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芸人をクビになった52歳の独身男性をテーマにした「ザ・ノンフィクション」の再放送が面白かった。

 テレビの再放送で、フジテレビ「ザ・ノンフィクション」の「52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~」を見ました。

 昔ガッポリ建設として少しブレイクしたお笑い芸人の小堀敏夫さんに密着したドキュメンタリーなんですけど、この人が、タイトルにもあるように一般的にはクズという言葉が使われる典型的な人なんですね。

・家はガスがずっと止まってる。

・ネタはまともに作らない。

・ネタ見せの際のアドバイスも聞き流す。

・ネタじゃなく「ギャラ飲み」(一般の人とギャラをもらって一緒に飲む)で収入を得ている(別にこれはいいんじゃない?って思ったけど)

・暇あればパチスロ。

・先輩の久本雅美さんの名前を使ってサラ金から高額を借りる。

・コンテストでは後輩芸人に先輩風を吹かしまくってその後輩たちに負けたあげく参加費を踏み倒して帰る。

・借金している後輩から紹介された仕事のギャラで借金を返してからすぐまた借金をする。


 などなど、そしてついに今まで目をかけてくれたワハハ本舗の主宰からも見限られてクビになってしまったら、なぜか急に女装芸人になるためゲイバーで修業を始め、それも6日でやめて、最後は後輩に紹介された営業でちょっとウケて女装姿のままパチスロをする姿で終わりというドキュメンタリーでした。でも、なぜか小堀さんという存在を不思議と切り捨てられない、いや自分の友達とか先輩でいてほしいかというとまた違うんですけど、そういう存在だなと感じます。本当にネタも面白くないし、その場をつくろう言い訳しかしないし、すぐお金せびるし、女装もLGBTQをなめてるとか差別しているとかそういう議論をするレベルでさえないですし、明らかにこれ嘘ついてるんだろうなぁみたいなコメントも多いですし。でも、小堀さんはそこまでしてでも芸人であることにしがみつく姿を見せるわけです。ワハハ本舗の主宰も「もう芸人をやめて次の人生を始めるべきだ」という思いでクビにしているわけですけど、本人はそれでも芸人を続けるんですね。その理由が

・一度売れた時の気持ちが忘れられない

・何でもないのに突然売れた芸人をいっぱい見て来たから続けていれば自分にも何かが来るかもしれない

という気持ちなんですね。多分何でもないのに売れたんじゃなくて何かをしていたことを小堀さんが気づかなかったんじゃないかなぁと思うんですけど、でもまさにライムスター「once again」の「夢別名呪い」って言葉がピッタリくる姿は胸に来るものがありました。

 あと「ああ、こういう人でも芸人の世界ってここまでは生きていける世界だったんだよなぁ」って思ったんですよ。

 これはいいことなんですけど、今の芸人さんってすごく知的ですよね。ロザン宇治原さんに代表される高学歴芸人さんも増えていますし、いわゆる第七世代とされる芸人さんのネタって本当に知性を感じるものが多いと感じます。また、最近はお笑い芸人さんがオピニオンリーダーや生き方のロールモデル、いわゆる「意識高い」を果たすことも多くなりました。そのいい悪いはどうあれ、オリラジ中田さんとかキンコン西野さん、あるいは渡辺直美さん、きっとフワちゃんなどもそうだと思います。EXITの兼近さんも考え方の先進性が評価されていたりしましたよね。それは色々な場所でお笑い芸人さんが倫理道徳や政治・社会を語るのが当たり前のことになったのもあると思いますが。多分、小堀さんってどんなに売れたとしても絶対オピニオンリーダーになんかなれようがないんですよ。絶対そんなオピニオン持ってないし、きっと適当なこと言ってそれが適当な嘘なのもすぐばれるみたいな感じでしょう。こういう人はもうお笑いでも難しくなっていってるのかもなぁと、何とも言えない寂寥感を感じるところがありました。何度かのお笑いブームを経て、お笑い芸人が社会の周縁から中心になったことの象徴なのかもしれません。

 なお、このドキュメンタリーについて地下芸人のゼウスちかおさんが「むしろ小堀さんは本当にすばらしいエリート芸人です」というコメントをされている動画がとても面白かったのでこちらもリンクを貼っておきます。


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