世界
「世界を愛する」
ということを忘れていた気がする。
遂に値上がりしてしまったみさきの弁当を買って、歩いて海へ行き、そこで食べるのが日課になっている。
海の近くに住んでいるからこそ出来ることだし、一見優雅な生活に見えるだろうが、私にとってはこれが切実な生活の一部。
子どもも成人し、親の体調も良くなっている。恋人もいない。自由である。
朝のルーティン家事を終えると飛び出すようにして海へ向かう。自由である。
ネイルの付け替えをしてない。髪のカラーリングも行ってない。これではいけないと思いつつ、メイクもしない。
ちなみに、こんなに海に通っているのにナンパもされない!
ガサガサ音がすると近づいてくる人馴れした鳩に餌はあげない。
あるのはなんだろう。
持っているものはなんだろう。
なんでもあるはずだ。
意識していないだけで。
自由なのだから。
不都合を棚に上げて逃げていないか。
理由を挙げすぎて負けていないか。
考えれば考えるほど吐き気がしてくる。
だから海に行くのかと腑に落ちる。
そして今日もてくてく歩いて行くのだ。
洗い流すような風が吹く海へ。
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