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ギラン・バレー症候群に罹り起きた幻覚 まとめ

私はギラン・バレー症候群という神経の病気に罹りました。ギラン・バレー症候群ではたまにあるらしいですが、自分も病気に罹ってからおよそ3週間幻覚が起きていましたなかなか貴重な体験なので興味を持たれる方もいるかと思い、この記事で起きた幻覚のいくつかを紹介したいと思います

因みに、紹介する幻覚の本当の原因はギラン・バレー症候群なのか、ギラン・バレー症候群治療の過程で使われた鎮静剤や麻酔なのかはわかりません。

この記事は過去にnoteにあげたものを応募のためまとめたものです。

#私だけかもしれないレア体験

壁を這う潜水艦

病室ではいくつもの潜水艦が壁を這っていました。潜水艦と言っても立体的なものではなく、潜水艦の写真を切り抜き作ったような薄っぺらいものです。横の長さは20cmくらいで縦の長さは4cmくらいの妙に細長い潜水艦です。天井から数十隻くらい出てきて、それぞれ自由に壁の上半分をうろうろしていました。

妻が病室の殺風景な壁を嫌い、世界遺産のポスターをいくつか貼ってくれたのですが、そのせいで複数の潜水艦はポスターと壁の間に挟まり動けなくなっていました。自分はこの潜水艦が壁を動いているのを、患者を退屈させないための病室の機能だと考えていたので、それが家族が持ってきたものでうまく動かなくなるのが病院の設備を壊したみたいで嫌でした。なので妻に頼みポスターを外してもらいました。潜水艦は自由に動けるようになりました。よかったよかった。

天井に映るアニメ

プロジェクタで投影されているのか天井に白黒アニメが映っていました。アニメの時間は2,3分くらいで、それらが連続再生されていました。アニメの種類は多くなかったです。自分が覚えているアニメのラインナップは、たぬきの家族の生活風景アニメ、お侍さんが人を刀で切る影絵アニメです。

最近の病室は患者の気を紛らわすためにこんな機能があるんだなと感心しました。一方、もっと面白かったりもっと癒やされるアニメを映せばいいのに、趣味が悪いなあとも思いました。

困ったことに、目を閉じる以外は天井に映るアニメを止める方法がありませんでした。なぜなら、当時は体が動かずずっと寝ていましたし、目を動かし目線を変えるのも大変だったので、どうしても天井が見えたからです。じゃあアニメを見たくないときはずっと目を閉じるかというと、それも退屈でした。うまくいかないなと思いました。

ある日突然アニメが映らなくなったので、自分が寝ている間に引っ越しが行われ、病室が変わったのだと思いました。ところが実際は、引っ越しなどしておらずずっと同じ部屋にいたと、数カ月後妻に教えられました。

父と妹家族

廊下から父の声が聞こえました。どうやら廊下を移動しつつ医者に話しかけているようです。「2ヶ月前会ったときは元気だったんですよ、それがこんなになるなんて。」「先生助けてやってください。お願いします。」と情に訴えるようなトーンで話しかけていました。父をなだめる妹の旦那さんの声も聞こえました。妹家族も来ているのか、父も妹家族も他県に住んでいるのにわざわざ申し訳ないなと思いました。

実際のところ、母は県外から見舞いに来ていたそうですが父と妹家族は来ていなかったそうです。

経管栄養

体が動かず顎を動かしたり飲み込むことができないので、栄養の摂取は主に鼻から胃まで管を入れそこから栄養剤を流し込む経管栄養で行っていました。その経管栄養グッズの見た目がなかなかに変わっていました。

グッズを上から順番に紹介します。下の絵は「いらすとや」からです。

経管栄養の様子

栄養剤が溜まっているバッグにはよくマッチョマンが描かれていました。ビリー・ヘリントンやダニー・リーです。あと、ところ天の助も描かれていました。今考えるとおかしな話なのですが、マッチョマンに関して当時は、栄養剤メーカーは商品の体が良くなるというイメージと生命力が強そうなマッチョマンが合うと考えパッケージに採用しているのだなと、納得していました。そしてオタクくらいにしか知られていない、つまり知名度の低いこの二人を選んだんだと考えていました。ところ天の助についてはわかりませんでした。

バッグとチューブのつなぎ目は「人の頭」の形をしたキャップが付いていました。その人の頭は緑色か青色でサングラスを掛けヘルメットをかぶっていて叫ぶように大きく口を開けていました。繋がっている様子ですが、バッグの下から首と頭が生え、大きく開けた口からはチューブが出ていました。

点滴筒(あのポタポタ水滴が落ちていく透明の筒です)には、「ガリウム」と書かれた六角柱の金属片が入っていました。それが栄養剤に当たり溶けることで、ガリウムという体に必要な栄養素が体内に入っていくのだなと考えていました。まあ溶ける様子はなかったのですが。

天井のカプセル

天井には半分埋まったガチャガチャのカプセルがひとつありました。色は白の半透明でそれは「ウィー」と5秒ごとに鳴っていました。「ウィー」はQueenのWe are the championsのサビ開始の音そのままです。

そのカプセルはとてもゆっくり動いていました。1週間で2mくらいの速度です。動いたあとの天井にはちょうど埋まっていたカプセル半球分のへこみができていました。当時はそのカプセルをまるで天井を食べるパックマンのようだと思っていました。(今思うとディグダグの方が近いですね。)

幻覚が消える前の数日間はそのカプセルが開いていました。カプセルはノンセパレートタイプだったようで、開いたフタは天井に埋まったカプセルの一部に繋がり落ちてきませんでした。カプセルの中身があったかはわかりません。体が動かずベッドから天井を見ることしかできない当時の自分には、落ちてきた中身を見つけることができなかったからです。

人形劇

入院して2日目の夜です。ベッドで寝ていると、天井で人形劇が繰り広げられました。それは顔のない和風な人形を使った劇と、白い紙を切り取り形作られた物が動く劇(ペープサートと言うそうです)でした。

ざっくりとした内容は、日常生活楽しかったね、でも病気に罹ってしまったね、頑張って病気治してね、というメッセージでした。劇は殆どの場面で妻と自分が出る、二人中心の内容でした。結婚式、新婚生活、病気により引き裂かれた二人など。

この病気にかかったのは、結婚してすぐでした。

劇が終わり泣いて喜ぶ僕。部屋に来た看護師にありがとうと言い、別にいいのよと言われたのを覚えています。

劇の最後には天井からひらひらと手紙が落ちてきました。手紙は看護師が拾い戸棚に置きました。何日か手紙らしきものはそこにあったのですが、気づけばなくなっていました。

どうやら劇は隣の病室の患者さんも見れたみたいです。彼は「どう感じれば良いんだよ?」と不満気味。隣の病室には看護師もいるらしく「そんなこといわないの」と注意をしていました。手紙も落ちてきたらしく、「どうすれば良いんだよ。誰か教えてくれよ。」といっていました。

病院にはこのような人形劇を見せれる設備があり、人形劇は妻が病院にお金を払いやってもらったこと、と考えてました。そして、隣の部屋にも劇が映ったのは妻が部屋を間違えて指定したからだと考えていました。

まつり

入院して初日の夜のこと、まつりに参加しました。会場は病院の一階で、体育館くらいの広さで舞台のある部屋でした。その舞台そばの壁には、欽ちゃんの仮装大賞の点数表示機のようなものが付いていました。会場へは車椅子に乗せられ看護師(眼鏡女子)に連れて行かれました。自分は舞台の目の前に運ばれました。

舞台の様子ですが、お面を被った兄妹がいました。お面は顔の上半分位を覆う大きさの白く丸い画用紙でできていて、その画用紙にはひとつ大きな黒い円が描かれています。それはまるで鳥よけのように見えました。彼らは瓜のような物を食べています。兄はアトピーで、妹は赤い水玉ワンピースを着ているのが特徴的です。僕を連れてきた看護師は舞台の上のデスクに座りなにか準備中です。

1時間ほど経った頃に、まつりが始まりました。気づけば舞台前には何人か観客がいます。どうやらこのまつりは病室を決めるイベントのようです。舞台そばの壁にある点数表示機には1から順に部屋番号がかかれていました。抽選開始。他の誰よりも先に自分の部屋が決まり、点数表示機のXXXと書かれた場所がくるっと縦に回転し自分の苗字が現れました。おめでとうございます、貴方は特別にXXX号の部屋です。祭りの観客が、僕にあやかろう(運を得よう)と僕の肩や腕にさわりました。

まつりのクライマックスにあの妹が天井にある棒にぶらさがり-----しました。下で観客はビニール傘をさし------しました。どうやら兄妹は病院の守り神のようです。紙吹雪も舞っていました。そして医師の先生が治療頑張れと言い、僕の肩を叩きました。

まつりは終わったのですが、自分はすぐ病室に戻されませんでした。自分がいる場所(舞台の目の前)から見えるそでで、阿波おどりのようなかっこをした男女が痴話喧嘩をしていました。どうやら兄妹の親みたいです。男の方が、家族がこの病院に依存し生活してることを気にしていて、それで良いだ悪いだ二人は言い合っています。僕は隣りにいた男看護師に部屋に行きたい、ここから出たいといいました。理由を聞かれて、痴話喧嘩を見たくないというと、男女なんだから痴話喧嘩くらいしますよ、とのこと。結局、まつり開始を待つ時間以上たったあとに会場から出してくれました。


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