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真鶴で船から狙うイシダイ釣り/八十吉丸

※掲載終了の「@niftyつり」から2011年7月8日の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。イシダイ釣りはこの数年後にまたハマり、現在進行中のターゲットです。貝を延々と剥くのがつらかったです。途中から自分でやっていないけど!

夏の冒険フィッシング

いくつになっても夏は冒険してもいい季節ということで、ひと夏の経験として、いつもだったら絶対狙わないような魚に毎年チャレンジするというのがマイルール。今決めた。ロマン万歳。

去年は南房総でイシナギという巨大魚に挑んで轟沈した訳だが、今年はその続きということで、イシナギからのイシつながりで、イシ……モチだと冒険度が低いですよねー。

そこで私がこの夏挑むのは、あの磯の王者、イシダ…純一のモノマネ。靴下を履かずにローファーで、女子プロゴルファーと腕を組みながら釣りをしてみよう。いやそういう話ではない。

もうバレバレだと思うけど、この夏はドーンとイシダイを狙うのだ。イシダイ釣りというと磯釣りで狙うイメージがあるけれど、私がそれをやるのは登山未経験者が普段着で富士山に登ろうとするレベルの無茶なので、船からのイシダイ釣りという超レアなジャンルに挑むのである。

幻の魚ともいわれるイシダイだが、伊東漁港でたくさん水揚げされているのを見たことがあるし、船からだったら私でも釣れる気がするんだよねー。って甘いですかねー。なんていってもイシダイだもんなー。

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イシダイとの体力勝負に備えて、夜中に牛丼とか食べちゃうよ。

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イシダイ釣りの舞台は神奈川県の真鶴。着いた途端に強風が吹いてきたぞ。

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お世話になるのは八十吉丸さん。小錦八十吉が経営ではなく、先々代のあだ名が八十吉だったそうです。

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撮影はいつもおなじみ岡田さん。露出度の高い格好で来て、蚊に食われまくっていた。

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知っていると思うけれど、これがイシダイという魚。もっともっとでかくなる。これを見た岡田さんが、「イシダイって魚拓でもシマシマに写るんだ!」と驚いていた。そんなバナナ。

船のイシダイ狙いは超特殊

私も船釣りはそこそこ経験してきたので、魚ごとにどんな仕掛けでどうやって釣るのかはなんとなくわかってきたような気がするけれど、イシダイ釣りに関しては全く正解がわからなかった。ゴツい竿にワイヤーのハリスとか使うのだろうか。

船宿に予約の電話をした際に、特殊な釣りだから最初はとりあえず貸し道具でやることを勧められたのだが、実際に道具を見せてもらうと、確かにこれは手持ちの道具じゃどうにもならないやつだった。

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八十吉丸には大きい船もあるけれど、イシダイを狙うのはこの小船。
平日限定の先着順で出船中。

まず貸し竿だが、オリムピックの極太カワハギ竿2.4メートル。今時のライトなカワハギ竿にはない武骨さと頑丈さである。

この竿はカワハギ用なのでもちろん先調子。イシダイというと向こう合わせで待ちの釣りというイメージだったのだが、竿先に出る小さなアタリを合わせて釣る釣りなのだそうだ。

アタリは小さいけれど、掛かったらその引きは強烈。4キロオーバーまで狙えるイシダイに対抗するために、このような竿のセレクトとなっているらしい。

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オリムピックのカワハギ竿。マニアックな貸し竿だ。

リールは普通の中型両軸リールなのだが、それに巻かれているのはナイロン10号。もちろんPEラインでもいいのだが、岩場を攻めるため根擦れの強度、強烈な引きに対抗するためのクッションの役割などから、あえてナイロン糸が巻かれている。

そして使う仕掛けも独特の胴突き二本針。

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こんな太い道糸を使う釣りってはじめてかも。

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同船した常連さんは、手作りの穂先が超柔らかい竿に、ダイワのバイキングというこれまたマニアックなリール。糸はテフロンを使用。

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仕掛けは道糸に二股サルカンを結び、捨て糸20センチに小田原型オモリ30号。そして ハリスは8号を30センチ。

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ヒラメ仕掛けのような、でも間隔が狭い二本針。針は伊勢尼や磯尼などの太軸を使用。二本の針が同じ方向である必要があるそうだ。

常連さん曰く、「船のイシダイは、いろいろな釣りをやってきて、最後にいきつく釣りのひとつ」なのだそうだ。

なにがなんだかわからない初めてだらけのイシダイ釣り。異文化コミュニケーション万歳。狙う魚がイシダイだけに、おかみさんからは「いけば必ず釣れるような釣りじゃないよ」と脅されたけれど、さっきから心が躍りっぱなし&顔がニヤニヤしっぱなしになっている。

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寡黙だが、釣りのことはなんでも教えてくれる船長。

エサは大粒のムラサキイガイ

竿も仕掛けも独特な船のイシダイ釣りだが、使うエサも変わっている。船宿が用意する餌は、ムラサキイガイとかカラスガイとかムール貝と呼ばれている黒い貝の大粒のもの。意外である。イガイだけに。

このエサを見たカメラマンの岡田さんが「もったいない!」を連発していたが、確かにワイン蒸しにでもしたらおいしい貝だ。これを結構な量使う贅沢な釣りなので、エサ代として3~4千円くらいが船代とは別途で必要となる。

もちろん違うエサを持参して挑んでも構わないのだが、イシダイ釣りのエサはサザエやウニらしいので、余計に高くつきそうだ。

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これがムラサキイガイ。自分で剥いて使う。

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剥き方や針の付け方は船長が教えてくれる。どれだけきれいに剥けるかが釣果に影響してくる。貝剥きナイフは船にあるけれど、厚手のゴム手袋か軍手は持参すること。

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針ごとに一つずつエサをつける。エサとりに弱そうだが大丈夫かな。エサとり対策にわざと殻を半分残す人もいるとか。

仕掛けやエサの付け方などは、船長や常連さんがいろいろな経験を経てこの形に落ち着いているのだが、まだまだ研究の余地がありそうな気もする。このあたりが、ハマる人にはハマる釣りなのだろう。実は私もすでに、釣りを開始する前からハマりかけているのだが。


イシダイ釣りは合わせが大切

使う竿は先調子でアタリをとる釣りだというし、自分で貝を剥いてそれをエサにするあたり、カワハギ釣りに通じるところがあるようだ。ただし狙う魚のサイズが全然違うので、その釣り方もちょっと違うんだな。

船からのイシダイ釣りは、船長とっておきの場所に船を固定しての釣りとなる。むき身にしたムラサキイガイを付けた独特の二本針仕掛けを海底まで下ろし、オモリが底に着いた状態で、竿先がちょっと曲がるくらいの張りをキープ。

ラインがPEじゃないので水深がよくわからないのだが、だいたい30メートル前後だろうか。なんだか食わせのショウサイフグみたいな釣り方だ。

イシダイなんて磯からだと豪快にブッコミで狙うような魚なのに、これが船からとなると、竿先に出る僅かなアタリをキャッチする釣りとなる。

アタリがあったら、空気を切り裂く良い音がするくらいの勢いで豪快にあわせて、普段からサザエやウニを食べている贅沢な、いや硬い口に針を貫通させる。カワハギ釣りだと、強く合わせちゃダメっていうけどね。

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ライフルを構えたスナイパーにでもなった気分でアタリを待つ。

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アタリを感じたら、エイヤーっと渾身の力で合わせる。「音が悪い!」と岡田カメラマンがダメ出しされた。

磯場に落としたうまそうな貝のむき身。これがどうなるかは釣りをやる人ならだいたい想像がつくだろう。エサとりがフグなのかベラなのかハギなのかはわからないが、一分と持たずに丸裸だ。いやん。

小魚が突っつくような小さいアタリは一応感じられるのだが、どれがイシダイのアタリなのかがわからない。無風状態ならもう少しわかりそうなものなのだが、朝から吹いている強風が竿を揺らす。船長に言わせると「ベラのようなアタリ」らしいのだが、ベラってどんなアタリだったっけ。

モヤモヤしているうちにエサはとられるし、これかなと合わせても一向に掛からない。釣れる時はたくさん釣れるらしいのだが、どうやら今日は船中一匹でるかどうかという感じのようである。

それでもこの釣り、たまらなくおもしろいのである。アタリがあったら即座に合わせなければ釣れないという緊張感、そして釣れればイシダイの可能性大という期待感。釣り方はカワハギ釣りに近いけれど、その雰囲気は大ダイ狙いの一つテンヤにも近いかもしれない。

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最初に釣れたのは、常連さんが巻き上げ途中に食ってきたサバでした。
岡田カメラマンがもらってキープ。ところで竿の曲がりを見てほしい。こういう竿で釣る釣りなのです。

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写真を撮りながらできる釣りではないので、岡田さんには竿を出さずにカメラマンとみんなのエサ剥きに専念していただいた。専属カメラマン兼エサ剥き係がいるなんて、どんな大名釣りだ。

私でもイシダイが釣れた!

釣りを始めて一時間、エサとりに悩まされながらも、なんとなくではあるが、数種類のアタリがあることが分かってきたような気がする。

ボソボソした感じのアタリは我慢して、クンクンと服の袖を子供が引っ張るようなアタリを待ち、ここだと大きく合わせると、伝わってきたのはズドーンとした重量感!

……根掛かりだった。華奢なカワハギ竿だったら今ので折れているな。

まあそんなことも多々あったのだが、いいアタリとだめなアタリがわかってきたことは事実で、さらに岡田さんの貝を剥く技術が目に見えて上達してきたこともあり、ようやくウマヅラハギを一匹ゲット!

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このウマヅラ、貝を剥いてくれた岡田さんに捧げます。小さい船で少人数でやるというのが贅沢で素敵。

とりあえず外道ではあるけれど一匹ゲット。吹き荒れていた風もちょっと弱くなってきたし、次あたり本命釣っちゃうんじゃないのみたいな予感がしてきたのだが、コツクンっという感じの文字にしづらいアタリに合わせると、ウマヅラとは全く違う力強い引きがやってきた。

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本命、来ちゃったんじゃないの。

この魚の引きが強烈だった。根に潜られないように強引に巻き上げると、それに対抗するかのように強烈な力で真下にズンズンと潜っていく。今まで味わったことのないつっこみに耐えて、次は私の番だとリールを巻くと、フッと竿が軽くなった。

バラしてしまったか!と絶望感に包まれていると、また真下にズドーンと突っ込んできた。魚はまだいる。どうやら一瞬だけ真上に浮上してきたらしい。敵はいろいろな技を使ってくるようである。

何度か潜水と浮上に揺さぶられつつ、どうにか水面付近まで巻いてくると、今度は大きく横っぱしり。最後まで予想のつかない動きをする相手である。

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おもしろいんだ、この引きが。

横に走られたのでサバ疑惑もあったのだが、上がってきたのは、まだシマシマが残るものの目測1キロオーバーの立派なイシダイだ!

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イシダイ、初めて釣ったよ。

この私が、あのイシダイを釣ったのである。

もう放心状態もいいとこだ。

やったー!

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やった!やった!やった!やった!

小型を一匹追加して終了

どうやらこの時がこの日唯一の時合いだったらしく、すぐに常連さんが1キロ弱を慣れた手つきで釣り上げた。そして私も20センチほどの小型を追加したが、これはリリース。

もう一人、私と同じくイシダイ初挑戦だった方は、残念ながらウマズラのみ。この日は潮が澄みすぎていたこともあり、私の腕で釣れたのは相当幸運だったようである。

このちょっとしたラッシュのあとは、風も強くなりアタリも遠のいてしまい、そのまま終了となった。

数少ない(多いけど気づいていないだけかも)本命のアタリを合わせられるか、それ次第で天国にも地獄にもなるイシダイ釣り。これは相当アツいです。はい。

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「この程度の大きさじゃ俺の顔は出せないな」だって。

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ちょっと小さいのでリリース(釣れたものの余裕)。

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引かないなとおもったらキタマクラ。エサとりは君か。

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こちらは常連さんが釣ったでっかいカサゴ。エサを剥いてくれたからと、岡田カメラマンがもらっていた。

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残念ながらウマズラのみに終わるも、どこか満足そうだった初挑戦の方。この釣りに合う竿を持参して再挑戦に挑みたくなりますね。

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釣った魚は最後に船長が締めてくれます。

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ほら、ぎりぎり1キロオーバーだ。

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うれしいったらうれしいな。

かなり賭けの要素が強かった船でのイシダイ釣りだが、私にしては珍しく初挑戦での本命ゲット。素晴らしい。

今回はなんの予備知識もなく挑んだため、すべての釣り道具をお借りしたのだが、次は自分が考えるところの船イシダイ釣りにふさわしい道具を揃え、すぐに再挑戦したいところである。

深場マルイカ用の竿とかで釣ったら楽しそうな気がするんだよな。持っていないけどさ。あるいは折れる覚悟で今時の繊細なカワハギ竿とか。で、まんまと折ると。エサはいくらでも手に入るザリガニとかタニシなんてどうかな。根掛かりなどで針先が丸くなっちゃうので、仕掛けも多めに持っていかなきゃなー、という感じで妄想ばかりしている今日この頃でございます。

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これがイシダイの口。こりゃ強い合わせが必要だわ。

イシダイ釣りは8月頃からが一番釣りやすいシーズンだそうで、寒くなってくるとエサのムラサキイガイが手に入らなくなって終了となる。ご興味の湧いた方はお早目のご予約を。

食べたらびっくりするくらいおいしかったです。

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釣ったその日だと旨みがでないということで、一日置いてから刺身にしてみた。きれいな白身で、上品な脂がまんべんなく乗っており、適度な歯ごたえがある。今まで釣ったどの魚よりもうまいかも。でももう一日置いてもよかったかな。岡田カメラマンさんにも食べさせてあげたかったよ(涙)。

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アラは酒蒸しにしてみた。汁にしたほうがよかったかな。

■八十吉丸

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