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13日目 カニ歩きから始めよう

日中は、お彼岸のお墓参りを住ませて今は空き家となっている義父方の家に立ち寄り荷物の整理。昔の百科事典に息子が興味を持って「特急電車」と「魚貝の生物」をもらって帰った。「特急電車」の序章が原始時代で、丸太棒で運搬する劇画から始まっている。そこからですか?

この家は冬におば家族が大阪から帰って住むことになっている。自由に出入りできるのはそれまでだろう。仕事の友人が浜田に来たときに泊めたこともあったし、それなりに私も思い出ができている。その友人と義父とで港のノドグロ丼を食べに出かけた朝もあった。

お墓参りの直前に一瞬のゲリラ豪雨があった。お寺の境内は砂利道も水たまりができていて、アゲハチョウが飛んでいて水を飲みに来たのか私たちの前で地面に止まった。ご先祖様のお迎えのようだ。さて、お墓掃除は5歳児の出番。「1人でやるからどっか行ってて」と言われたのでお花を取り替えるのを任せてみた。「できたよ」というので戻ってみると「シバ」と「お花」が左・右にきっぱり別れていた。他のお墓の花をよく見てね、と告げて、やり直してもらうと今度は全てのものが右側の花筒に入れられていた。子どもなりに自分の頭で考えた結果なのだろう。昨日から続いている「1人でできるもん」モードの腰を折らないように注意しながら一緒にやり直す。

家に戻る前に、県大付近にあるケーキ屋により、敬老の日のお土産を買う。この店はもともと別の場所で営業していて、恭子さんが初めてバイトした店だという。小さい街なので少し出歩けば、思い出の場所をめぐることになる。

夕方。恭子さんの実家がある浜田市熱田の家から坂を歩いて下ると10分ほどで海にでる。空き家が更地になったところから浜辺に降りていくことができるので、帰省の度にそこから海を眺めるのが好きだ。私は「海なし県」の山育ちなので、漁港の街にとても憧れがある。今住んでいる神戸もいいが浜田のゆったりした浜辺も気に入っている。反対に妻は山に行くとテンションが上がるようで育ってきた環境の違いは大きい。

この日も子どもを義母に預けて、恭子さんと2人で坂を下る。夕陽はほぼ沈んでしまっていたが空がほんのりと朱く、浜の波は穏やかだ。ここに立つといつもなぜか、この街でも暮らしていけるなと思うのだった。途中、海から来たのか道路端にカニがいた。追いかけると信じられない速さで横歩き。前進するだけがやり方じゃないのだよ、とでも言わんばかりに逃げていく。

数時間に1本の山陰本線を電車が通過した。立ち止まってその電車を見送った。

20230918



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