それでも鳥は鳴いている (短編小説)
起きてしまえばいいのに,どうしても起こらないことがある。それはちょうど,肌触りのよくない服に擦られることで,体のうちの特に鈍感なところまでもが敏感になってしまうかのように,あるいはぼくの指先にある細くて小さなすじのひとつひとつが,束ねられていつしかぼくの身体の中心をつらぬいてゆく大きな運河となってしまうかのように,そのくらいもっともらしくないように思われた。夕立の音に耳を貸しながら,昨日のぼくはたしかにそのようなことを考えていたが,しかし今朝になってみてあらためてそれは少し違