「車椅子入場できますか」「入場はできます」という話。

 ねこの問い合わせシリーズ第1弾は、チームラボ特別展@名古屋市科学館の車椅子での入場について。

 以前から気になっていたチームラボの展示が名古屋に来るらしいと11月初めに聞いて、是非行きたいと開催情報を検索していた。
名古屋市科学館の特別展予告ページ
特別展の「公式ホームページ」とされているチームラボのウェブページ

 すると、チームラボのページの「来場のご案内」→「施設について」の項目で、車椅子のピクトグラムが薄くなっているのを見つけた。(現在修正済みのため以下にスクショを貼る。)

チームラボ ピクトグラム

 「車椅子でのご入場」のピクトグラムが薄くなっているということは、車椅子で入場できないという意味ではないか?しかし、名古屋市科学館のウェブサイトでは、「よくある質問」で「館内は、バリアフリーになっております」と書かれており、車椅子の貸し出しもあるという。一体どういうことだろうか?もし、特別展の会場のみ車椅子入場できないのだとしたら、何故?
 ツイッターで検索してみても、「行ってみたい」という声はたくさんあるのだが、この点に関する疑問の声は見当たらなかった。ちなみに、名古屋市科学館での前回(2016年)の開催情報を見ると「※二人乗りベビーカーの場合は、通れない箇所がございます。」という記述はあったが、車椅子については特に書かれていなかった。一方、チームラボ@お台場の展示「ボーダレス」では電動車椅子の入場拒否があったという記事()も見つけてちょっと不安になり、開催日も近いし(11月30日~)、誰も訊いてないなら自分が訊くしかないか、と思った。
 ということで、前述の疑問を解決するために、問い合わせ先になっている名古屋市科学館に電話をした(11月17日)。
 電話を取った人から二度替わって総務課XXさんが返答。(特別展の直接の担当者は本日不在とのこと。)

ねこ:「ウェブページで車椅子のピクトグラムが薄くなっているのは、車椅子では入場できないということですか?」
科学館:「私どもとして車椅子の方がご入場できないという認識は全くございませんでして、ちょっとこの表記がどういうことかというのは確認が取れてないんですけれども、一旦確認をさせて頂きたいなと思いますが、ただ、ご入場がしていただけないというわけではないので。ただ、会場内に段差自体がすごくあるわけではないですが、一部展示において、滑り台とか、車椅子のほうで見ていただくような、そこに実際に登っていただくとかそういったところでない展示があるのは事実なものですから、そういったようなところの表現かなとは思いますけど。ただ、(車椅子での)入場が難しいとかそういったことではないので。」
ねこ:「じゃあ、『施設について』という項目ではあるけれども、科学館のその部屋とかが車椅子が入れないつくりになっているとかいうことではない?」
科学館:「ええ、そういったことはございません。車椅子でお越しいただくのは全く問題なく、スロープであるとかバリアフリーということにはなっておりますので、それ自体は全く問題ないかなというふうに思います。
     表記として分かりずらい部分かなと思うんですけれども、チームラボさんのページのほうの、薄くなっている、確かに薄くなっているかと思うんですけど、これどういった意図でというのが、ごめんなさい私ども確認が取れていませんでしたので、ただ、受け入れとして、受け入れられないということではないので。施設として、何か制限がかかるというわけでは、勿論その、動線に、例えば登るところとかっていうのはなかなか難しいところもあるかなとは思うんですけども、そういったことではなくて館内を見ていただくにあたって何かものすごく、その対応できないよというわけではないと。現にいま車椅子の方も(科学館に)お越しいただいておりますし。」
ねこ:「科学館のほうのホームページではバリアフリーで車椅子の貸し出しとかもあると見たので、あれ、どうなのかなと思って。」
科学館:「そうですね、ごめんなさい、ちょっと一旦これはまたこちらのほうでも確認をさせていただきますけれども、もしお越しいただくということであれば全く車椅子でお越しいただいても問題ないかと思いますので。」
ねこ:「えーと、どうしようかな。チームラボさんに確認していただいて、折り返しお電話とかしていただけますか?」
科学館:「そうですね、分かりました。では、この表記がどういった意図でというところで確認をということですね。えーとですね、本日、なかなかごめんなさい繋がらない可能性が、」
ねこ:「いや、全然あのー、後からでいいんですけど、」
科学館:「宜しいですかね、分かりました。ちょっと来週、また明日から休館日になりますので、ちょっと明後日以降で連絡を取ってご連絡を差し上げるようにさせていただきます。ちょっと本日担当者が、私どものほうでも不在ということがございますので、まず担当者のほうを通じてですね、そちらからまたご返答というふうにさせていただきたいと思います。私あの名古屋市科学館総務課のXXと申しますけれども、お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」
ねこ:「~~(名字)です。」
科学館:「~~様。お電話番号宜しいですか。」
ねこ:「(携帯番号)」
科学館:「(復唱)分かりました。では確認取れ次第、ご連絡差し上げます。来週になってからということになるかと思います、来週半ば、まあ遅くとも来週末くらいにはご連絡差し上げる形になるかと思いますので。」
ねこ:「はい。すいません、ありがとうございます。」
科学館:「宜しくお願いいたします。あっちなみにですけど、車椅子でのご利用をご検討ということになるんでしょうか。」
ねこ:「そうですね。」
科学館:「分かりました。個人でいらっしゃるということになりますか?」
ねこ:「個人?」
科学館:「団体というか、皆さんで……」
ねこ:「団体ではないですけど、家族で。」
科学館:「ご家族でですね、分かりました。では確認次第またご連絡差し上げますので宜しくお願いいたします。」
ねこ:「すみません、ありがとうございます。」

 17日に電話して、20日に名古屋市科学館から不在着信あり。開館時間中にかけ直せずにいたが22日に折り返し電話した。(20日時点ではウェブサイト表記変わらず。22日に見たら修正されていた。)電話を取った人から替わって総務課の○○さんが対応。

科学館:「こちらのチームラボのアイコン表示の、車椅子の件なんですけれども、チームラボのほうは車椅子でもご入場可能ですので、会場自体の車椅子入場は可能なんですけれども、一つ『光の森でオーケストラ』という空間、鏡張りの空間でボールのほうがある展示があるんですけど、
ねこ:「あーはいはい。(ウェブページの写真を見て)」
科学館:「そちらのほうだけ、床のほうが特殊な床になっておりますので、車椅子でのご通行が難しいということで、迂回して、他の展示もご覧いただくといった形になりますので。」
ねこ:「はい、分かりました。ありがとうございます。」
科学館:「入場自体は大丈夫ですので。」
ねこ:「はい。」
科学館:「いただきましたお電話のおかげでこちらもホームページのほう修正することができましたので、お電話いただきまして誠にありがとうございます。」
ねこ:「いえ、はい。助かります。」
科学館:「こちらのほうもホームページを修正して掲載させていただいておりますので、はい、宜しくお願いします。」
ねこ:「ありがとうございます。」
科学館:「ぜひお越しいただければと思いますので、」
ねこ:「はい、ありがとうございます。」
科学館:「また宜しくお願いします。」

 ということでウェブページは修正されたのだった。修正後は「車椅子でのご入場」のピクトグラムが黒く色つきになっており、「一部、車椅子では入れないエリアがあります。予めご了承ください。(お近くのスタッフにお声がけ頂ければ、迂回ルートをご案内いたします。)」との文言が付け加えられている。車椅子のピクトグラム以外にも修正された箇所があるので(団体入場や自販機の部分など)、おそらくチームラボの方針の転換というよりは単なる連携不足・ウェブページ準備不足だと思われる。ちなみに、11月22日に見た時といま(12月6日)見た時では、「施設について」の箇所がまた若干変わっているので(ベビーカー置き場や写真撮影に関する注意書きなど)、特別展会期開始後に問い合わせや現場状況を受けて変えたのかもしれない。
 車椅子の通行ができない「特殊な床」というのがどういう床なのか、食い下がって訊いても良かったなと思うが、まあ実際に見に行ってみようと思う。(既に見に行った方の情報提供があれば有難いです。行った人がネットに上げている写真を見るに、体重で足元が沈むようなふかふかのマットの床っぽい?)
 ねこの問い合わせの全体の感想として、市の科学館という公的施設でありそもそもバリアフリーを謳っている会場だったから入場自体を断ることはないと容易に合意ができたが、そうでなければもう少しごたついただろうなと思った。既に前売券も売ってて会期開始2週間前なのに公式ウェブページをチェックしてないってどうなのよと思ったが、チームラボの「内心」を勘繰って差別的だと批判するのはあまり意味がないと思うのでせず、開催側の準備不足・軽率さによって、事前に情報を調べた車椅子の人が行くのをやめてしまうという影響は大きな問題だよね、という批判に留めておく。とはいえ、最終的に、前回の名古屋での開催時には無かった、車椅子での入場についてのウェルカムな表記(エリア制限はあるが)が今回加えられたということはとても意義あることだと思う。この明記は評価したい。車椅子の人は、交通移動におけるバリアは勿論のこと、ほぼすべての外出先で(入れたとしても)入れるかどうかの確認という手間をかけているのが現状だろう。あるいは、ポジティブリスト的に、行けると分かっているところにしか行かないか。勿論、将来的には、明記されていなくても「当然、車椅子でも入れるに決まってるじゃないですか」という社会が来るのが理想だが、今の社会においては、こうしたウェルカム表記は重要だ。(そして勿論、表記の前提にはウェルカムな実行が必要だ。)

 本当は会期開始前(11月30日まで)にnoteを投稿しようと思っていたのだが、多忙により遅くなってしまった。どうか是非、車椅子の方々もチームラボ特別展@名古屋市科学館を楽しんでほしい。(言い換えれば、楽しめる展示であるべきだ。)私も会期中のどこかで行くつもり。



 ねこの問い合わせシリーズについて、今回第1弾と書いたが、シリーズ化するかは未定。反差別活動は様々で、何かデモをしたり政策案に意見書(パブリックコメント)を書いたりというやり方もあるし、実生活で受けた個々の差別に対して行動するというやり方もある。それらが全てハードルが高いとも思わないが、抗議や批判をするのはちょっと抵抗があるが「訊く・問う」ということならできる(気が楽だ)という人はいると思う。ひとつひとつ、身近なことについて「問い合わせる」、そしてそれを記録・公開するということが意外と大きい意義を持つのではないかと思って、こうして第1弾を投稿することにした。(公開できない場合もあるだろうが、)皆さんも宜しければぜひ。

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