「君たちはどう生きるか」の感想

前置き

絶賛の立場です。積極的にばらすわけではないですがネタバレ配慮しません。考察しません。自分の感想や思ったこと(考えたこと。。)を書き残しておこうという意図です。
映画を見たのは先週です。賛否両論だの難解だのというのはちらほら目に入ってましたが、Twitterでよく見てた人たちが総じて面白いと書いていたので行ってみようかなと思いました。そろそろいろんな感想が公に語られていきそうな雰囲気なので、それに影響される前に書いてみたいと思います。

どういう映画だと思ったか

事前情報なしだったので最初はかなり戸惑いました。中盤あたりからはゲド戦記っぽいなと思いました、小説の方の。自分の葛藤をかかえてそれを解消するすべを求めて冒険の旅に出るという感じ。または映画AIっぽいかもと思いました。母を求めて不思議な旅をする。もちろん不思議の国のアリスや千と千尋の神隠しにも似たところはあるでしょう。ただし主人公の解を求める気持ちがもっと強いんじゃないかなと思いました。つまりこれは王道ファンタジーと捉えるべき作品だと思ったのです。

宮崎駿はどう思っていたのか

今回の作品は完全に開き直って作ったんじゃないかなと感じました。
だいたい作家って過去作に似ているとか言われるの嫌なはずなんです。新しいもの今までにないアイデアを追及して、どんどんトリッキーな設定になっていったりして。それでも天才は傑作にするんでしょうけど、今回の宮崎駿はそれはもういいと振り払ったんじゃないかと思うんです。過去作のオマージュではなくて、似てようが何だろうがいいと思った表現を取り入れるんだ、という気持ち。評論家が後で何を言おうと構うもんかと。
それからコンプラ的なものも配慮しない。血を流す描写とかキスとか、なきゃないでいいのに削らない。妹と再婚というのも現在の価値観だとひっかかる人がいそうだけど気にしない。人生訓とか主張みたいなものも入れたくなるだろうけど入れない。雑念を取り払って面白い物語にするという覚悟。

ネタバレなしと難解さと考察

事前情報がなかった分、プラスアルファで楽しめたのは確かだと思います。しかし今作は他と比べて特別ネタバレNGというタイプでもない気がします。むしろあらすじを聞いても、ありきたりでちっとも面白そうじゃないってことになりそうで、だから宣伝しなかったのかとか思ってしまいます。
ネタバレしてはいけないという空気が、ネタバレするような情報があるはず(なのに見つからなかった)と思わせて、それが「分からない」という評価の一因になったのではないでしょうか。
そう思った人は考察記事を読んだりするんだと思います。比喩とか裏の意味とか元ネタとか。でもそれまだ早くないですか?そういうのも好きだけど2周目以降のやり込み要素であってゴシップ的な楽しみ方であって。某ラジオで以前、伏線回収大嫌いって言ってましたが、それに通ずるものがあると思います。

何が面白かったのか

難解だと思わせた別の理由は、ファンタジー世界の支離滅裂さ、もう一つは主人公と夏子の感情の読み取りにくさ、じゃないかなと思います。支離滅裂な展開を楽しめばいいし、楽しめたのが良かったのだと思います。母と子の仕掛けだけ把握できればあとはよくて、大叔父も単に不思議の国の王様でしかないわけです。
主人公と夏子は、特に日常パートで無表情に見えました。本音を言わない、言えない、分かり合えない状態。主人公が心を開かないから夏子も頑なである。夏子はやがて病に伏せ、さらには塔に向かいます。夏子の激しい感情がようやく見えるのは主人公に「大嫌い」と叫んだとき。そこで初めて夏子がどれほどの感情を抱えていたのか、主人公も気づくことになる。ここで主人公の「どう生きるか」が変わったんだと解釈しています。
爆笑問題の太田さんが晩年の父との思い出を語っていたのを思い起こしました。太田さんは父から「光くんに嫌われてるのかと思ってたよ」と言われてはっとしたそうです。ずっと不愛想にはしていたがそんなことまで思わせているとは気づかなかったと。どれほどの思いを抱えているのか正しく推測するのは、思っているよりはるかに難しい。
というのがありつつ、絵がきれいだったり、緊迫した場面で手塚漫画みたいにコミカルなキャラクターが出てきたり、個々のシーンがよかったのが一番の面白さの理由かもしれません。

おわりに

やはり説明しようとして振り返ってみるうちに本当に面白かったのか確信が持てなくなっていくという罠。書き残しておいてたぶん正解だったということになりそうです。


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