船釣りだけど堤防感覚で楽しむ湾奥のカレイ釣り/江戸川放水路 伊藤遊船
東京湾の一番奥で狙う大型マコガレイ
船での釣りっていうのはだいたい竿一本で魚と対峙するのだが、江戸川河口から出ている東京湾奥のカレイ釣りはちょっと違う。少なくても2~3本の竿を持ち込み、チョイ投げして置き竿で待つのである。そう、まるで防波堤での投げ釣り感覚なのだ。
堤防からのカレイを狙う場合、どうしても人気のポイントは場所取りが大変で、スペースが無くて竿を出せない場合も多い。その点、船から狙う湾奥のカレイ釣りは乗船できる人数が限られているので、予約さえすれば竿を出せないということはないし、場所の移動だってしてくれる。いわば動く沖堤防。遠投の必要やトイレの心配もないのである。
場所取りに苦労することなく、ゆったりとしたスペースで竿を何本も出して、のんびりとカレイ釣りを楽しんでみたい。そんな陸上では難しい夢が、船に乗ることで叶うのである。特に平日は空いて最高です。
船から狙うカレイ釣りのシーズンは年末から3月中頃で、今年は例年よりも水温が高いためにこれからが本番。年末年始に産卵を終えたカレイは東京湾の浅場でたくさんエサを食べてどんどんと身が厚くなり、味も引きもよくなっていくそうだ。
湾奥のカレイはサイズが驚くほど大きく、「行徳サイズ」と呼ばれる40センチオーバーが狙える上、年に数枚は50センチ越えも顔を見せるのだとか。ただし、たくさん釣れる魚ではないので、1~2枚も釣れれば御の字という気持ちで乗船しよう。待ち時間を楽しむタイプの釣りなので、悩み事があるときなんかに最適ですよ。
今回お世話になった伊藤遊船さんでは午前船と午後船で悪天候以外は毎日出船しており、どちらかでも通しで乗ってもOK。東西線の妙典駅から近いので、電車でフラリと来る常連さんも多く、私も埼玉県から始発電車でやってきた。
カレイ釣りの仕掛けについて
湾奥でのカレイ釣りは独特で、外房とか茨城とかのように手持ちの竿で小突くタイプの釣り方ではなく、どちらかというと堤防からのチョイ投げのほうがスタイルとしては近い。
竿はキス用などの1.8メートル前後で、柔らかめで食い込みの良いものを使う人が多いけど、ある程度硬い竿の方が船の揺れでエサが動いて好釣果につながる日もあるのだとかとか。まあなんでもいいんじゃないでしょうか。980円くらいのコンパクトロッドでも釣れちゃいます。
リールはチョイ投げなのでPE1号を巻いたスピニングリールが標準となるが、船下でも釣れるので両軸リールをセットしたライトアジタックルとかを加えても構わない。リールに巻いてある糸がナイロンだったり太いPEだったりする場合は、50メートルで十分なのでPE1号に巻き替えましょう。
最低でも2本、できれば3本、空いていたり四隅だったら4本以上の竿を出すのが湾奥のカレイ釣り。そんなに竿を持っていないよという人は、レンタルタックルをご利用ください。やってみるとわかりますが、無理なく扱える範囲で竿の本数が多い程楽しめます。
仕掛けは片テンビンに25号のオモリという組み合わせ。絡み防止のためにテンビンはシロギス用よりも一回り大きなものがいいかもしれません。派手にするかシンプルにするかはお好みで。
仕掛けの投入はアンダースローとなるため、投げ釣り用の長いものではなく、全長60~80センチの2本バリを使用する。ハリスの太さは2号が標準で、発光体やビーズがついた派手なもの、なにも付いていないシンプルなものなど、お好みでセレクトしてください。40センチオーバーのカレイを狙うので、ハリス1号とかのシロギス用だとちょっと細いかな。
仕掛けを自作する人は、いろんな船釣りをしているとだんだんと長くなりがちですが(マダイだと6メートルとか使うしね)、船長の話ではテンビンから近くエサの動きが良い上バリに食ってくることが多いことからも、カレイの仕掛けはあくまで短めがオススメだそうです。
船宿でもらえるエサはアオイソメで、1本のハリに3匹くらいたっぷりと付ける。また特エサとして匂いの強いイワイソメなどを持ち込んで組み合わせる人もいるようです。
あと大切なのが防寒対策。当たり前ですが冬の海は寒いので、ネックウォーマーやカイロなどを駆使して温かい恰好でお出かけください。
ということでカレイ釣りの船に午前・午後と通しで乗ってみたのですが、1枚でも良型が釣れたらラッキーという釣りにも関わらず、なんと爆釣の日に当たってしまいましたよ。
いきなり予想外の大物がヒット!
やってきた場所は行徳沖の水深6メートル前後。ここは三番瀬の中でも潮通しがよく、海底に起伏の多い一級ポイント。陸からは見えるけれど投げても届かないという憧れの場所であり、この場所でのんびりとカレイ釣りができる幸せに浸ろうではないか。
船はポイントに着いたらアンカーを下ろしてじっくりと構えるスタイルで、たまに船長がアンカーロープの長さや角度を変えてポイントを微妙に変えつつ、状況に応じてアンカーを上げて大きく移動をしてくれる。まさに動く沖堤防だ。
この日は平日ということもあり、午前船のお客が私を入れて2名、午後船が3名とガラガラだったので、船長も竿を出して釣りスタート。
複数用意した竿は投入する方向や距離を変えて守備範囲を広く構えて、道糸が弛み過ぎたり張りすぎたりしないように調整しながら置き竿で待つ。釣りというよりも罠を仕掛ける感覚の方が近いかな。
投げたら投げっぱなしではなく、たまに竿先を上げて掛かっていないか聞いてみて、糸が弛んだ分だけリールを巻いて少しずつポイントを手前へと移動させる。仕掛けを上げた時はエサを必ずチェックして、弱っているエサを交換したり、たまには気分転換で全とっかえをしてみたり。
仕掛けを真下に下ろしてもよく、カレイが船の影に入ってくるためか、胴に構えた人が船下で大物を釣ることも多いのだとか。
アタリは竿先に出ることもあるけれど、派手なアタリは小型が多く、大物ほど動かずに「居食い」をしていることが多く、竿を聞いてみて初めて掛かっていることに気付くものらしい。また掛かってから時間が経ちすぎると、カレイが器用にハリを吐き出してしまうこともあるので、ある程度小まめな竿チェックが必要となる。
掛かったら巻き上げはゆっくり一定の速度で慎重に。大物は海面近くまできてから暴れることが多いので、竿と道糸の角度を90度に構えておき、竿の弾力と腕の上げ下げでうまくしのぐこと。
釣れるタイミングは上げ潮から下げ潮へ、そして下げ潮から上げ潮へと潮の変わる前後30分が多く、そのときにバタバタっと釣れる時合いとなることが多い。もちろん一日を通じてポツポツと釣れるような日もあるけどね。
そんな丁寧な説明をしてくれた船長が、さっそく竿を大きく曲げた。
ずいぶん派手に竿が曲がってるなーなんて思ったら、残念ながらこれは座布団みたいなアカエイ。尻尾に毒針があるのでハリスを切ってリリース。
だが竿に掛かったのはアカエイだけではなく、タックル一式もぶら下がっていたりして。誰かにこのアカエイが掛かって船からスポーンと落ちちゃったんですかね。私も何回か海に奉納したことがあるなー。
という感じのドタバタ劇で始まったのだが、次に竿を曲げたのは私の後ろ側で竿を出していた常連さん。こちらは本命のマコガレイが上がった。
サイズは30センチ前後と食べ頃ながらも、行徳沖としてはまだまだだとか。狙うはあくまで40センチオーバーなのである。
出ました!48センチの行徳サイズ!
1匹目の本命が顔を見せたのが満潮となるちょっと前。そして上げ潮から下げ潮へと変わったところで船長の竿に大物がヒット。これが時合いというやつか。
見事な竿の曲がり具合にまたアカエイだったりしてとか思ったが、今度こそはカレイのようだ。いやでもその大きさはやっぱりアカエイじゃないですか?
上がってきたのは一瞬アカエイかと見間違ってしまう48センチの立派なカレイ。ヒラメでもないですよ。行徳沖にはこんなサイズがいるんですね。
「これ僕が釣っちゃっていいんですかねー。帰りは事故らないように気をつけなきゃー」と喜ぶ船長。いいんです、どんどん釣ってください。誰かが釣れていた方がこっちも気合が入ります。それにしてもでかいなー。
私もどうにかカレイが釣れました
この日は寒波が来る前の荒食いに当たったのか、良型のカレイが連発。……私の竿じゃなくて後ろの方にだけどね。
6本出した竿を器用に操り、遠近投げ分けてカレイを釣りまくる常連さん。顔が見られれば御の字という湾奥のカレイ釣りとしては大漁となる、午前5枚、午後7枚、通して計12枚を達成。最高の有給休暇となったようです。ちなみに仕掛けはハリス2号で全長79センチ、ハリが発光タイプの市販品とのこと。気を付けたのは小まめにエサを交換する点だとか。
それに対して私はというと、すぐ後ろでやっていたにもかかわらず、午前1枚、午後1枚の計2枚。12対2のコールド負け。いやカレイ釣りとしては普通というか十分な釣果なんだけれど、この日の食いだったらもう少し釣りたかったかなーという感じ。竿の数は4本だから竿数と比例するなら8枚釣れるはずなんだけどなー。うろ覚えの記憶を頼りに自作してきた仕掛けがハリス3号の1メートルだったのが悪かったかなー。
まあ何度も通っている常連さんと数年に一度だけ思い出したようにやる私では、釣果に差が出て当然ですかね。でも逆に初心者がでかいのを釣って、ベテランになぜかアタリがないという日もあるみたいですよ。
ということで、この日の様子をダイジェストでどうぞ。
こんな感じで上手い人は大漁、下手な人でもそこそこだった訳ですが、何度も聞き合わせをしたり、エサを付け替えたりを繰り返して、ようやく確かな重みを感じた時の嬉しさは独特ですね。
普通の釣りは竿を手に持ってリアルタイムでアタリを感じるんですが、この釣りは置き竿でアタリがわからないことが多いので、事後報告というか結果としてのアタリ。でもそこがいいんですよ。聞き合わせをして竿に重みを感じた時の、今までの苦労が報われた感がたまらないのです。ようやく結果にコミットしたのかという手ごたえが。
気を抜くとのんびりしすぎてしまう釣りなのですが、あえて気を抜かずにエサのチェックや聞き合わせを怠らず、程々の緊張感を保ちながら「待ちの釣り」を楽しんでみてください。