目指せAMD48!佐島からのアマダイ釣り/佐島 志平丸
冬の海のアイドル、我らがあまちゃんを求めて
季節の移ろいに合わせて釣れる魚は変わっていくが、ズボン下を履く季節になると、シーズン中に一度は釣りたくなる魚がアマダイである。冬といえば、私の中ではダントツにアマダイ。こんなにも個性的で美しく、生でも焼いても煮ても揚げても蒸しても干してもおいしい魚はなかなかないだろう。
初心者でも本命を釣り上げる確率がそこそこ高く、ボウズを食らう確率がまあまあ低く(なくはないが)、それでいてうまい人は数をちゃんと伸ばし、しばらくは豊かな食生活を送ることができるのがアマダイ釣り。
そしてご存知の通り、今年は空前のあまちゃんブーム。釣り業界であまちゃんといえば、当然アマダイのことである。
何釣るの?アマでしょ!
ということで、今回は神奈川県の佐島からAMD48こと、48センチオーバーのアマダイを狙ってみたいと思う。
さてアマダイ釣りというと、個人的には江の島沖から平塚あたり一体でやる釣りのイメージが強いのだが、今回はそのもう少し東側、三浦半島のすぐ近くでのアマダイ釣りである。
この辺りでアマダイ釣りの船を出している船宿はそれほどないが、逆に穴場といえるかもしれない。48センチオーバーの巨大なあまちゃんも、きっと潜んでいるはずだ。
この日(11月22日)は強風が数日続いた後のベタ凪で、シケの後の荒食いが待っているか、あるいは底荒れでご機嫌斜めか、どちらに転ぶか微妙なところ。
船長の話では、今年はどうも冬の潮がやってくるのが少々遅いそうで、これからがアマダイのシーズン本番かなというタイミングらしく、今日の志平丸では盛りのカワハギ、マダイに人気が集まり、アマダイ船は私を入れて3人という広々とした船出となった。
アマダイ釣りの仕掛け
アマダイは水深60~110メートルくらいの海底付近を泳ぐ魚で、80号のオモリを使った2本バリのテンビン仕掛けが基本となる。
最近はPE2号以下の細いラインを使ってオモリ40号とかのライトタックルで釣るスタイルの船宿も出てきたが、この船宿は80号の標準スタイル。オマツリをしないようなら60号でも可。
私は細いラインを巻いた電動リールを持っていない。よって今日は標準スタイルの船宿なのである。手巻きでやるライトタックルも楽しいけどね。
ということで、竿は2.1メートルの7:3調子のオモリ負荷30~100号、それにPE4号の中型電動リールの組み合わせ。
なんとなく買ってみた半誘導テンビンに80号のオモリをぶら下げて、その先にお手製2本バリの仕掛けをつなげただけのシンプルな釣りだ。テンビンと仕掛けの間に短いクッションゴムを付ける場合もあり。
今回作ってきた仕掛けは、まずフロロカーボン3号の幹糸1メートルの先に三又サルカンを結び、フロロカーボン2号のハリスをサルカンの下側に1メートル、横側に30センチでつなぐというスタイル。
テンビンにつなぐ幹糸部分をちょっと太くすることで、少しでも絡まりが減るかなという魂胆である。もちろんこの前のマダイ釣りで、テーパー仕掛けを使ってとてもいい思いをしたからだ。
ハリはあまちゃん狙いだけに、女子受けしそうなピンクとゴールドでコーディネートしてみた。丸カイズ13号&オキアミチヌ5号。あずさ2号じゃないですよ。48センチオーバーの大物狙いなので、気持ち大き目のハリをセレクト。それを発光ビーズの光物でクリスマスっぽく華麗に装飾。
アマダイの釣り方
相模湾でのアマダイの釣り方は、コマセを使わないのでとてもシンプル。まず仕掛けを底まで落としたら、オモリを海底から1メートル前後(潮の速さや仕掛けの長さで調整)巻き上げて、そこから竿を大きくゆっくりと上下に動かし、好きなように誘いをかける。
この誘い方にこだわりが出るのだが、船長の話だと仕掛けをフワフワと漂わせたら、止める時間を長めにして、食わせる間を作るのがおすすめとのこと。とはいっても、海底を小突くくらい激しいのがよかったり、誘った後は置き竿にするのがよかったり、その日の潮によってフィーバーする誘い方は違うので、いろいろやってみるのが大切だそうだ。
とにかく小まめなタナ取りとエサのチェック、そして飽きずに誘い続けることが大切な釣りなのである。
とか偉そうなことをいってはいるが、この日はスソ(船で一番釣れなかった人)だったことを、先に白状しておこう。
佐島のアマダイ、好調なスタート!
船の左舷側に3人が並び、そのセンターは私というフォーメーション。AMD48(アマダイ48センチ狙い)のセンターは私よ!(もちろん声には出さない心のつぶやきである)
まずは水深65メートル前後という、アマダイ釣りとしては比較的浅場からスタート。天気は見事なベタ凪の釣り日和。この水深だと、もしかしたら幻のシロアマダイが釣れちゃうんじゃないかしらんと期待をしながら仕掛けを下ろす。
私の誘い方は、竿先を下げた状態で底からオモリを1メートル離したら、3秒くらいかけて竿先を水面から45度くらいまで上げて、そこで数秒待って、5秒くらいかけて竿先を下ろし、数秒待つという流れを繰り返し、たまにタナをとりなおすという感じ。待つ時間や上げ下ろしの速度は気分によって随時調整。
今までの経験では、アタリが出るのは竿をスーっと上げているときが多く、エサのオキアミがスイっと上がっていくときにアマダイがパクッと反射的に食いつく率が高いようなので、この上げ下げの回数が釣果に比例すると信じているので、待ちの時間は短め。まあこの日はスソだったんだけどさ。
まず最初にアタリを出したのは、トモ側に構えたベテランさん。上がってきたのは本命のアマダイではなく、イエローの蛍光ラインが美しいイトヨリだったが、これもとってもおいしい魚で、私としてはアマダイと同じくらい釣りたい魚だ。
続いてアタリが来たのは、一人飛ばして(飛ばされたのは私ですね)ミヨシ側のお客さん。今日は船のスペースにゆとりがあるので、二本竿を駆使しているようだ。
横から見ていても気持ちよさそうに引きを見せたのは、30センチクラスの本命アマダイ。アカ、キ、シロとあるアマダイのうちのアカアマダイだ(相模湾はほとんどアカアマダイ)。なかなか幸先のいいスタートである。
隣で釣れた本命の姿に触発されて、さあ次は私の番だろうと誘い続けていると、竿を下げた状態から持ち上げた時になにかが引っかかったような重さを感じた。おやっと思いながら竿先をゆっくりと持ち上げてみると、グイグイっという力強い引き込み。うん、なにかが掛かった。
竿先を上げたまま数メートル程手を手巻きで楽しんだら、体力温存のために電動リールのスイッチをオン。電動リールの釣りは、釣りながら写真が撮れて便利である。
グングンと断続的に続く手ごたえ、これは本命のアマダイっぽい気がする。
巻き上がってくる糸の先をじっと見つめていると、水中からピンク色の魚体が螺旋を描いて浮かんできた。
はい、ナイスなアマダイー!
大物アマダイが連発!
ナイス本命!これでボウズはなくなったが、本日の目標はあくまで48センチオーバーのAMD48。そうそう釣れるサイズではないが、今日はなんだか大物が釣れる気がする。
なんていう甘い予想がまさかの的中。まあ釣ったのは隣の人なんだけどね。
ミヨシの方が竿をガクガクと震わせながら釣り上げたのは、買ったら一体いくらするんだと思ってしまう見事な魚体のアマダイ。なかなかの迫力である。
ここで一言だけ言わせてほしい。
ぎょぎょぎょ!(じぇじぇじぇではなく)
久しぶりに見るナイスサイズのアマダイにびっくりしていたら、トモ側の方にもグイグイと力強いアタリが到来。やはり今日は佐島大物感謝デーのようである。電動リールを手で巻いて、じっくりと味わいながらのやり取りが楽しそう。
水面にポカーンと上がってきたのは、48センチにはちょこっとだけ届かないけど、これまた超立派なアマダイ!またもやぎょぎょぎょだ。
佐島出船のアマダイ釣り、侮れないじゃないですか(もちろん日によってムラはあると思いますが)。
きっと今が今日一番のチャンスタイム。これに続かなくてはもったいないと気合を入れ直して誘っていると、誘い上げた時にククンという小さなアタリ。アタリこそ小さいが、実は魚はでかいんじゃないかと期待を込めつつ、一瞬待ってから竿先を上げて聞き合わせると、アタリに比例した小さな手ごたえ。
釣れたのはアカボラことヒメコダイ。アマダイ釣りの代表的な外道で、小さいけれど身に甘みがあって、これはこれで美味しい魚だ。
ヒメコダイがいるところにアマダイの姿あり。今と同じポイントを攻めればきっとアマダイも来るだろうと急いで仕掛けを入れると、目論見通りにすぐヒット。今度はビンビンとしっかりとした引きが伝わってくる。
水面まで元気に暴れるのはアマダイの特徴。こりゃ本命確定でしょうと釣り上げたのは、「えー、そーきたか」という感じで、エーソー。
はい、エソでした。
ここでちょっと気分転換に朝食タイム。船釣りをしている最中の食事は何が一番いいのかをずっと前から考えていたのだが、ナイススティックとかランチパックとかよりも、バナナが手っ取り早いんじゃないかという結論に至ったわけですよ。バナナボートならぬ船バナナ。汚れた手でも食べやすいし、安いし、栄養満点だし、凍れば釘も打てるし、おやつに入らないし。
その辺に食べ終わった皮を置いておくと踏んで滑って転ぶけれど、来年は船バナナが流行るのではないだろうか。流行語大賞は船バナナでお願いします。
そして大物のアタリが到来!
なんてバナナをもぐもぐと食べながら片手でぼんやりと誘っていたら、グググンと引っ張る強敵が登場。あわあわしながらリールを巻いて、リールのドラグをちょっと滑らせながら、その強烈な引きを楽しむ。
やだこれ大きい。
せっかくの大物、電動でのやり取りだともったいないので、最後まで手巻きで楽しませていただきます。
これで大物のエソだったら涙で相模湾の海水量が増えるとこだが、潜水艦のような迫力で上がってきたのは、ピンクのかわいいデコッパチちゃん!ナイスアマダイ!
じゃーん!
釣れた、釣れたよ、僕にも釣れた。
やっぱりアマダイはこのサイズが釣りたいのである。
さあさあ、注目の大きさは如何に!
残念、夢の48センチには届かず、43.5センチ!
AMD43.5かー。なんだろう、この地方のFM放送局みたいな語呂は。
まあ、なにはともあれめでたいサイズ!
ここは素直に目標を40センチだったことに下方修正して、見事達成したことにしようではないか!なあみんな!(誰?)
スソながら楽しい一日となりました
この日はどうも午前中の早い時間にアタリが偏ったようで、潮が止まりだすに従ってだんだんとアタリも少なっていったのだが、それでもトップが10匹、二番が7匹、スソが4匹と、絶好調といえる釣果を記録。スソはもちろん私である。まあ4匹でも十分立派だけどね。
しかも30センチ以下は数える程度で、40センチオーバーがポンポンと出る大盤振る舞い。エサ取りや外道もそれほど多くなく、釣れれば半分は本命のアマダイという感じだった。いやあ、いい日だなあ。
私が残念ながらスソだったのは、両隣の誘い方に比べると、ちょっと仕掛けをうるさく動かしすぎたのかもしれない。活性がそれほど高くない時間帯にこそ、腕の違いがモロに出るかな。
その日のアマダイの機嫌に合わせて、釣り方と仕掛けをフィットさせることが高釣果につながるようだ。
ハデな飾りの効果を試してみたりもする
どうにもアタリが遠のいてくると、仕掛けをちょっといじってみたくなる年頃。ハリを派手にデコッパチなアマダイを釣るために、仕掛けをデコってみようではないか。
ということで取り出したのが、100円ショップで買ってきた謎のフワフワしたボール。
赤(ピンクだけど)と緑の発光体に、白のフワフワというクリスマス感たっぷりのオキアミデコレーション。これであまちゃんの乙女心はきっとイチコロのはず!
仕掛けを入れると、一瞬でヒット!
うん、ダメだこりゃ。
アマダイ釣りで過剰な装飾をすると、どうやら外道の食いが活発になるらしい。なにごともほどほどが一番ですかね。
しかしアマダイの活性が高い時なら、もしかしたら抜群の効果があるかもと、まだちょっと期待をしていたりもする。
そんな感じで本日の釣りは終了。
竿の上げ下ろしをしすぎて電動リールながら腕が筋肉痛気味になりながらも、楽しい一日でございました。
極上アマダイ、おいしくいただきました
アマダイという魚は、生でも煮ても焼いても蒸しても揚げても干しても釣っても買ってももらってもおいしい魚で、どうやって食べようかと毎回悩んでしまうのだが、今回は大きいやつの半身を昆布締めにして、残りの半身を酒蒸しにしてみた。残りは全部干物にして冷凍保存。
アマダイの昆布締めというのは確か生まれて初めて食べるのだが、これがねっとりとしていて旨かった。血合い骨の部分で切り分けてサクにしたものに、軽く塩をして身側に昆布を挟んでラップで包み、冷蔵庫で一日寝かせたのだが、程よく水分が抜けたアマダイは、とても上品でわかりやすく高級な魚の味。
残った皮を湯引きしたものもトロトロで最高。
アマダイ、素晴らしい。
そして骨付きの半身と頭を酒蒸しにしたものも、生とは別のうまさがあり、これまたホロホロフワフワムチムチしていて絶品。頭のウロコをきちんととってから蒸せばよかったと若干の後悔をしつつも、夢中になって身をほじくらせていただいた。このサイズになると全体がゼラチン質でプルプルしていやがる。
皿に溜まったスープがまたうまいのよ。ズルズル。
ヒメコダイ、トラギス、カナガシラの外道三人衆は、新鮮なうちに全部まとめて糸造りにしてみた。どれもちょっと小さくて調理するのが面倒だけれど、イセエビを思わせる甘みがあって大変好みの味。今度はこの上品な白身を、あえて丼飯に乗っけてムシャムシャと下品に食べてみようかな。
ということで、相模湾のあまちゃんことアマダイ釣りは無事終了。やはりアマダイ釣りは素敵だ。
サポートいただくと生きていけます。