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withコロナ時代のアウトドアビジネス

はじめに

こんにちは。様々なアウトドアギアを簡単に検索・予約できるWebサービス「offto(オフトゥ)」を運営する会社で代表をしています。新型コロナウイルス(以降、コロナ)の拡大防止策として人々の移動が制限される今、僕らのビジネスも観光業・レジャー業のご多分に漏れず影響をもろに受けています。
この状況が1日でも早く収束してくれることが何よりも一番ですが、山中伸弥教授が自身のブログでも伝えているように、コロナとの付き合いは短距離走ではなく1年(または数年間)は続くマラソンになってくると思います。であれば、コロナが収束した”afterコロナ”の時代を想定して今できることを検討・実施するよりも、コロナと中長期的に付き合っていく”withコロナ”の時代を想定して今できることを検討・実施していく必要があると思います。

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上図は、ヤフー株式会社のチーフストラテジーオフィサー(CSO)で「イシューからはじめよ」の著者としても知られる安宅和人さんが提唱する「開疎化」を説明するマトリクスです。今、世の中は密閉から開放、密から疎、つまり開疎(右上の象限)の方向に大きく舵を切っており、密閉・密な空間で効率的に生活するために進化・発展してきた「都市」がコロナ禍によって変容せざるをえない状況になっていると言います。注目すべきは、これが東京だけではなく、ニューヨークやロンドン、バンクーバー、ベルリンなど世界中の各都市で同時多発的に発生していることです。人々の行動や価値観、そして社会が大きく変容する(それも急速に)転換期に差し掛かっていることをまざまざと感じます。

右上の"開疎"の象限にはアウトドアや海辺・山、広い公園など自然や郊外の要素が多く含まれます。社会全体がそのような方向に向かっていくことを前提とした時に、アウトドアビジネスはどのようにこの変化を受容し、発展していくことができるのでしょうか。
本記事は、アウトドアを愛する一個人として、そしてアウトドアビジネスに関わる一個人として、今思うことをドバーッと書いたものです。その通りになることもあれば、全く違う方向に進んでいくこともあるでしょう。結果は数年経ってみないと誰もわからないので、なんか言ってるな、ぐらいにカジュアルに読んでもらえれば嬉しいです。

アウトドアの楽しみ方が変わる

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アウトドアビジネスについて考えるために、人々がどうアウトドアを楽しむようになるかを考えてみます。コロナ禍以前、都市生活者にとってのアウトドアは、都市から郊外に移動して楽しむことが普通でした(上図左)。今この「移動」が以前のように自由にできなくなっています。なんらかの形で数年間は移動の制限が続くとすると、これまでのように都市から郊外に移動してアウトドアを楽しむというスタイルが様変わりしていくように思います。僕は、「❶郊外に移り住みアウトドアを楽しむ」、「❷都市部でアウトドアを楽しむ」、「❸3密(密閉・密集・密接)を防ぐように都市・郊外間を移動しアウトドアを楽しむ」といった「郊外」「都市」「移動」のそれぞれの要素がより際立つスタイルに極端にシフトしていく未来があるんじゃないかと思っています。

❶郊外に移り住みアウトドアを楽しむ

テレワークがコロナによって一気に浸透しました。テレワークができない業種ももちろんあるけれど、少なくともテレワークで仕事が成り立つ企業は急速にそっちにシフトしました。そして、テレワークでも十分生産性高いじゃん、コミュニケーションも工夫次第では意外といけるじゃん、という空気感が出てきているように感じます。この先、仮に今よりもコロナが落ち着いても、きっと元のようにオフィスに一同が介し、デスクを囲みながら密集した職場で仕事をする光景はなくなるでしょう。もうこれは不可逆的なシフトなんだと思います。
テレワークが企業の制度として普通に組み込まれるようになれば、都市部の企業に勤め、これまで同様の生活水準を維持しながらも郊外に移り住む人が増えそうです。人々の生活拠点が都市から郊外にも拡大していくわけです。すると、これまでは物理的に遠かった海辺や山が身近になり、アウトドアとの距離感がぐっと縮まる。非日常的な体験として考えがちだったアウトドアがより日常的な体験になっていく。わざわざ都市から移動しなくても、外遊びの舞台がすぐそこにあり、いつでもアウトドアに触れられる機会がぐっと増える。
当然、アウトドアに触れる機会が増えれば、そこで何かアクティビティをしてみようと興味を持つ人がでてきます。アクティビティをやるのが初めてであれば、アウトドア用品を買い揃えるか、借りるかするでしょう。アウトドア用品って一式揃えようとすると結構良い値段しますよね(キャンプ用品だと数十万円程度)。自分がそのアクティビティを続けていくかわからない段階で、用品一式をいきなり揃えるにはハードルが高い。なので、まずは自分がそれをずっとやっていきそうか、どんな外遊びのスタイルが好きかを見極めるために、レンタルやシェアで試しにやってみようという人たちが増えるでしょう。数回試し、自分のスタイルがなんとなく確立してきたらアウトドア用品を買い揃え始める。この「レンタル→購入」の消費行動って、国内では、カメラ・家電レンタルのRentioが先導してやっているように、実はカメラや家電業界では徐々に増えてきています。アウトドア業界でもそんな消費行動が増えてくるんじゃないかと思っています。

❷都市部でアウトドアを楽しむ

今後数年間、都市ではランニングや公園でのエクササイズ、飲食店のオープンテラス化、屋外イベントの増加など、閉密を避けた行動や形態の変化が起こり、それが日常的になるでしょう。郊外に移り住みアウトドアを楽しむのとは対照的に、都市でいかにアウトドアを楽しむかといった「アーバンアウトドア」の概念が広く認知される気がしています。そして、それを加速させるような様々なビジネスアイデアが生まれてくるでしょう。
外出自粛が続く今、SNSでは自宅の庭やベランダ、部屋の中でキャンプを楽しむ人を多く見かけますよね。withコロナの時代には、ベランピングに特化した新製品が登場したり、スノーピークと三井不動産が取り組んでいるようなアーバンアウトドアをコンセプトにした不動産も増えてきそうです。平日の夜には商業ビルの屋上テラスを使って、テントの建て方や焚き火の作法を学べる実践型アウトドア講座や少数制イベントが開催されるかもしれません。放課後は塾だけではなく、アーバンアウトドアの教室に通い人間力を磨く新しい習い事が、小学生の子どもを持つ親の間で人気になるかもしれません。

❸3密を防ぐように都市・郊外間を移動しアウトドアを楽しむ

3つ目は構造的にはbeforeコロナと同じですが、少なくとも向こう数年間は、これまでのようにバスや電車を使った団体移動は減り、代わりに自家用車や自転車のような少人数での移動が基本となると思います。目的地がある程度決まっている団体ツアーから機動力のある自家用車などに移動手段が変わることで、目的地のバラエティも富んできます。それに伴い、アクティビティツアーはより個人依りのものが多くなり、個人のニーズにフル/半カスタマイズされたもの(e.g. AirbnbのExperienceやAdventures)が増えてくるでしょう。シーズン中の激混み富士登山を控える代わりに、アルプス登山や低山ハイクをする人が増えるもしれません。目的地が多様化すると、その情報を紹介してくれるキュレーションメディアがさらに盛り上がりを見せるでしょう。アドベンチャートリップを紹介するYoutuberも増え、ソロキャンプのヒロシに代表されるようなカリスマYoutuberが他アクティビティでも生まれそうです。
少人数での移動そのものをアウトドアとして楽しむ人たちも増えるでしょう。最近は、Vanlifeという言葉が日本でもかなり浸透してきました。アウトドアがある郊外から郊外へ移動をしながら生活し、リモートで仕事をするような人も増えていきそうです。
また、環境省が国立公園でのテレワークの環境整備のために予算をつけるといった動きも出始めています。そうした動きに後押しされ、キャンプ場では企業向けのワーケーションやオフサイトミーティングのサービスが徐々に増えていくでしょう。企業の少人数のチーム単位で、平日利用するケースが増えそうです。休日のレジャー利用に偏りがちだったキャンプ場にとっては、平日のビジネス利用が増えることで稼働の変動を平坦化できるチャンスです。

おわりに

withコロナ時代のアウトドアの楽しみ方やそれに付随するアウトドアビジネスの一つの未来のあり方について、まとまりもなくドバーッと思っていることを書きました。
offtoチームもこの変化を柔軟に受け止めながら、来るべき時に慌てずしっかりとロケットダッシュできるように、今できることを粛々とやっていきます。これからも応援お願いします!