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ウィーン・チェスキークルムロフの旅で立ち寄りたい、国境の小さな町を見下ろすヴァイトラ城

ウィーンから、チェコの世界遺産の街チェスキー・クルムロフまでは、車で3時間。その歴史の魅力で近年観光客に人気のチェスキー・クルムロフは、ウィーンやザルツブルク旅行と合わせて滞在される方も多いでしょう。

今日はそんなウィーンとチェスキー・クルムロフの間にある、小さな国境の町ヴァイトラWeitraをご紹介します。この辺りのチェコとの国境近辺は、森林地方Waldviertelと呼ばれ、自然が美しく、無数の城があることで知られています。

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その中でも、この小さな町ヴァイトラは、冷戦終結までは、東側との国境沿いの忘れられた寂れた町でしたが、最近になって森林地方自体が自然を楽しむ旅行客へのアピールに力を入れていることもあり、この土地らしい歴史と可愛らしさのある魅力的な町として注目されるようになってきました。

この国境の町に立つヴァイトラ城は、13世紀に建造されて以来、オーストリア、ハンガリー、チェコ、スウェーデン、ソビエトと様々な国からの侵攻を受け、持ち主もコロコロと変わっていました。現在の持ち主はフュルステンベルク家で、今のルネサンス様式の姿になったのは16世紀のこと。

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冷戦時代は、東側のチェコと西側のオーストリアの国境付近の町ということで、ソビエト軍に荒らされたまま放置されていましたが、1994年に一般開放され、2006年に修復が完了しました。

現在では、その有名な塔に登ることが出来るだけでなく、豪華な屋内劇場や野外劇場では演劇祭が開かれ、複数の歴史博物館が入っていて、ゆっくり見ると2時間は堪能できる、見応えのある内部となっています。また、結婚式場としても貸し出されていて、ルネサンス様式のお城で歴史を感じながら、特別な日を過ごすこともできます。

中庭のアーチが美しく、ここで夏場は演劇祭が開かれます。

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豪華な19世紀の城内劇場は、現在でも使用されています。

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3つの歴史博物館のうち1つは「鉄のカーテン」に関する展示。この街からすぐそばに国境があったことを考えると、ここでこの展示を見ると歴史の実感がわきます。

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鉄のカーテンの展示は、階段を下った地下です。

二つ目の展示はビールの歴史展。これは、この街がオーストリア最古のビール醸造の歴史を持っていることに由来しています。

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また、8世紀の歴史を振り返った、ヴァイトラの町と城、城主の移り変わりが、第三の展示となっています。

時計台のある塔に登って、森林地方の絶景を見下ろしてみました。

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今でも現役の塔の鐘

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ヴァイトラの街を見下ろして。

8世紀もの間血なまぐさい歴史を見てきたこの城が、今は博物館や劇場、結婚式会場として、オーストリア人やチェコ人に親しまれていることを考えると、国境近くの城の悲劇と、平和な時代の城の役割について考えさせられます。

今ではシェンゲン協定により、検問もなく国境を超えることができるオーストリア・チェコ間。おかげで、ウィーンからチェスキー・クルムロフに気軽に行くことができるようになりました。旅の道中、この小さな町の歴史ある城に立ち止まって、鉄のカーテン時代や侵略の歴史に思いを馳せてみるのも、旅の醍醐味かもしれません。

(2016年6月執筆)


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