Son of Samの歌い出しのコードについて
YouTube黎明期から存在する動画「Elliott Smith Gives a Songwriting Lesson」を掘り下げるシリーズを不定期で始めます。
昔から何度も見てきた動画ではありますが、好きなミュージシャンから作曲を学べるのなら、この機会に吸収しつくしてみようという試みです。
今回はSon of Samの部分(2:30~)を取り上げます。
人前で弾くのに指ばかり見てちゃいけないよ、という流れから入りますが、むしろコードが面白いので自分なりに分析してみました。
Son of Sam歌い出しのコード
A→?→D7→F/C
「?」のところはひとまず置いておきましょう。
これから一つずつ詳しく検証していきます。
A:ブルース由来のメジャーコード
至って普通のAメジャーコードです。
中~小指ではなく部分セーハなのは、次のコードが押さえやすいからですね。(1弦はミュート)
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既に僕はここで驚いてます。
Son of SamはAマイナーキーで、歌い出しもAマイナーのメロディ。
なのに、コードはAメジャー!
メロディには短3度(ド)が含まれているのに、コードは長3度(ド#)を含んでます。勿論ぶつかってます。
これは、ロバート・ジョンソン等にみられるブルース由来の感覚です。
0:29の「my knees」をよく聴いてみましょう。
コードはB(シレ#ファ#)なのに、メロディは「レミレシー」です(マイナーというかドリアンっぽい)。
?:謎コード"D7 or something"
これはESオリジナルのコードです。
language(=用語)ではなくshapes(=押さえ方の形)で作ったコードの実例ですね。
押さえ方は004532、Aメジャーのセーハに薬・小・中指を足していきます。(人差し指はセーハのまま1~4弦まで全部押さえる)
構成音は低い方から「ミ・ラ・ファ#・ド・レ・ファ#」です。
彼の言うようにD7系だとすると、D7/EもしくはD7(9)/Eと表記できます。
(language使ってごめんなさい、エリオットさん。笑)
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※ここからは個人の見解です
ただし、この和音がD7の機能を果たすかというと疑問です。
僕は寧ろAm系だと思っていて、Am6add4/Eじゃないかなと(お気に入りの5thベースになるし)。
つまり冒頭のメジャーコードをここで本来のマイナーに戻していると思うのです。
D7:解決しない7thコード
2つ目のD7は、普通のD7です。
押さえ方はローポジションのC7を上に平行移動させた形になります。(1弦ミュート)
コードチェンジ前に5弦のC#が経過音として鳴ってます。地味にかっこいい。
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D7はGに解決するのが普通ですが、ねじれてF(/C)に進行します。
これは再三指摘しているES定番の進行です。(Son of Samは短調なのでIIコードではなくIVになりますが)
F/C:5thベース
そして次はF/Cで、ローポジションのFの6弦を弾かない形です。
Fコードの構成音は、「ルートがファ、3rdがラ、5thがド」。
つまりド=C=5thがベース音になっています。(第二転回形とも言う)
この響きが好きだと述べていますね(3:09)。
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5thベースと言えば、やはりペットサウンズ期のビーチボーイズの影響だったりするでしょうか。
1st Verseで言うと、「I may not」と「You never」の小節が5thベース。
ちょっと不安定で浮遊感のある雰囲気になります。
ベースラインに隠されたモチーフ
突然ですが、Son of Samの冒頭を階名で歌ってみましょう。
「♪ミーレードーラララー、ミーレードー…」
と、「ミレド」という順次進行での下降が2回繰り返されています。
さて、ここで謎コードから順番にベースラインを見ていくと、
D7/Eはミ、D7はレ、F/Cはド。
なんと、歌メロの「ミレド」のラインが隠れていました!
こういう工夫をしてるのですね。(クラシックで言う主題労作)
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今回は以上です。また気が向いたら順不同で書きます。