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食べておいしい!外房の中深場アカムツ釣り/波崎 信栄丸

※掲載終了の「@niftyつり」から2011年7月29日の「ゆるゆる釣り部」釣行記を一部修正して移植しました。この頃はまだ初心(ウブ)だったので、アカムツの口に住んでいるタイノエ(アカムツノエ)にキャーとか言っていますね。今なら迷わず揚げて食べます。……美味いんですって。

食べてうまい魚といえばアカムツだ!

違いの分かる男、某釣り具屋のT上さんは語る。

「釣りの対象魚の中で、食べておいしいという要素に重きを置いて考えると、トップクラスにランキングされるのがアカムツである。」

皆さんご存じの高級魚アカムツ、通称ノドグロ。食材としては冬の魚のイメージがあるけれど、釣りの対象魚としては、産卵を控えて浅場にやってくる夏から年内いっぱいがシーズンらしい。よし、いくべ。

ということで、今回はT上さんにガイド役をお願いして、茨城県の波崎からアカムツチャレンジなのである。一匹釣れれば四の字、卍、いや御の字の魚だが、目指すはドーンと赤いのを六匹。そう、アカムツだけに赤六つってやつですね。

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この日は平日で一艘でも乗れそうな客数だったが、二艘だしてくれていた。

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目指せ竿頭。あるいはカナガシラ。

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私が乗った船の船長と中乗りさん。なかなか渋い男達だが、釣果は渋くないはずだ(釣り定番ギャグ)。

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船のキャビンにはコーヒーやカップラーメンが完備。これだけでこの船宿が好きになった。

外房流アカムツ釣りの道具と仕掛け

外房でのアカムツ釣りは、オモリ150号の胴突き仕掛け(オモリが一番下になるやつ)が基本となる。船長の意見としては、アカムツは口が切れやすいので、竿はオモリ負荷80号くらいの、ちょっと柔らかめくらいがオススメとのこと。

そして電動リールの釣りとはいえ、一日中手持ちでの釣りとなるので、竿もリールも軽いに越したことはないそうだ。

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私のリールはレオブリッツ400。糸はPE4号。※最近は3号指定かも

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竿はビシアジ用1.8メートル。もうちょっと柔らかい竿でもいいかも。

ちなみにT上さんが私と全く同じ竿とリールを持ってきていて、ちょっとびっくりした。この竿とリールはT上さんに勧められて某釣具店で買ったのだが、自分が使っていいと思ったものをすすめていのか。あるいは私とペアルックにしたかっただけかもしれない。ドキドキ。

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道具がペアルックになった某釣具店のT上さん。趣味は釣り。当たり前か。

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標準的な仕掛けは、幹糸8号、ハリス6号、捨て糸5号、ムツ針18号の二本針。オモリは150号。

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そして私がつくってきた仕掛けは、欲張って三本針。

エサはホタルイカの肝とゲソ

餌はサバの切り身だと思っていたら、初体験となるホタルイカだった。波崎にホタルイカはたぶんいなけどな。餌の付け方は、ゲソと内臓をそっと引き抜き、ゲソの中心にある口部分から針をいれ、目の間から抜くのがT上さんの流儀。

このとき、ホタルイカを丁寧に扱わないと、肝や目玉が潰れてしまい、アピールの弱い餌となってしまう。食べておいしい身の部分をエサに使わないというのが謎だが、きっとアカムツは珍味好きなのだろう。

記事の後半で話に出てくるけれど、サバは釣ろうとしなくても釣れてしまうので、それをエサにするのも当然アリだ。

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餌はホタルイカが2パックついてくるよ。

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口から針を入れて、目の間に抜く。

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不器用な人(私)が雑にやると、こうなってしまうのでご注意を。自分が魚だったら、こんな見切り品みたいなのは絶対食わない。

前日の夜にものすごい雨が降ったのだが、この日はたまに霧雨が降るくらいの曇天模様。夏や太陽の似合わない男としては、ピッタシカンカン、じゃなかった、ピーカンの真夏日よりは全然嬉しいし、雨こそ振るけど、風と波は皆無で釣りやすそう。湖のワカサギ釣りみたいな無風状態だ。

「波はなくても、展開としてはひと波乱欲しい」と、ちょっとうまいことが取材メモに書いていあった。

アカムツの釣り方講座

船は穏やかな海を一時間程走ってポイント到着。水深は100メートルちょっとだが、潮があまり流れていないので釣りやすそう。釣れなそうともいうけれど。

ここでT上さんによる、外房流のアカムツ釣り方講座がスタート。

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まず竿を下げた状態で海底まで仕掛けを落とし、ちょっとだけ巻いてオモリを底から浮かせます。

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ゆっくりと竿を海面と平行になるまで持ちあげ、一旦停止。

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今度は一番上まであげて一旦停止。

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アタリがなければ、スーッと竿を下げて数秒停止。

あとはこれの繰り返し。棚はどんどん変わっていくので、こまめに棚を取り直すことが肝心。誘う早さや止める時間はフィーリングで。大切なのは、常に誘い続ける根気。船長の話でも、やはり一日誘い続けられる人にアタリが多いようだ。

アカムツは基本的に底からちょっと上を漂っているそうだが、日によって棚が低めだったり、ちょっと高かったりするので、その日の棚を見つけることも大切。

アタリがあったら、スーッと竿先を上げて合わせて(向こう合わせでいいという意見もある)、そのまま5メートル程手で巻いて、魚が掛かっていることを確認したら、竿を手に持ったまま丁寧に電動で巻き上げる。

一投目からなにかが掛かった!

アカムツは口が柔らかいくせに引きが最後まで強く、巻き上げている最中によく針が外れてしまうので、たとえ掛かっても、二回に一回上がればいい方らしい。けっこう深いところから上がってくるのに、水面でバレたらそのまま潜ってしまうそうだ。

そういう釣り、実は苦手なんだよねー。UFOキャッチャーでもぬいぐるみが捕れたことないしなー。と、掛けてからのことで不安になりながらの第一投。T上さんから教わった通りに誘いをかけると、竿先を下まで落としたところでクククンというはっきりとした魚信到来。

いきなりのことにびっくりしながらも、そーっと竿先を上げる。はっきりと感じる魚の気配。あらあら、もしかして、船中一匹目、来ちゃったんじゃないの?

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水深があるので、巻き上げ中に長くドキドキできてお得!

T上さんからは「サバみたいな引きはしますか? 20メートルくらいのところで暴れたら、アカムツ確定ですよ!」とのアドバイス。

うーん、引きはそんなに強くないかな。たまに軽く抵抗をするけれど、サバのようなというよりは、サバイバル帰りのぐったりとした人みたいな。よくわからない例えだけど。

あ、でも20メートルくらいでちょっと暴れたかも。

そして上がってきたのは赤い魚!

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赤ーい!(今更ながら「甘ーい」風で)

赤い魚なんだからアカムツに違いない。ヤッターヤッターヤッタームツ!と叫んだものの、上がってきた魚をよくみたら、なんとまさかのオキメバル。えー。

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まぎらわしい……

これも煮つけにしたらおいしい魚なのだろうけれど、アカムツだと確信しただけに、ぬかよろこび感が半端ないね。

さすがに幻の魚ともいわれるアカムツは、そう簡単に釣れませんよね。

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そしてT上さんもオキメバルのダブル。

中深場の定番外道達が登場

波崎沖の中深場でアカムツ狙い一投目は、めでたく赤い魚が釣れたものの、残念ながらオキメバルという微妙なスタート。OL進化論という漫画で、北海道に旅行へと行っている娘から届いた小包の中身が、お土産かと思ったら洗濯物でガッカリという話があったが、そんな感じ。いや、オキメバルもそれなりにうれしいのですがね。

その後もしばらくは中深場釣りの定番外道だというドンコ、カサゴ類がポツポツと飽きない程度に釣れる程度で、本命のアカムツはなかなか現れてくれない。いつもやっている30メートル前後の水深とは釣れる魚が違うので、目新しくはあるけれど、目覚ましくはない釣果だ。

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案内人のT上さん。ドンコ連発。

アカムツという魚は体の大きさの割に引きが強く、掛かったら浅場まで上がってきてもよく暴れるらしい。そのため何者かが掛かっても、巻き上げ途中ですぐにぐったりするので外道とわかりガッカリしていたのだが、ようやくきましたよ、ガツガツ系の引きが。

着底してすぐのガクガクと竿先が震える程の強いアタリに合わせると、サバのようなパワフルな引き。そしてリールを巻いていくと、さらに引きの強さがパワーアップ!なにこのドラゴンボールの対フリーザみたいな展開は。

電動リールが途中で止まるほどの引き、こりゃ相当な大物に違いないと思ったのだが、水中には青く光りながら暴れる三匹の魚達。

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ジェットストリームアタックを決める青い三連星(ガンダム世代)。

はい、サバのトリプルでした。

サバのような引きではなくて、サバそのものの引きだったか。まあ正直、サバかなとは思っていたんだけどさ。でもさ、でもさ、もしかしたらアカムツかなって思ったんだけどな。

途中のパワーアップは追い食いっていうことね。ガッテンガッテン。

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引きは楽しいのだけれど、あまり嬉しくない外道ですね。

釣れたサバをエサにしよう

どうやらサバの群れが来てしまったらしく、船のそこらじゅうでサバが上がりだした。で、このサバはT上さん曰く、竜田揚げがオススメだそうだが、もっとオススメなのが切り身にしてアカムツ釣りのエサにしてしまうことなのだそうだ。

この釣れたサバをエサにするというのは、外房のアカムツ釣りでは定番のようで、他のお客さん達も迷わずサバを切り身にしていた。これをホタルイカと一緒に付けるのが波崎あたりのトレンドらしい。

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まず背と腹を浅く切り、餌のサイズにあわせて切り込みを入れ、削ぐように使っていくそうですよ。よく切れるナイフを持参しましょうね。

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ホタルイカとサバの定食。なんだか不自然なような気もするけれど、俺がアカムツなら注文するね!

ただ、サバがあまりにも多い場合は、サバの切り身は目立つため、アカムツの前にサバでサバが釣れてしまうというサバの永久ループに陥ってしまう恐れアリ。そんなときについ口からでる曲は、懐かしの11PMのテーマソングだ。

サバサバサバサバ、サバサバサバサバ、デゥーワー!

はい、ここでナゾナゾです。

サバを釣って偉そうにする遊びはなーんだ。

正解は、サバイバル(サバ威張る)ゲーム。

……まあ、そんなことを考えてしまうくらいに不調な訳ですよ。

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「海の上で食べる魚肉ソーセージがうまいんですよ!」
サバが釣れまくっているときは、一休みするのもアリですかね。

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皮をむくの失敗。今日の私を象徴する事例である。

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船長が「後ろでヒラメが釣れたよー」というので見にいったら、8キロオーバーの超大物でビックリ。サバの切り身に食いついてきたそうです。

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ところで仕掛けの投入時にハリスを持った状態でオモリを投入してはいけません。オモリに引っ張られた針が指に刺さる恐れがあります。なにがあったかは聞かないでください。オモリを船べりに置くのもNGです。

サバの下にアカムツがいる!

あなたが噛んだ小指が痛い。いや、噛まれた訳ではないのだけれど、どういう訳か小指が痛い。それはまあいいとして、どうにもサバが多すぎて、仕掛けを底まで落とす前にサバが釣れてしまい、アカムツ釣りにならない状況となってきた。

こんな時にどうすればいいのかというと、なるべく早く底まで落とせばいい。自他共に認めるせっかちのT上さんは、竿を真下に向けることで、糸がガイドにこすれる抵抗をゼロにし、一秒でも早く仕掛けを底に届けようとしていた。さすが、せっかち。

水深が150メートルくらいの場所だと、竿受けにセットしたままで落としている私とでは、これだけで着底までの時間に結構な差がでてくる。当然、落としている途中でサバに食われる確率が減ることになる。なるほどー。

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釣りは気の短い人の方が向いているっていいますね。

時計の針が午前9時を回ったところで(とかいって腕時計はしていないんだけど)、竿を下に向けて落とした甲斐があったのか、T上さんがサバを避けつつ本命のアカムツを釣り上げた。いいなー。

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アカムツは口が柔らかいので、タモですくうのが基本のようです。

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いいなーいいなー。

どうやら時合いが来たらしく、今までの不調がウソみたいに、他のお客さん達も次々にアカムツを釣り上げている。そして、まだアカムツを釣っていないのは私だけという、給食を食べきれないダメな小学生モードに突入してしまった。

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私の後ろでは良型もあがっていた。やはり餌はサバとホタルイカのミックス。

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艫側でも良型。時合いだ、時合い。

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でっかいヒラメを釣った方は、この日アカムツも4匹と絶好調。

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そして私はスレンダーなサバ……

ここでようやくわかった。船宿の仕掛けが二本針の理由が!

このようにサバが多い状況だと、三本針はアカムツが釣れる確率のアップよりも、サバが釣れてしまう確率を大幅にアップさせてしまうようである。

もちろん状況と釣り方によっては三本針が有効になる場合もあるのだろうけれど、この日は二本針が断然有利の様子。

今更ながら二本針に切り替えて、なるべく底付近を狙っていると、サバとは違うアタリが来た!

はいきた、ドンコ!

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ぼくもう無理ー!

オモリを浮かせればサバ、底を狙えばドンコですか。

そしてこの後すぐ、似たような感じなのだが若干引きが強い魚が掛かった。まあどうせ大きめのドンコだろうと、あまり深く考えずに巻き上げスタート。そうしたらだよ、途中でブリブリっと暴れたと思ったらフッと軽くなり、エサがついたままの針だけが上がってきた訳だ。

このやりとりを見ていた中乗りさんが、デッキブラシで掃除をしながらボソリとつぶやいた。

「今のアカムツだったのに……」

そして私は白目になった。あぁ、貧血起こしていいかしら。

掛かったはずの魚が外れていたら、それはアカムツ。

これ、アカムツ釣りでは大切な方程式なので、必ず覚えておくように。たとえドンコかなと思っても、丁寧にあげましょうね。私みたいになりたくなければ!

最後にどうにか本命ゲット!

ベタ凪だからという訳でもないのだが、どうにも波に乗れないままにまったりと時が過ぎ、気がつけば12時を回ってしまった。悔やまれるのは、さっきばらしたアカムツである。まあ最初からアカムツだと信じたところで、バレるときはバレるらしいけど。でもやっぱり、もったいないよなー。

普通だったらそろそろ沖上がりの時間だと思うのだが、船長は一人だけ釣れていない私が釣れるのを待っているような感じで、もう一流ししてくれるっぽい。

ここで期待に答えなければ男がすたる。プレッシャーに胃をキリキリとさせながらも、海底にオモリを着けて仕掛けを若干弛ませぎみにしてアタリを待つという、ミヨシという地の利を生かした方法で、海底付近を泳ぐアカムツを狙ってみる。今日のアカムツはきっとベタ底。

そして、狙い通りにアタリがきたのである。

ドンコかなと思いつつもできるだけ丁寧に巻いていると(あまり巻き上げがゆっくりだと、他の針にサバが食ってきてしまうので加減が難しい)、途中の80メートル地点でブルブルと暴れ出した。そしておとなしくなったかなと思うと、また20メートルくらいでブルブル。これか、これがアカムツの引きなのか。ちなみにエサはホタルイカを使いきったので、サバの切り身オンリー。

今度こそはと祈りを込めて上げた仕掛けには、赤い魚がぶらさがっていた!

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とうとう本命……かな?

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本命のアカムツ!針穴部分が広がっているのがわかるかな。こりゃばれやすいはずだ。

よっし、よしよし、吉幾三。

どうにか一匹釣れたので、急に心が軽くなって、地味に変なことを言い出しているが、ここはそっとしておいていただきたい。うれしいったらうれしいな。

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アカムツはノドグロというくらいなので、どれくらい黒いか見てみたら、白いフナムシみたいのが鎮座していて全身鳥肌。そうだ、タイノエ(アカムツノエ)という虫がいる場合があるんだった。ヒエー。

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30センチジャスト。

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これでT上さんと1対1のイーブンだぜと思ったら、すぐに二匹目を釣られてしまった。さすが。

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これにもタイノエがこんにちは。

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上の2匹がT上さんの釣果。サイズはほぼ同じだけれど、一番上だけ太っているのがわかるかな。これだけタイノエが住んでいなかった。やっぱり口の中にあんなのがいると、太りづらいみたいですね。ということは、タイノエダイエットってどうだろう。

ということで、本命のアカムツは1匹だったけれど、たった1匹というよりは、めでたく1匹という感じなので、私としてはハッピーエンドといっていい一日だった。終わりよければすべてよし。

船長の話だと、この日は潮が動かなかったので魚の食いが悪かったとのこと。仕掛けの選択と誘い方さえうまくハマれば、次はもうちょっと釣れるんじゃないかなと思っているんですが、どうですかねー。

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本命は一匹だけど、なんやかんやでクーラーボックスは一杯。

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アカムツは一日置いてから炙りにしてみた。トロットロ。脂が浮き出ているのがわかるかなー。

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アカムツのアラを使った味噌汁も感動の味。細かく浮かんだ脂がうまさの証明をしている。細かく浮かんだ脂がうまさの証明をしている。

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ドンコは甘辛く煮付けてみたけれど、ホロホロと柔らかい白身でおいしい。
船長さんのオススメは天麩羅だそうですよ。次は絶対やろうっと。

■信栄丸

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