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外房流のカニ網でのヒラツメガニ釣り/森川漁網店

※掲載終了の「@niftyつり」から2010年10月中旬の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。唐突にカニを釣ります。外房の砂浜だけで行われている(たぶん)、独特の釣り方がおもしろかったです。

外房の砂浜でカニが釣れているらしい

千葉県外房に位置する白子町の森川漁網店という、その名の通り漁で使う網全般を扱っているお店の主人と、投網の体験取材(こちら)で知り合ったのだが、そのアミーゴ(網屋だけに)から「今年はカニが釣れていますよ!」という謎の電話がきた。カニを釣る?

なんでもお店近くの海岸で、ヒラツメガニ(地元ではマルガニとかホンダガニとかエッチガニとかいろいろな名前で呼ばれている)というカニが豊漁らしい。それを森川漁網店オリジナルのカニ網を使って、砂浜から釣るのだという。

防波堤などからカニ網を使った投げ釣りで、ワタリガニなどを狙う文化があるというのは知識として知っていたが、外房では砂浜からヒラツメガニ。違うところだらけのガラパゴス的カニ釣りがおこなわれていたのだった。

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森川漁網店 千葉県長生郡白子町八斗2088

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地引網や投網を買いたいところだけれど、とりあえずカニ網くーださい。

竿を使わない外房流のカニ釣りとは

近所の釣り具屋で見るのとはだいぶ違う特大サイズのカニ網を森川漁網店で購入し、そのまま店主に付き合ってもらって近くの海岸へとやってきた。

ここでのカニ釣りは竿を使わないらしいのだが、なんとなく釣竿がないと落ち着かないので私は持ってきている。

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右が森川さん。左は共通の友人で田舎暮らし満喫中のカズさん。

やってきた場所は「この世の果て」を想像させる人っ子ひとりいない海岸で、こんな波しぶきが飛ぶ荒海で竿も使わずにどうやったらカニがとれるのか見当もつかない。

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映画のロケとかできそうだな。自由の女神が埋まっていそうだ(猿の惑星)。

カニ網というのは、まず一番上にオモリがあって、その下に小さなエサを入れるネットと、モジャモジャした大きな網で構成された仕掛けである。

エサの匂いに寄ってきたカニが網に引っ掛かって逃げられなくなったところを引き上げるという、「本当にそんなのでとれるのかよ」と思わずにいられない罠だ。

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私と同じくカニ釣り初挑戦のカズさんも怪しがる謎の仕掛け。

普通に釣り具屋で売っているものは竿で投げる前提なので、だいたいオモリ20号前後。それに対して森川漁網店の特製網はオモリ60号のスーパーヘビーサイズ。網の大きさも二回りは大きい。なるほど、こりゃ竿では投げられないな。

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餌は買ってきたサンマと投網で採れたボラ。イカやカツオのアラでもOK。ようするになんでもいいらしい。

長さ100メートルほどの丈夫な紐を用意して、網の一番上に結びつける。ロープをなにかに巻きつけたりせず、ただ輪にして手におさめていく辺りが本職の網屋らしくてかっこいい。私がやったらすぐ絡みそうだが。

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これが絡みそうで絡まないんだ。でも私がやるときっと絡むんだ。

そして準備ができたら、波打ち際までいってポーンと網を投げる。その飛距離は僅か2メートル。投げるというか置く感じ。これで本当にカニが釣れるのだろうか。

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そこに網を投げてカニがとれる訳ないじゃないと思いますよね。

ここでポイントとなるのが潮の向きだ。外房のカニ網は基本に満潮から干潮にかけての下げ潮の時間帯にやるものだそうで、投げたカニ網は波にさらわれてみるみるうちに海へと引きずり込まれていく。

さらに素人にはまったくわからないのだが、この場所は離岸流(沖へと流れる潮)のある絶好のポイントなのだそうだ。絶対遊泳禁止。

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自然と網が引っ張られていくのが不思議。

糸が100メートル全部出たところで、「はい、もう引き上げて大丈夫です」という意外な号令。待ち時間はゼロ。どうやらカニは網が流されている間に寄ってきて、引っ掛かってしまうものらしい。

なるほど、波打ち際から糸の長さ分の沖合100メートルまで網を流すことによって、点ではなく線で効率よくカニを狙うことができるのか!

本当に釣れているカニ

ズリズリと上がってきた網をみてみると、なんといきなりの大漁だ。夜の方が捕れるという話なのであまり期待はしていなかったのだが、一投で5匹も網にかかっていた。すごいぞ森川さんのカニ網。

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この仕掛けに引っ掛かるのはゴミくらいと思うでしょ。

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冗談みたいにたくさんカニが捕れたんだな。磁石で砂鉄を集めるかの如くですよ。

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甲羅に輝くHのマーク。ホンダガニとも呼ばれる所以だね。

大きさはそれほどではないけれど、短時間にこれだけカニが捕れて興奮しない訳がない。しかもこんな謎だらけの仕掛けでだよ。

カニ網といえば何個か用意して投げて待って捕るイメージだったが、これなら一人一個の網で十分楽しめる。というか二つ同時には使えない。

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二回目はモクズガニまで掛かっていた。

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捕るのは簡単だけれど、外すのがちょっと面倒くさいかな。伊勢海老の刺し網漁気分。

釣竿を使ってやってみます

外房流のカニ網の使い方がわかったところで私もチャレンジ。やり方はちょっとアレンジさせていただき、一応釣り情報サイトの取材らしく、投げ竿とリールを使ってやってみることにした。

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リールはPE3号が巻いてある。カッパを着ているのは、船釣りをしにきたけれど、風で出船しなかったからカニを釣っているため。

竿を使うといっても、竿の弾力で投げようとするとまず間違いなく折れるので、竿は縮めた状態のままリールのベイルを返して、手でポーンと網を投げる。すると糸が細いのでそこそこ飛んでくれた。どっちにしろ波で沖まで流されるんだけどね。

あとは波に引っ張られるまま糸を100メートル出していく。リールを使うことで糸が絡むことがないので、私向きではあるかな。

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強風のバカヤロー!ショウサイフグ釣らせろー!

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「リールを使わなくても、ペットボトルとかに巻けば絡まないですよ~」※最近は凧あげ用の糸と糸巻きを販売中。

網がうまいこと流れに乗って100メートルくらい沖まで流されたら、リールを巻いて網を回収する。この際、普通にリールのハンドルを巻くと手が疲れてしまうので、竿を団旗気分で持って陸側に歩いて網を引っ張っていき、戻る際に巻くという「応援団風ポンピング方式」を採用してみた。

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気分は応援団。網を引けー!

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前に進みながらリールを巻くのだ。前進!

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はい、釣れたー!

竿を使っている意味があるんだかないんだかわからないやり方だが(ないよね)、一発で無事に3匹のカニをゲット。砂浜をうろうろしているだけでカニが捕れるなんて最高だ。

この日は一時間くらいしかやらなかったけれど、それでも30匹以上のヒラツメガニやモクズガニを捕ることができた。夕飯には十分の量である。

カニは年中捕れるそうだが、数多く捕れるのは秋か春らしい。ポイントは網が沖へと流れる下げ潮の時間帯を狙うことに尽きる。より詳しい情報は、網を買うついでに森川さんに聞いてください。

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短時間で驚きの釣果!……釣果でいいのかな。

ヒラツメガニ、おいしいよ!

ヒラツメガニの食べ方は、大きいものは茹でるか蒸すのがおすすめで、小さいものは味噌汁や唐揚げなどでいただけるそうだ。ヒラツメガニのカニ味噌はちょっと味が濃すぎる感があるので、好みが分かれるかもね。

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蒸したヒラツメガニは身が柔らかいので、チュウチュウ吸う感じでいただく。

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小型は甲羅をはずしてエラをとり、酒や醤油に漬けて、小麦粉をまぶして唐揚げに。ちょっと硬いけれど、ワイルド派なら殻ごとバリバリいけます。

これが釣りなのかといわれると微妙なところがありますが、とにかく楽しい時間でした。

■森川漁網店 千葉県長生郡白子町八斗2088

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