短編小説 「お母さん」
ある日、僕は
役所から戸籍謄本を取り寄せた。
自分は養子だった。
養父や養母は何不自由なく
大切に育ててくれた。
それでも、一度産みの親に会いたかった。
親戚が産みの母親の居場所を教えてくれた。
僕を産んだお母さんは
実年齢より老けていたが、
目だけは輝いていた。
「お母さんはね、あなたを獄中出産した時が
一番幸せだったのよ」
僕は産みの母に会ったことを後悔してなかった。
どんな生き方をした人間でも
「お母さん」であることにかわりはない。
お母さんは、大人になった僕を見な