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駄文:検索エンジンが対話型AIに置き換わったら、運用型広告はどう変化するのか考えてみた

Open AI の Chat GPT に代表されるような対話型AIが急速に普及し、注目を集めています。

MicrosoftのBingが対話型AIを導入したことで、検索エンジンが対話型AIに取って代わられる未来が現実味を帯びてきました。

この変化により、広告の表示やあり方などもガラッと変わってくると予想できます。本記事では、検索エンジンが対話型AIに置き換わったら運用型広告がどのような変化が起こるのか、自分なりに考えてみました。

あくまでも筆者個人が考えている事なので、不正確だったり、事例やデータといった根拠が不足している部分もあるかと思いますが、一個人の妄想ということで受け取っていただけると幸いです。

1. 対話型AIによる広告形態の変化

会話の中で自然に広告が埋め込まれる

これは既に体験されている方も多いと思います。チャットの回答の中で自然に広告を埋め込むというものです。

bing のチャット内に広告が表示される例

広告のフォーマットに関してはまだまだ進化があると思うので、テキストのリンクだけではなくイメージや動画なども埋め込まれるようになるでしょう。

広告のパーソナライズがより高度なものに

対話型AIとのコミュニケーションにおいては、ユーザーが抽象的な問いに対してもユーザーの問いの解像度が高くなるような仕組みが備わっていると感じます。

たとえば、「国内旅行の行き先でおすすめの場所を教えてください。」と聞けば、候補地をいくつか提示してくれます。

Chat GPT で「国内旅行の行き先でおすすめの場所を教えてください。」と質問したとき

ユーザーがアイディアを得たと思えば、さらに会話が続きます。

Chat GPT で「大阪でとくにおすすめのスポットはありますか?美味しいものを食べたいです。」と続けて質問したとき

検索エンジンでもそれなりの回答を得ますが、大抵の見出しがおすすめ10選など、そのWebサイトにアクセスする必要がある一方で、対話型AIであればスムーズに問答を続けやすくストレスフリー。

1つ上のキャプチャのように、このなかから「道頓堀でたこ焼きが美味しいお店をいくつか教えて」と続ければ、さらに問いと回答の解像度が上がりますね。

対話が続くということは問いの解像度が上がっていくので、回答の解像度も上がる。つまり問いに対して高度なパーソナライゼーションが行えるということが言えそうです。しかも自然な流れで。

ターゲティングという概念が不要になりそう

Bing のチャットの場合は、問いの中から検索クエリを生成し、そのクエリを持って関連する広告(検索連動型広告)を表示させているようです。

Bing のチャット機能のように問いからクエリを生成して検索連動型広告を呼び出す形式であれば、キーワードによるターゲティングになります。しかしながら、よりパーソナライズされた回答にマッチさせる広告を表示させようとするならば、それまでの会話からコンテキストを汲み、そのコンテキストにマッチした広告を表示させる必要がでてきます。つまり広告表示のトリガーとしてのキーワードが不要に。

逆に言うとキーワードというトリガーが存在しない分、アンコントロールな部分も増え、思ったように広告が表示されないなどは出てくるかも知れません。

キーワードが広告表示のトリガーにならないので、Google 広告が提供する P-MAX キャンペーンと同じような管理方法になるのかなという想像をしています。

広告アセットの用意が不要になる

後述もしますが、検索エンジンが対話型AIに置き換わった世界では、AIが独創的なクリエイティブを自動的に生成することが可能となると考えられます。

その場合、そもそも広告運用の中でクリエイティブを用意するという作業が不要となり、プロモーションしたい商品やサービスの情報があるWebサイトを指定するだけで、AIが適切なクリエイティブを生成してくれるはずです。

これに関連して後述しますが、このような状況下では、広告成果を左右するクリエイティブをAIに生成してもらうために、AIへのデータのインプット(データの構造化や正確性、網羅性)が非常に重要になると言えます。

また、適切なクリエイティブが生成されているかは広告運用者が逐一確認する必要があるので、完全に依存することは推奨できません。

2. プラットフォーム側の変化を考えてみる

対話型AIにおける収益性をRPMで考える

検索エンジンの収益化を考えるとき、インプレッション収益(RPM:表示回数 1,000 回あたりの見積もり収益額)を用いることがあります。

検索エンジンの場合、検索1,000回ごとにどのくらいの収益が見込めるかということです。検索エンジンビジネスはこのRPMをいかに最大化出来るポイントを見つけるかが肝になります。

引用元:RPMとは?広告プラットフォームビジネスの中心にある最重要KPI - 運用型広告 Unyoo.jp

検索結果が広告だらけだと嫌悪感を抱かれますし、広告が少なければ収益にならない、広告の表示本数が適正でもクリック率が低いと見込まれる広告だらけでも収益性は低いまま・・・など、この変数のバランスを上手く取ることが重要に。

これは対話型AIでも当てはまると思っています。上図でいう Coverage は「おすすめの旅行サイトを教えて」と質問されたとき、何回に1回広告を表示するか、Depth は1つの回答の中に何本の広告スロットを設けるか(=広告の同時表示数)に置き換えられます。

ここからは具体的な事例やデータが乏しい中で筆者による想像の域を出ませんが、個人的に想像していることを述べてみます。

問答の中で広告表示ばかりされると嫌悪感が高まるし、問いと関係ない広告が出てもクリックされないので収益にならない。

なので、検索エンジンが対話型AIに置き換わったとすれば、より自然な広告表示が求められるので、Coverage や Depth は従来の検索エンジンよりも小さい設定になりそう。

一方で、広告のプラットフォーマーが市場から高い収益性を求められるとなれば、広告表示に必要なクリック単価という変数を操作をしそうで、クリック単価は検索連動型広告よりも高くなりそうな予感がします。

Quality は AI の学習具合に依存(会話のコンテキストとの広告の一致率向上)なので、Quality が劇的に高い状況に持って行ければ CPC は安く済みそうな。

この辺のバランスは、プラットフォームの収益構造において広告からの収益をどの程度重視するかによって変わると考えられます。個人的には、この点に関心を持っています。

3. 対話型AIとの付き合い方

AIが適切に学習できるようなデータを用意する

Bing のチャット内に表示される情報は、過去に学習済みのデータと Bing がWebサイトをクロールしてインデックスした最新の情報を学習させたデータの両方を用いることで、可能な限り最新のデータを考慮して回答を生成しています(*1)。

*1:新しい Bing の構築にあたって - News Center Japan

よって、個人の見解にはなりますが、インデックスを活用した学習データにより、AIが適切に学習するために、検索エンジンが提供する開発者向けドキュメントを元に、Webサイト上の情報が適切に利用されるよう対応する事をオススメします。

また、技術的な対応によって適切にインデックス出来る形式のデータを用意することが出来れば、インデックスだけでは無くAIの学習も効率的に行えるようになる可能性もあると個人的に考えます。

AIによるコンテンツの生成

Chat GPT の普及により、既にコンテンツの生成や生成の支援の為にAIが活用される場面が増えてきました。

AIが商品やサービスの情報を元に独創的なコンテンツを生成してくれるので、先述したようにAIの学習に対して適切なインプットがなされれば、広告する商品やサービスとユーザーの求めるもののマッチ度が高まるため、広告効果もこれまで以上に高まることが期待できます。

倫理的・法律問題の検討

検索エンジンが対話型AIに置き換わることで、広告クリエイティブの生成や広告ターゲティングにAIを用いるために、定期的にデータを提供し学習させることが必要になると予測できます。

その時点での法整備がどこまで行われているかにもよりますが、オーディエンスデータの学習のために個人情報をAIに提供してしまう、クリエイティブ生成の学習のために著作権やライセンスで保護されたデータを無断でAIに提供してしまうケースも多々発生してしまうでしょう。

AI技術の進歩によって、個人情報や著作権、ライセンスで保護されるべきデータであることが判別できるようになるまでは、広告主の倫理観や法制度への理解が不可欠です。

これからは、広告主側が高い倫理観と法制度への理解を持って広告活動をしていくことが今まで以上に求められます。この点が守られなければ、広告は邪悪、AIは危険といった誤った価値観の醸成にも繋がってしまうでしょう。

4. ビジネスの本質がより重要になる

AIが生成した独創的なコンテンツをもってしても限界はある

先述したように、広告に必要なコンテンツはAIがすべて生成してくれるようになると考えます。

一方で、世の中には機能や特徴が酷似した商品やサービスはありふれています。つまり、広告したい商品やサービスの機能や特徴が酷似していれば、AIから生成されるコンテンツも酷似してしまうことも予想できます。

AIの技術が進歩すれば、ほんのわずかな違いを差別化ポイントとして訴求してくれるようになるかも知れませんが、そのほんのわずかな違いを訴求したところで成果に繋がりやすくなるか?と考えてみると、答えはノーです。

その商品やサービスは「最高」か「最安」かそれ以外なのか

その商品やサービスが選ばれるということは、それなりに理由があります。

AIの力を借りたとて、商品やサービス自体に魅了があり、それを通じて良い体験が得られそうという事が伝わらなければ意味はありません。

最高品質だからなのか、最も安いからという理由は分かりやすいですが、最高でなく最安でもないケースでは何を持って選ばれるのでしょうか?

次のスライドは河野武さんが公開されている「最愛志向のコミュニケーション戦略」というスライドなのですが、「最高」や「最安」を目指したポジショニングが取りにくい場合のヒントがたくさんちりばめられているので、ぜひ参考にしてみてください。

引用:最愛志向のコミュニケーション戦略 20150929

ユーザーとのつながりがより重要になる

対話型AIでは、Botとの会話を通じて回答がパーソナライズしていく傾向にあります。そのため、ユーザーが求める情報に対して、対話型AIは非常に関連性が高い回答を返します。

従来の検索エンジンでは1回の検索で多数の検索結果を返しますが、対話型AIは関連性が高い回答を重視するため、提供される商品やサービス、またはそれを提供するWebサイトへのリンクの数というのは、それに比べて大幅に減ります。

これにより、関連性が高い回答の中で採用されない限り、Webサイトへのトラフィックを獲得することが困難になるでしょう。

従って、対話型AIの普及に伴い、複数のチャネルでユーザーと接点を持津事が重要になります。そうでなければ、Webサイトへのトラフィックが徐々に失われていく可能性があるというわけです。

将来的に新たなチャンネルが登場することも考えられますが、現時点ではSNSを利用したコミュニケーション、レビューの獲得、ユーザー生成コンテンツ(UGC)やその他Webサイトでの言及してもらえるような仕掛け作りは今から行うことができそうです。

これにより、ブランドが構築されていゆき、結果として対話型AIが普及し、検索エンジンの利用率が下がったとしても、Webサイトへのトラフィックを維持又は増やすようなことも可能であると考えられます。

まとめ

検索エンジンが対話型AIに置き換わることで、運用型広告を取り巻く状況も劇的に変わる

対話型AIが普及し、その内部で広告表示が当たり前になると、広告プラットフォームとしてもAIを活用した広告運用が可能になるシステムに移行すると個人的には予測します。

先述の通り、高いパーソナライゼーションが可能になるので、ターゲティングの概念は無くなり、広告したいWebサイトのURLと広告費、広告のスケジュールなどを設定するだけで広告が表示できてしまい、しかも広告費用対効果も非常に高い状態を維持できるという未来は遠くはないはず。

一方で、広告プラットフォーム側も対話型AIのUIを考慮すると、収益構造を検索エンジンと同じRPMでモデル化したときに、どの変数でバランスを取っていくのかも興味深いトピックです。表示される広告の本数や頻度によっては対話型AI内の広告であっても嫌悪感を抱かれてしまうはずですから・・・。

また、法制度の整備についても継続して行われると考えますが、それよりも速くAIの技術革新が進む中で、誤って個人情報や著作権等を侵害したデータを学習に使ってしまうといった問題をどの程度防げるのかは懸念材料として強く感じます。

それでも変わらないのは「誰に何を売るか」

AIによって独創的なコンテンツが生成できるとは言え、提供される商品やサービスは人間が考え届けようとするものです。

その商品やサービスを手にするのも最終的には人間です、商品やサービスを通して提供できる価値を高めるという視点を忘れてしまっては、たとえAIを活用してもビジネスは大きくなりません。

AIはあくまでもビジネスを拡大するためのパートナーであって、魔法の杖ではないと言うことを肝に銘じて付き合っていきたいですね。

AIは積極的に活用するべき、ただし・・・

冒頭でも述べましたが、Chat GPTをはじめとするAIの普及が拡大してきている中で、AIを活用しない事がリスクになる時代に入っています。

また、AIを活用することのメリットとデメリットがよくメディアでも取り上げられる様になりました。メリットやデメリットに注目することは良いと思いますが、そこに注目するあまりに見えない落とし穴にはまってしまいかねません。

ぜひご自身で対話型AIをはじめとするAIの活用を体験し、それを自分の業務にどのように活用できるか、メリット・デメリットだけでなく、潜在的な落とし穴も考慮しながらAIとの関わりを深めていくことが良いと思います。

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