サウナ童貞卒業の日

友達の家でなんとなく集まっていた帰りの出来事。その中の1人が僕にこんなことを提案してきた。

「サウナいかね?」

サウナといえば、小学校の時通っていたスイミングスクールで、レッスンが終わった後に身体を冷やさない為に入っていたものという印象しかない。当時の僕にとっては非常に暑苦しく煩わしいものであり、実際に5秒くらいで誤魔化してすぐでていた。

変なプライドから、サウナの気持ちよさがよく分からないと言えないまま、僕は赤坂の「サウナリゾート オリエンタル」に向かうこととなった。

まずはシャワーを浴び、軽く湯船に浸かったあと、友人2人は何かに取り憑かれるようにサウナ室に入った。僕は導かれるまま彼らの後に続いた。

中は約7畳程のむせかえる灼熱地獄。一点を見つめ1ミリも動かないものもいれば、仕切りに汗を拭いているものもいる。

何分ほどたっただろうか。

友人2人は一切出ようという動きがない。
そろそろ出ていい?といえば根性がないやつだと思われる。そんなちっぽけなプライドだけが、僕がこの地獄に残っている唯一の理由だった。

その時、急に友人がすくっと立ち上がった。ついに解放の時が来たのだ。
全身から噴き出す汗をしたたらせながら、僕は逃げるように出口に向かった。

安心していられるのも束の間、彼らは火照った身体に冷水を頭から被ったかと思えば、なんの疑いもなく水風呂に肩まで浸かり始めた。
あまりにも自然だったそれまでの一連の流れはもはや美しさすら感じる。

もちろん僕は彼らに続く。

次の瞬間、心肺が停止する様な感覚に襲われる。全身がギュッと引き締まり、体熱が冷水に奪われていくのがわかる。
数秒するとその冷たさにも慣れてくるが、正直騒ぐほど気持ちいいかと言われたらいささか疑問が残るようなそんな感情だった。

先輩2人が立ち上がった。
すると今度は驚くべきことに、大理石の長椅子のような場所に座りぼーっとし始めたのだ。
その動きは、何度も繰り返し行われてきたことにより、一切の無駄がない研ぎ澄まされたムーブだった。僕は黙って従った。

衝撃が走った。
施設内で水がしたたる音が、まるでオルゴールのBGMであるかのように、信じられないほど心地よく鼓膜に侵入してくる。
身体が浮くような、どこまでも膨張していくようななんともいえない多幸感に満たされていく。
後から知ることになるが、このトランス状態こそが「整う」ということだったのだ。

なるほど、サウナって、「後」なんだな。

初めてオナニーをした中一のあの時と同じ衝撃が走った。

もちろん個人の好みはあると思うが、少しでも興味がある人には是非おすすめしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?