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オーストリア/ヴァッハウ渓谷を見下ろすアグシュタイン城

初夏の気持ちのいい季節になってきました。オーストリアに旅行に行かれる方も多い季節ではないでしょうか。さて、今回はそんな夏のオーストリア旅行に欠かせない、ヴァッハウ渓谷のハイライトの一つをご紹介します。

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ドナウ河を見下ろすアグシュタイン城。城内に足を踏み入れると、中世にタイムスリップしたようです。

ウィーンから1時間ほどの距離で、日帰り旅行に最適な、ヴァッハウ渓谷。メルクやデュルンシュタインなどの見どころも多く、ドナウ河が美しく蛇行し、ワインも美味しいという、観光客もオーストリア人もこぞって訪れます。

ヴァッハウ渓谷でドナウ河クルーズを楽しむと、右岸の山の上に見えるのが、アグシュタイン城(Burgruine Aggstein)。ドナウ河を見下ろす交通の要所を見下ろすこの城は、12世紀頃に建てられ、現在でも見学できます。内部は修復され、中世の名残を残しつつ、騎士祭りや大きめのパーティーなどのイベントにも使用されています。

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内部の大広間は、大規模なパーティーなどで貸し切りにされることが多いようです。中世の雰囲気の中で楽しむディナーは格別でしょう。

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中庭は一休みできるようになっています。

この城には、いくつか有名な伝説が残っています。一つ目は、13世紀のハドマー三世のお話。交通の要所の城主のご多分に漏れず、ハドマー三世は、君主フリードリッヒ公に逆らい、ドナウ河に巨大な鎖をかけ、通行する船の積み荷を奪うという、盗賊まがいの行為を働いていました。

そこでフリードリッヒ公は、わざとここを通る船にハドマー三世を誘い込んでウィーンまで同行させ、その隙に空になった城を攻略し、今まで略奪した全ての積み荷を明け渡させた、という伝説です。

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城からドナウ川が蛇行する景色が見下ろせます。

二つ目は更に有名な、15世紀の城主ゲオルグ (Joergとも)・シュレック・フォン・ヴァルトの暴君伝説。この城主は、囚人を城から崖の上に突き出した岩の上に連れ出し、ここで餓死するか飛び降りるかの究極の選択を迫っていました。過去に2度だけ飛び降りて脱出した例がありますが、二回目には警報の鐘があまりに大きな音で鳴り響いたため、城主自身が気が狂ってしまったと言われています。

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中世の雰囲気満点の、堅牢な外壁。

また、この辺りのドナウ河畔は、ニーベルンゲン伝説所縁の地にもなっています。抒情詩「ニーベルンゲンの歌」第二部に登場する、クリームヒルトのハンガリーのアッティラ王への輿入れの道中は、まさにこのドナウ河を船で下って行われたのです。そのため、この城でも、ニーベルンゲン伝説に関する展示がありました。

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こちらは、同じくドナウ河畔のトゥルンにおける一場面を再現した様子。

一つの記事では語りつくせないほど歴史の古いアグシュタイン城。ヴァッハウ渓谷のドナウクルーズを楽しまれる際にはぜひ見上げて、歴史に思いを馳せてみてくださいね。

(2014年5月執筆)

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