのかをみんなで探してあげようと不思議な絵本の中で桃太郎やマッチ売りの少女などの有名な童話の世界を巡っていきます。

ーー

すみっコたちは自分にできないことは手伝ってもらい、逆に自分が得意なことでは周りを助け、不器用ながらも互いに協力し合い絵本の中を進んでいくのですが、このパートはとても温かい気持ちになれますね。

人を助けることと人に助けられること。

素直に感謝を伝えることとそれを受け入れること。

すみっコたちの行動は美しいし微笑ましさ満載で、メインターゲットである子供たちにはもちろん、大人になって当たり前のことがだんだん難しくなっている人にも刺さるメッセージ性だなと思いました。

ーー

というかそもそも、このすみっコって存在が大人にはどうしようもなく刺さるんですよね

この作品において様々なすみっコが活躍しますが、互いに互いの足りないところを埋めあうすみっコたちは誰も主役じゃないんですよ。

人間だれしもある時までは自分が世界の主人公だと信じていて、けれど様々な挫折や諦めを経験して「自分が主人公だ」って胸張って言えなくなっていきます。

どのコミュニティでも主人公でいられる人はほんとうに一握りで、ほとんどの人は何かしらの「すみっコ性」をもってると思うんですよね。

そういったマジョリティが抱えているマイノリティ感みたいなものを肯定してくれるのがすみっコたちであり、この作品の暖かさにつながっているんだと思います。

こういった心の弱いところを容赦なく暖かく肯定されるので大人が泣くのもわかるわぁってなりました。

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さて、この作品はキャラクター達の声がなく、基本ナレーションベースで進行されるのですが、話の構造がシンプルなことも相まって誰がどういった状況に陥っていてこの先どうしたいのかとういうがとても分かりやすく「さすが子供向け!」

と思ったのですが、物語がクライマックスに向かうにつれてこの認識がいい意味で裏切られることになります。

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ひよこの居場所を探して冒険をする中、一度はバラバラにはぐれてしまっていたすみっコたちもなんとか合流を果たします。けれどひよこが絵本の中のどんな世界から来たのかが一向にわかりません。

「醜いアヒルの子」の世界についたすみっコたちは「ここだ!」と思い歓喜するのですが、どうやらここも違うようなのです。

そしてすみっコたちは絵本の中に居場所がないなら自分たちの元いた世界に一緒に帰ろうと言い、絵本の世界から脱出を試みます。

脱出をする際、絵本の世界で摘んだ花が出口を通れないことで「絵本の中のものを元の世界に持ち出せない」ことが示されるのですが、ひよこも同様、絵本の中からすみっコたちの世界にでれないことが分かります。

そこでひよこは思い出します

ひよこは絵本の中の、どの童話の世界にも居場所がないことを。

ひよこは、絵本の白紙のページに誰かが描いた落書きだったことを。ひよこは白紙のページにたった1人、もとから独りぼっちだったのです

子供向けの作品なので、こういった展開になったら何かしらの力が働いて最終的にはひよこもすみっコたちの世界に行けてみんなで仲良く大団円かなぁとか思って観てましたが、結局ひよこはすみっコたちに感謝して泣きながら独りぼっちの元の世界に残ることを決めます。

そして元の世界に戻ったすみっコたちは、ひよこが寂しくならないようにひよこが描かれているページに新たに仲間のひよこを描いてあげて物語は終わります。

エンドロールではひよこたちが仲良く暮らしている様子が描かれており、思わず「よかったぁ……」って言いました。

ーー

さて、すみっコたちと離れ離れにはなってしまったけどひよこはすみっコたちの暖かさによって仲間ができた。めでたしめでたし…

って思ったんですけど、作中で救われてなくない?って登場人物がいるんです。

それがぺんぎんです。

自分探し中のぺんぎんは居場所がなく自分が何者かがわからないひよこにシンパシーを覚え、作中で一番ひよこに親身になり、仲良くなります。

とかげにせつむりとんかつえびふらいのしっぽの様にほかのすみっコたちは元の世界にいた時から仲良しな存在がいます。

絵本の世界で初めて自分と似た存在に会い、親交を深めていったぺんぎん。もちろんそれはひよこも同様ですが、最終的にひよこにはすみっコたちが描いてくれたほかのひよこがいます。

しかし元の世界に戻ったぺんぎんにはひよこはいない。

っていう風に考えたらただ単にハッピーエンドな心温まる子供向け作品って感じにみれなくなっちゃったので、そのもやもやをこれを読んでくださった方々と共有させてください…ごめんなさい…




あとがき


全体的に話の構造はシンプルで、普遍的なメッセージ性をもっていてそれをキャラクターの愛らしさや温かさで包み込んだ、とてもまとまりのある素敵な作品でした。

どこかネガティブで、でも各々が個性を一生懸命生かして協力する様はすみっコたちの魅力をこれでもかと表していて映画としてはもちろん、「すみっコぐらし」というコンテンツそのものの魅力がとても伝わりました。

ちなみに一番好きなすみっコはとかげです。

次点でざっそう。いや、おばけかな。悩む。




最後に


すっかり毎週投稿じゃなくなりましたが続ける気はあるのでこれからもお暇なときに覗いてくだされば是幸いでございます。継続は力なり…



2020/12/13

hyve





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