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活きたハゼをエサにしたマゴチ釣りの乗合船に乗ってきた/だてまき丸

※掲載終了の「@niftyつり」から2010年9月下旬の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。内容は当時の情報なので、金額やシステムなど変わっていると思います。マゴチといえば手漕ぎボートで釣ったシロギスかメゴチをエサに釣るのが今も夢なのですが、それとは別ジャンルの釣りとして乗合船は楽しいなと。

おいしそうな名前のマゴチ乗合船、だてまき丸

マゴチの乗合船というと、サイマキと呼ばれる小型のクルマエビを活きエサにした夏の釣りというイメージがあるのだが、実は11月くらいまで出ている船宿がいくつかあり、秋からは活きたハゼをエサにして狙うらしい。

今日訪れたのは、そんなハゼエサのマゴチ釣り(通称ハゼマゴチ)をやっている船宿のひとつで、その名を「だてまき丸」という。この不思議なネーミング、船長の名前が「伊達牧夫」という名前だからという話ではなくて、お正月におせちの伊達巻ばかりを食べていたかららしい。ということは、かまぼこ丸とか、栗きんとん丸とかになった可能性もある訳か。雑煮丸とか。

このだてまき丸、インパクトがある割に初めて聞く名前だなと思ったら、船長が老舗船宿で20年の修行の末、二年前にオープンしたばかりの船宿だそうだ。まだその存在を知らない人も多いためか、比較的空いている日が多いそうで、この日は平日の水曜日だったのだが、乗客は全部で7人と釣りやすい状況だった。

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工業地帯にポツンとあります。恵比寿橋を越えてすぐ左。駐車場は別の場所なのだが、とりあえずここで受付をしよう。

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タオルとステッカーがもらえました。伊達巻はもらえません。

私のマゴチ釣りの経験は、七年前の手漕ぎボートから始まって、キス狙いの船釣り、あるいは仕立て船など毎年何回か狙っているのでベテラン(でも釣れたのは今年になってからようやく一匹と腕はド素人)なのだが、マゴチ専門の乗合船で狙うのは初めてだ。

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こちらが船長。1.8メートルのキス竿と1.95メートルのライトタックルロッドを持ってきたが、長いほうが食いこみさせやすいでしょうということで、ライトタックル竿をすすめられた。

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「だてまき丸オリジナルの手バネ竿はどうですか?」とチャーミングなおかみさんに勧められて買いそうになってしまった。リールがない分圧倒的に軽いんですよ。

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氷は出船前と戻ってきてからの二回、たっぷりもらえます。

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55センチ以上の大物を釣った人には、このTシャツがもらえるキャンペーン中。※当時の話です。

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仕掛けは船宿で購入可能。15号の三日月錘と、ハリス5号1.5メートルにカイズ針14号。

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まるごとソーセージ、まごとソージ、まごージ、まごジ、マゴチ!

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笑顔で見送るおかみさん。

ハゼエサの付け方

私をいれて7人の乗客を乗せた船は、港から一時間ほど走って第一海保と第二海保の間に到着。ここは水深が5メートル前後と浅く、潮の流れが速い絶好のポイントらしい。

エサのハゼは五匹が料金に含まれており、追加は一匹100円。船長の話だとマゴチ以外にもイカやフグに食われてしまうため、結構消耗が早いらしい。

私の隣に陣取っている二本竿の常連さんは、最初から千円プラスして15匹のエサを用意していた。船宿で買わずに自分で釣ってきたハゼを持ってくる常連さんも多いそうだ。

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船宿は活きたハゼを用意するのが大変ですね。

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乗船料に含まれるハゼは五匹。追加は一匹100円。

マゴチ釣りの仕掛けはとてもシンプル。PE1.5号前後の道糸(先糸はいらないそうです)の先に三日月オモリというこの釣りかスズキ釣りでしか見掛けない専用仕掛けをつなぎ、そこにハリスを結ぶだけ。オモリは鋳込み天秤でもいいのだが、針金部分からフワッと着底するので、水深が深い場合にちょっと底立ちがとりにくいそうだ。

エサの付け方はサイマキ(小型クルマエビ)のようにコツがある訳ではなく、口の中から上あごに通してあげれば大丈夫。ただ、いくらハゼが丈夫とはいっても、なるべく素手で触らないようにして、すばやく針を刺した方がいい。ハゼの活きの良さが釣果に大きく影響する釣りなので、弱ってきたらすぐに交換が鉄則。エサが有料だからって、しみったれていると釣れないのだ。

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なるべく素手で触らないように、ネットを持参した方がいいよ。

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せっかくハゼを弱らせないようにネット越しに掴んだのに、針をネットに刺してしまってワタワタしている間に余計弱らせてしまった。それが俺クオリティ。

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鱗がだいぶとれちゃった。この経験から、洗濯ネットに入れてハゼを揉むことで一気にウロコを落とすという裏技が生まれたとか。

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ハゼ一匹が、このコアラのマーチひと箱と同じ値段か。次に乗る時はハゼを釣ってから乗ろうかな。

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ハゼの活きを保つためにブクブク持参の人が多かった。隣の常連さんは桶の蓋も持参して、ハゼの飛び出しと水温の上昇を防止。ブクブクがなければ、水を頻繁に変えよう。

マゴチの誘い方

仕掛けやエサの付け方もシンプルなら、釣り方もシンプルなのがハゼエサのマゴチ釣り。まず底まで仕掛けを落としたら、竿先を水面近くまで下げた状態で底立ちをとって道糸をピンと張る。

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底までオモリを落として、竿先を水面近くまで下げた状態で糸を張る。

この状態から竿先を平行まで持ちあげると、オモリが70~100センチ上がるので、この状態で10~20秒程アタリを待つ。ハリスが1.5メートルなので、エサのハゼはギリギリで海底に着いた状態だ。

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すっと70センチ~1メートルほど竿先を上げて待つ。これだけ。

10~20秒待ってみて、アタリがなければ竿先を下ろして底立ちを取り直す。船は常に移動をしているので、多少タナが変わっている場合がある。あとはこれを繰り返すのみ。頻繁に仕掛けを底まで下ろすのは、底立ちをとるという意味もあるが、これによってエサがフワッと動き、それが誘いになるためだ。

アタリがあったら、引っ張られる方向に竿先を気持ち送ってやり、大きく引きこんだところで竿を立ててあわせてやる。マゴチ釣りというと、置き竿でじっとアタリを待つイメージがあったのだが、ここでの釣り方は積極的に誘いを入れる攻めの釣りなのだ。

なんていう説明を船長に聞いていたら、左の「釣りはマゴチ釣りしかやらない」というストイックな常連さんの竿がさっそく曲がった。

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55センチ以上のマゴチを釣るともらえるTシャツがたくさんあるので、パジャマにしているらしいぞ。

しかし上がってきたのは本命のマゴチではなくコウイカ。だいたいはタモに収まる前に逃亡してしまう困った存在なのだが、針がしっかりと掛かっていたので無事にネットイン。そんなこともあるのか。

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そういえばコウイカ釣りっておもしろいらしいね。

マゴチもいいけどコウイカも釣りたいなーなんて思っていたら、私の竿先にググッと抑え込むようなアタリが到来。ググ、ググっとくるのに合わせて竿先を軽く沈めていき、グググーっと大きく引きこまれたところで竿先を上げる。

すると……スポーンと抵抗がなくなった。

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スッポンタケー!、いやスッポヌケーター!

どうやらハゼの口に掛けた針のところまでマゴチが飲みこむ前にあわせてしまって、ハゼから針が外れてしまったようだ。なるほど、合わせのタイミングを失敗すると、わかりやすく悔しい釣りである。こりゃハマる訳だ。

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辛い(からい)と辛い(つらい)は同じ字だが、今の気分はカラいじゃなくてツラい(つらい)だ。ツラクチ~。

船中一匹目は隣の常連さん

記念すべき船中一匹目のマゴチを合わせのタイミングミスで釣り損ねて落ち込んでいたら、先ほどイカを釣った左の常連さんの竿にまたアタリがきた。どうやら今度こそマゴチのようだ。

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アナゴ狙いっぽい釣り方で二本の竿を操る常連さん。

合わせのタイミングもばっちり決まり、50センチほどの食べごろサイズをきっちりゲット。さすが。

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イカの時とは明らかに違う竿の曲がりっぷり。私もマゴチ専用竿が欲しくなってきた。

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マゴチの裏側ってヒラメのように真っ白だね。

エサとりに腹が立つ

やはり誰かが一匹釣ると気合が入る。マゴチはこの海に確実にいる(というのはさっきバラしたのでわかっているのだが)!

集中をしてタナとりまでの間隔を短めの10秒にして積極的に誘いをかけていると、クーンという感じで引っ張られる。クーンクーン。うーん、マゴチのようなイカのような濡れた子犬のような。

しばらく待ってみたが大きなアタリはなし。これはイカだろうと確信をして、合わせを入れずにゆっくりと巻くが、あと2メートルというところでフッと軽くなってしまった。食い逃げ―。

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後頭部を齧るのはイカ。もしマゴチがダメだったら、戦死したハゼを集めて天麩羅にしようかな。

すぐにエサを変えて沈めてみると、今度はカツカツっとしたカワハギ的な金属的アタリ。しかしこれもまったく食い込まず。

なんだろうとゆっくり巻き上げると、水面近くまでハゼを齧る悪者が上がってきた。目視したその正体はピラニアではなくサバフグだ。なるほど。

これでもう残りのハゼは2匹だけか。

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オー、スプラッタ!川口浩探検隊でみたようなシーンだな。

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右の方が釣ったサバフグ。こいつがハゼにアタックしてくる。

誰でもガンガン釣れるマゴチ

このようにイカやフグの活性が高いのは困るけど、本命のマゴチもしっかり高活性。船上ではリレーのように順番でマゴチが次々と上がっていく。これが本当のリレー船。

私も今度こそあわせがばっちり決まって、リレーのバトンを落とすことなくマゴチをゲット。ちょっとサイズは控えめですけれど。

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船中二匹目は左艫のおにいさんがゲット。ナイスマゴチ!

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左ミヨシでは常連さんが手バネ竿で軽くゲット。

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こちらは右艫の旦那さん。前回Tシャツサイズを釣ったので、奥さんを連れてリピートだそうです。

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そしてナイス俺!撮影は船長!

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めでたいので赤飯たべちゃう!

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釣ったマゴチは目印として持参した安全ピンや結束バンドをつけて、船の生簀に入れる人がほとんど。すぐに締めてクーラーボックスにいれてもいいけどね。

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マゴチが~刺した~小指~が痛い~。俺の小指の思い出。鋭い棘がホッペとエラブタにあるので気をつけよう。

この頃にはすでに最初に配られた五匹のハゼは使い切っており、5匹単位で船長から購入を繰り返している。エサ代がけっこう掛かるけれど、その分アタリがあるということなので、そのあたりは致し方なし(あたりだけに)。アタリがないよりよっぽどいい。

なんだか中学だか高校の頃に、ゲームセンターにあった明石家さんまや古舘伊知郎によく似たイラストの人が司会を務める、ちょっとエッチな麻雀ゲームにお小遣いをつぎ込んでしまった経験を思い出した。っていうたとえ話、これを読んでいる何人に伝わるのかな。

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7匹目のハゼでようやく2匹目のマゴチをゲット。比較対象がわかりにくいけれど、かなり小さいよ。

そして大物をばらした

さて二匹の本命を釣ったのはいいが、水深が5メートルと極端に浅いので、釣っている間に写真を撮っている時間がない。今回は一人できたので撮影してくれる人もいない。

しかしですよ、やっぱり大きく曲がった自分の竿、そしてネットに収まる瞬間の写真を撮りたいなと思っていたころでまた明確なアタリが来た。グッと竿が絞り込まれたタイミングで、マゴチを海底から引き離すイメージで大きくゆっくりと竿を上げると、今までにない重みを感じた。でかいよこれ。すかさずカメラを持って自分撮り!

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左巻きのリールだが右手にカメラを持つ関係で竿は左手。

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竿を持ったりカメラを持ったりして水面まで巻き上げて、上がってくるマゴチをファインダー越しに探す。

ここで急ですがナゾナゾの時間です。

このように、釣りも撮影も大した腕じゃない人間が、写真を撮りながら魚を取り込もうとすると、どうなるでしょうか。あるいは口が軽い人に秘密を話すとどうなるか。

正解は、「ばらす」でした。いやーん。

水面付近まで上がってきたマゴチだったが、カメラを持っていたために左手の竿さばきだけでタモへと誘導しようとしたところで痛恨のばらし。タモに入ってから落ち着いて撮影すればよかった。なにやってんだ俺。

船長が「今のはTシャツサイズだったんじゃない?」といえば、隣で見ていた常連さんは「いや70センチはあったでしょう」と冷やかしてくる。実際は50センチそこそこだったかもしれないが、逃がした魚はやっぱり大きい。

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その横でTシャツに一センチ足らない大物を釣る常連さん。

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マゴチの口でハリスがザラザラしてきたら、その分だけ針を結び直して切る。ちくしょー。

そんな感じで大物マゴチはばらしてからは一時的にスランプに陥ったけれど、その後20メートル程の深場に移動して好調が戻り、無事にマゴチを二匹追加して合計4匹。そして憎いエサとりのコウイカも一匹ゲット。使ったエサ代二千円。わぉ。

76年に一匹といわれていた私のマゴチを釣る確率(照りゴチならぬ、ハレーマゴチ※照りと晴れとハレーを掛けています)が、ここにきてまさかの急上昇である。こんなことならもっと早くから乗合船でマゴチを狙っていればよかったか。いやでもやっぱり手漕ぎボートで釣りたいな。

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このスミイカが食べたら最高にうまかった。

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これは三匹目の良型マゴチ。これでもまださっきばらした奴の方がずっと大きかったのだよ。

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身体計測を拒否する思春期のヤンキーみたいな四匹目のマゴチ。

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小型が多いけれど無事4匹。ちなみに竿頭は11匹!

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7人で38匹と絶好調の一日でした。ということは4匹だと平均以下か。

ハゼマゴチ、とても楽しい。これだけ本命がアタリの多い日は珍しいかもしれないけれど、あの竿先が沈むアタリがあった時の高揚感、そしてあわせるタイミングを見極める緊張感、そして掛かった時の充実感と重量感、どれも最高。そして釣れる魚が大きいというのが単純に楽しい。いやー、これは良い釣りだ。

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部活のマネージャーのように冷たいタオルとアイスをくれるおかみさん。
ちょっと前のギャグじゃないけど「惚れてまうやろー」と叫びそうになった。

マゴチはこれからが本当の旬らしいよ

マゴチは釣る上でも食べる上でも夏が旬というイメージなのだが、これまでにマゴチを何百匹も食べてきた船長によると、これからの季節こそ脂が乗っておいしいそうだ。

食べ方のおすすめは、フグのように薄造りにしてポン酢でいただくというもの。家に帰ってさっそくやってみると、なるほどこれなら一人一匹分は軽く食べられそうな味。釣れたのが小さいしな。さっぱりしているのでいくらでも食べられる。

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船長おすすめの薄造り。白身好きには溜まらない味。

翌日は塩胡椒をしたマゴチに小麦粉をまぶして、バターソテーにしてみたのだが、これが大正解だった。昨日の薄造りとはまるっきり逆方向のアプローチだが、これはこれでマゴチの旨みと身の弾力を十分に味わえる。ちなみにソースはフライパンに残ったバターにちょこっと醤油を足したもの。

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こういう洋風料理はあまり作らないけれど、これはまた作ろうと思った。
またマゴチが釣れたらだけどね。

そして最後はアラのから揚げ。刺身やソテーで残った背骨やカマ部分を塩麹という調味料に漬け込んで、軽く洗ってから薄く小麦粉をつけて揚げてみた。当然固い骨だらけで一口食べるたびに口の中に刺さるのだが、その身は間違いなくうまい。個人的にはアラ汁にするよりもこっちがおすすめ(揚げもの大好きだから)。

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骨が刺さりくるが、文句なくうまいのだ。ケンタッキーフライドマゴチ。

乗合船のマゴチ釣りというと、ちょっと難しいマニアックな釣りというイメージがあったけれど、仕掛けも釣り方もシンプルだし、ハゼがエサなら付け方も簡単。水深も浅いし、実は初心者向きの釣りなのかもしれない。渋い日はアタリが一日数回なので、飽きっぽい人には向かないかもしれないが、個人的には再挑戦したいターゲットだ。

■だてまき丸

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