今年は好調かも!夜の江戸前アナゴ釣り/江戸川放水路 伊藤遊船
今年は久しぶりに江戸前アナゴの調子が好調らしいよ
江戸前の風物詩でもある初夏の夜アナゴ釣りだが、ここ数年はパッタリと調子を落としてしまい、竿頭でも一桁台、私レベルの釣り人だとアナゴの顔が見られれば御の字みたいな不漁の年が続いていたため、「そんな釣りもあったかな……」と、アナゴの存在が忘却の彼方へと流されてしまっていた方も多いかと思います。
そんな隠れアナゴファンの皆様に朗報です。どうやら今年は調子がいいらしんですよ。竿頭が20匹を超えるような日も多く、全盛期(っていつだか知らないけど)ほどではないにしろ、震災以降では間違いなく一番好調な年なのだとか。
不調だった去年は、アナゴ狙いだけだと取材になるのか不安だったのでキスとアナゴのリレー船に乗って、キスたくさんとアナゴ1匹という微妙な釣果だった訳だが、今年だったらアナゴ一本に絞った夜アナゴ船でも取材になるんじゃないかと、気合を入れて行ってきたわけですよ。
アナゴ一本に絞った釣果がアナゴ1本だったら笑えないんですが、先に結果を言ってしまえば、風速12メートルというバッドなコンディションの中、私の腕で11匹というナイス釣果。
ということで、今年のアナゴは良さそうです!
伊藤遊船の場合、夜釣りであるアナゴ釣りの出船時間は17時。そして18時過ぎに釣り場へと到着し、21時くらいまで釣りをして、22時過ぎに船宿へ戻ってくるというタイムスケジュール。釣りをしている時間は3時間弱の短期決戦なのである。
ちなみにキスとアナゴのリレー船は、13時出船で先にキスを釣ってから、カップラーメンを食べて、20時半くらいまでアナゴを釣るという流れ。
この船宿は東西線の妙典駅から徒歩圏内なので、終電が23時以降なら電車での釣行も可能。帰りは車で駅まで送ってくれますよ。
アナゴ釣りの道具
船から狙うアナゴ釣りは、防波堤から狙う投げ釣りとは仕掛けや釣り方が全く違う。初心者の方が船でのアナゴ釣りなのに投げ釣りの道具を一式揃えてしまったという話を聞いたことがるのでご注意を。
船のアナゴ釣りで使う専用竿は、1.5メートル前後と短く、先調子で胴が固いのが特徴。これは「小突く」というアナゴ釣り独特の誘い方に適したもので、アナゴマニアは同じものを2セット用意して、両手に持って小突いたりするんだよね。
流用できる竿としては、キス用、カレイ用、カワハギ用あたりでしょうか。1.8メートルくらいまでの長さで、先調子の軽いものなら、とりあえずは何でもいい気もします。もちろん貸し竿を借りてもOK。ちょっと変わったところでは、テトラ用として売られている安い竿が、アナゴ竿に構造が近いのでおすすめです。
私が持ってきたのは、10年位前に買った1.8メートルのキス用竿、凄く古そうなのを中古で買った何用なのかわかんないけどたぶんアナゴ用と思われる1.4メートルくらいの竿、そして1.5メートルのテトラ用。この3本の中から、様子を見つつ2本をセレクトする作戦である。アナゴを狙うのが久しぶり過ぎて作戦が定まっていないという話なのだが。
使用するリールは釣り方によって向き、不向きがあり、ちょい投げして広く狙うスタイルならスピニングリール、船下を狙うのならベイトリールという感じ。道糸はPE1号前後で、リーダーにフロロカーボンかナイロンの5号くらいを1メートル程結んでおく。リーダーをつけておかないと、アナゴが絡んだ時にグッチャグチャになりますよ。
道糸とリーダーを結ぶのが苦手という人も多いと思うけれど、竿の長さよりリーダーが短ければ、簡単なサルカン接続でもいいんじゃないでしょうか。糸を巻き過ぎると竿先が折れるけどね。
仕掛けは25号の釣り鐘型オモリに、チューブなどのカバーがついたハリスを1本、あるいは2本ぶら下げるというのが、オーソドックスな江戸前スタイル。釣り鐘型のオモリって、この釣りでしか使わないけれど、「小突く」という独特の誘いには、このオモリが昔から愛されているみたいです。釣り鐘型っていう言葉の響きの良さもあるのかな。そしてオモリの上にケミホタルを付けるのも基本の内ですかね。
本当にアナゴがケミホタルの明かりに寄って来るのかは分かんないんだけど、付ける人が多いからやっぱり寄ってくるんですかね。点滅する小型の水中ライトを使う人も。その光の効果はともかくとして、夜釣りなので仕掛けに明るいものがあると、釣りがしやすいからとりあえず付けるという意見も。はい、私の意見です。
基本的な仕掛けは船宿で売っているオーソドックスなものだけで十分なんだけれど、構造がシンプルなだけに小物にこだわりたくなるのがアナゴ釣り。
釣具屋にいけばいろいろあるし、テンビンを自作したり、他の釣りの道具をあえて使ってみたりするという、想像して工夫するのが楽しいという意見も。はい、私の意見です。
江戸前アナゴの釣り方
アナゴの釣り方は、ええと、どうやるんだったかな。すっかり釣り方を忘れてしまったので、あらためて船長に聞いてみた。アナゴ釣り初心者の方は、船長の近くに席を構えるといいですよ。
まずアナゴ釣り独特の「小突く」という誘い方だが、これはオモリがドスンドスンと底に着いたり離れたりするくらい持ち上げるという話ではなく、オモリが底に着いた状態で、ヒョコヒョコと動く程度に誘うというもの。
何度か小突いたら少し動きを止めて、アナゴが食う時間を作ってやるのが船長のスタイルだそうだ。
アンダースローで少し投げて広範囲に探ってもいいし、船下に落として丁寧に誘うのでもOK。今シーズンはどっちの方が釣れると言い切れない感じらしいよ。投げて誘う場合は、左右の人とのオマツリに注意。潮が速いと25号のオモリでも結構流されます。
仕掛けは二本バリだと釣れた時に絡みやすく、タイムロスや怪我につながるので、手返し重視の一本針がおすすめとのこと。確かに釣れたアナゴに絡みついたり、着ている服に刺さったりするんですよね。
そして一番大切なのはエサの付け方だそうで、ビローンと伸びた状態にせず、アナゴさんが一口でガブリと食べやすい形状にすることが大事。アオイソメを丁寧に団子状に刺したり、短く切って房掛けにしたりする訳だ。ちょっと面倒な作業だけれど、だからこそ小まめに丁寧にやる人ほど釣れるらしいよ。
アタリは竿を手に持っていればちゃんと伝わってくるので(船長曰く、肉食系のガツガツしたアタリ)、それをしっかりと合わせることが大事。合わせ方は人によってちょっと違うんだけれど、船長はまず聞くように軽く合わせてみて、重みがあればしっかりと合わせるという感じだとか。
もし聞いても乗ってなければ、そこでそのまま誘うと、またすぐに食ってくることも多い。聞いて乗っていたら、アナゴは口が固いので、しっかり合わせて掛けましょう。
あまり慣れてない人は、1本竿で集中してやるのがベスト。2本竿でやる場合は、1本を船の揺れでオモリがたまに浮くくらいに調節して置き竿にしておく感じでいいんじゃないでしょうか。ベテランさんは両方の竿を手に持って、器用に小突いていますね。
で、実際にやってみてどうなったかというと、冒頭に書いちゃいましたが、なんと11匹釣れた訳ですよ。こんなに釣れたのは5年振りかなー。
復活の兆しが見えたアナゴ釣りは、これから梅雨に掛けてが本番シーズン。たぶん。気になる人は手を出してみてはいかがでしょうか。釣果の保証はできませんが、すごく楽しいんですよ、これが。
なかなかの強風ですがかんばります
後編は実際のアナゴ釣りの様子を伝える訳ですが、実は前日に釣行予定だったんだけれど、夕方から強風が吹いてしまって出船中止。そしてその翌日(今日)も似たような天気予報で怪しかったんだけれど、なんとか大丈夫でしょうということで出船したのだが、海上保安庁が発表する海ほたるレーダー施設の風速が12メートル。釣り場となる木更津沖もなかなかの荒れっぷり。
夜アナゴはアタリをとって楽しむ釣りなので、波や風はないに越したことは無いんだけれど、こんなコンディションでも、そりゃもう楽しかったんですよ。今日の記事は楽しいしかいいませんよ。
この日は私がいた左舷側は5人だったので、2本竿でもオマツリはしなそうな感じ。そこで一本はアナゴ竿+スピニングリールでチョイ投げの小突き釣りをして、もう一本はキス竿+ベイトリールを置き竿にして船下を狙う作戦でスタート。
こういう天気だと、置き竿はアナゴ竿よりも多少は波の上下動を吸収してくれるキス竿のほうがいいような気がする。
こんな感じで準備をしたところで、記事の前編で書いたように船長から釣り方を教えてもらっていたところ、同行いただいたアナゴ釣り初体験のWさんが、ポーンと一匹目をゲット。やはり今年は調子がいいいらしいね。
そういえばせっかくセットしたケミホタルを、折って光らせることをすっかり忘れていたぜ。これってアナゴ釣りあるあるかな。ポキッとな。
同行のWさんが釣ったアナゴをうらやましそうに眺めていたら、こっちの竿にもめでたくヒット。ただし置き竿だけどね。ググっと竿先が沈んでいるキス竿を掴んで大きく合わせてみると、しっかりとした重さが伝わってきた。
アナゴ釣りでは掛かったら絡まれる前に一気に巻き上げるのがセオリーなので、ドラグを締めてゴリゴリと一気に巻く。はい、今シーズン一匹目を無事ゲット。うん、この置き竿用の仕掛けはいいかもしれない。
やっぱり手持ちの竿で釣ってこそのアナゴ釣り
置き竿でも釣れればうれしいんだけれど、アナゴ釣りの醍醐味といえば、ヒョコヒョコと小突いてよってらっしゃいと誘って、アタリを感じたところで合わせるという一連の流れにこそあるというもの。置き竿は「釣れた」であり、手持ちの竿こそ「釣った」となるのだ。同じ一匹でも満足度が違うんだよね。
ということで、チョイと投げて、小突いて、待って、ちょっと巻いてと広く誘っていると、ビビビっというアタリ到来。竿を立てて聞いてみると、伝わってきたのは確かな重量感。よし掛かったとしっかりと合わせ、リールをグリグリと巻くのだが、あれなんか違うような。
アナゴの引きってこんなだっけなーっと思いながら釣り上げたのは、でっぷりと太ったシロギスでございました。あー、こういうシロギスを釣っちゃうと、やっぱりリレー船もいいかなって思っちゃうなー。シロギスも釣って楽しいし、うまいよねー。
よし、次こそは本命のアナゴを手持ちの竿で釣ってやろうと、はやる気持ちを抑えて丁寧にエサを付けて、チョイと投げて小突いていると、グンと重くなるような手ごたえ。すぐに竿先をちょっと上げて聞いてみると、ずっしりとした重量感。よしこれだとしっかりと合わせれば、長い魚独特の引きが続くという理想的な展開。
今度こそはと巻き上げれば、ナイスサイズのアナゴでございました。
道糸を伝って手に伝わってくるアタリと、合わせた時の重量感が最高。そんなに大きい魚じゃないんだけれど、釣った時の充実感があるんだよね。やはり手持ちの竿で釣ってこそのアナゴだな。
楽しいという言葉しか出てこない
いやあ、楽しい。それにしても楽しい。風があっても楽しい。風がなければもっと楽しいんだが。
なにがそんなに楽しいって、もちろんアナゴがちゃんと釣れることが楽しいんだけれど、夜釣りというのが楽しいんですよ。うっかりブランデーグラスで乾杯をしたいくらいに。
東京湾で夜景を眺めながら(っていうほどちゃんと見ないけど)船の上で釣りをするという、昼間の船釣り以上に非現実的な空間が素晴らしい。夜釣りといっても船上はそこそこ明るいので、ヘッドライトとかは不要ですよ。雰囲気的にはあってもいいけどね。
ある程度アナゴが釣れたところで、せっかくなのでと置き竿の仕掛けをテトラ竿+スピニングリールのタックルに付け替えて、江戸前のアナゴ釣りらしく二本竿で小突いてみたりして。
これ、やってみるとなかなかむずかしく、右の竿にアタリがあった時に左の竿を持ち上げてしまったり、両方上げちゃったり、旗上げゲームみたいに脳がこんがらがる感じがするんだけど、そこが楽しいんですよね。ボケ防止の脳トレに最適かも。
左右を交互に小突いたり、右、右、左、右、なんてあえてリズムをずらしたり、ドラマーになった気分で竿を操るのもまた楽しいんだよね。おいらはドラマー、嵐は呼びたくないけどね。
この二刀流で3匹釣って納得したところで、やっぱり難しいからと、手持ち+置き竿の最初のスタイルに戻したりして。
自分のスタイルをコレと決めて追及するのもいいけれど、船下を狙っていたらチョイ投げしたり、みんながチョイ投げしていたら船下を小突いたり、あるいは釣れている人のスタイルを真似てみたり。釣り方と仕掛けの組み合わせを状況や気分に応じて変えられるのが、なんだか好きなのよ。
3時間弱という短い時間を精いっぱい使う感じが、他の釣りにはない密度の濃さなんだよね。
この日はずっと風速12メートル前後の風が吹きっぱなしだったんだけれど、それでもアナゴの活性はそこそこあり、終わってみれば13匹を頭に、11、6、5、4、4、3、3、2とボウズ無し。私は11匹だったので、生意気にも次頭だったのかな。同行いただいたアナゴ初体験のWさんは4匹。風がなければもうちょっといったはず。
ちゃんと基本さえ守れば、今年はアナゴ釣り初心者でもそこそこ楽しめそうな気配。3時間弱の短期決戦なので、やっぱり手返しが大切みたいです。
という感じで、途中でトイレにいったりご飯を食べたりすることもなく、集中しっぱなしのアナゴ釣りでした。本当にあっという間の時間だったなー。
「もっとやりたい!」って思うくらいがいいんですかね。まあもっと長く釣りをしたいという人は、リレー船をお楽しみくださいということで。
今シーズン中にまた乗るとしたら、今度はキスとアナゴのリレー船にするか、もう一度アナゴの専門船にするか、帰りの船中で延々と悩んだ次第でございます。そしてまだ悩んでいたりして。
おいしいアナゴを堪能しました
アナゴとフグは船長が捌いてくれるから楽でいいですな。家に帰ったらすぐに塩や流水で洗って、残った内臓やヌメリをきれいに落としておくと、よりおいしく食べられます。
水で洗うと脂やうま味が抜けちゃう気もするので、キッチンペーパーで拭うように下処理するといいかもしれません。まあ細かいことを気にしなくても、基本うまいっす。
新鮮な江戸前のアナゴなんて、アナゴ漁師か釣り人でもなければなかなか食べられないご馳走。どう料理しても間違いなくうまいのよ。
このアナゴを食べると、またアナゴ釣りに行きたくなるという永久ループな訳ですよ。ははは。
ということで、このまま好調が続く保証はできませんが、気になった方はぜひ挑戦してみてください。