2024年1月に読んだもの

2024年1月に読んだ本や記事に関するメモ

世界は贈与でできている

  • X で誰かが年末くらいに Post しているのを見かけて買った

  • 礼儀の本質は「冗長性」にある というくだりが特に印象に残っている。贈与は「不合理なもの」として目に映る、と

贈与にはある種の「過剰さ」「冗長さ」が含まれています。なぜかというと、ある行為から合理性を差し引いたときそこに残るものに対して、僕らは「これはわたし宛の贈与なのではないか」と感じるからです。

世界は贈与でできている P.100
  • 他人に感動してもらう・驚いてもらうためには、その人の期待値(≒ 合理的な予測)を超えないといけないので、合理性の枠組みからはみ出るように考えないといけない。なので、合理的に考えた結論 + α の色をつけるようにしないと、感動や驚きは生み出せないのだろう

    • 期待値とのギャップが大事、ということは認識しつつも、どうしても合理性の枠組みの中に閉じて考えてしまうことが多かったので、認識を改めようと思った

  • また 人は感動をシェアせずにはいられない というくだりも印象に残っている。要は「シェア」とは「過剰に受け取ってしまった贈与(≒感動、驚き) を誰かにおすそ分けすること」だと。

受け取った純粋な自然の贈与を、それをまだ受け取ることのできていない誰かに向けて転送する。つまり、贈与を受け取った人は、メッセンジャーになるということです。

世界は贈与でできている P.220
  • そう考えると、シェアも不合理から生まれるということになるので(シェア <= 驚き・感動 <= 贈与 ≒ 不合理)、その観点でも合理性の枠組みからはみ出ることをより意識しないとな〜と思った

  • その他、本筋とはずれるのだろうけど「言語ゲーム」のくだりと「逸脱的思考・求心的思考」のくだりが読んでいて面白かった(5〜6章あたり)

    • 逸脱的思考というのが、いわゆる「常識を疑え」という言葉に代表されるような思考のことで、求心的思考はそれとは逆で、常識の枠組みを疑うのではなく、それを是としたときに生じるアノマリー(齟齬・矛盾)を説明しようとする思考のこと

    • この求心的思考が、プロダクトをつくる際の 変な使い方をしているユーザーに注目する という考え方に近いかもしれないとか思った

訂正する力

  • これも X で Post されているのを見かけて買った

  • 過去の出来事を再解釈することで主義・主張をアップデートしていくこと が大切 みたいなことが書かれていた。これ自体に新しい発見はなかったが、そのために サンクコストを保存する という考え方は面白かった。たしかに過去を再解釈して利用するためには、過去の情報を活用可能な状態にしておかないといけない。思えば、有名なスティーブ・ジョブズのスピーチ にでてくる connecting the dots の話も実は近しいことを言っていたのかもしれない

You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.
- 将来を見据えて、点と点を結びつけることはできません。後で振り返ってみて初めて、点と点を結びつけることができるのです。

心理学的経営

  • ビズリーチ時代の同僚にオススメされて購入後ずっと積読していた本。去年の年末くらいにパラパラと読んだのだけれど、年始に組織デザイン考える上で「第3章 組織の活性化」のところを読み直した

  • 組織を活性化する上では意図的に”カオス”をつくること(それによってアンラーニングを促進すること)が大事だと言っていて、そのための手段として 1. 採用、2. 人事異動、3. 教育、4. 小集団行動、5. イベント と説明している

  • 正直なところ「組織活性化のためのイベント」というのはあまりピンときていなかった(つい斜に構えてしまう癖もあって、むしろ懐疑的だった)が、イベントの本質が ”実行までのプロセスにある” ということ説かれていてとても腑に落ちた

日常性から脱却してある種のお祭りを組織のなかにプログラム化するという点にある。この過程で、日常業務を遂行する各職場から、当該イベントのためのプロジェクトに特定メンバーの参画を要請する過程で、人材の奪い合いや、スケジュールの調整などで必ず混乱が発生する。その混乱を止揚する上位のビジョンに全組織を引き込むことができるか否かがイベント活性化施策として成功させるための鍵となる。

心理学的経営 個をあるがままに生かす P.98
  • イベント実行までのプロセスで周りを巻き込んで混乱状態にする(そしてそこから再構築する)ことが大事で、今までだと何かしらイベントをやるにしても、周りに負荷が掛からないように自分が出来る範囲でコンパクトに〜という思考で考えてしまっていたが、それでは意味がないということがわかった

  • 関連して、少し前のICCの記事 【最終回】「カオスから自己組織化」するチームが最高の成果を生み出す を読んだがこれも良かった

  • アンストラクチャー(カオス)な状態にするだけでは意味がなくて、そこからストラクチャーな状態に戻すという変化にこそ意味がある。要は、カオスを起点に自己組織化のプロセスを回すということか〜と理解した

強いチームはなぜそのように練習をして強くなるかと言えば、実はアンストラクチャーな状態から自分たちだけの綺麗なストラクチャーな状態へもっていくトレーニングをやっているのです。

だから強くなる。

アンストラクチャーな状態でトレーニングをしてアンストラクチャーなままチームが終わる練習は、練習ではないわけです。

未来をつくる言葉

  • これは Amazon のオススメにでてきたので何となく買ってしまったのだが、読み終わるのが勿体ないな〜と感じるほど好みの本だった

  • ”環世界” という概念をベースに色んなことが書かれている

    • 犬には犬の、虫には虫のそれぞれ固有の身体的な知覚があって、その知覚を通して独自に世界を認識している ≒ 環世界を構築している

    • 人間は身体的な知覚の他に精神的な知覚をもっていて、新しい言葉や概念、表現手段を学ぶことで、その知覚を通して世界を捉え直すことができる。つまり、解釈の幅を広げることができる

  • 元々、知っている言葉≒概念の幅が広がれば、より解像度高く物事を捉えられるようになるはず(だから、少し難しい本でも頑張って読もう)、みたいなことを思っていたのだけれど、これが環世界の概念で説明されてとてもスッキリした

  • 安宅さんの「知性の核心は知覚にある」という好きな論文があるのだけれど、これも、知覚の幅を広げることで環世界が拡張される = 知性が作られる みたいに解釈すると似たようなこと言っているのかもな〜とか思った


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